ジャンル 現代社会と科学

早稲田校

沖縄現場学―南の楽園島を歩いて読み解く令和日本と世界

  • 夏講座

カベルナリア 吉田(紀行ライター)

曜日 木曜日
時間 19:00~20:30
日程 全7回 ・07月10日 ~ 09月04日
(日程詳細)
07/10, 07/17, 07/24, 07/31, 08/21, 08/28, 09/04
コード 120703
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 20,790
ビジター価格 受講料 ¥ 23,908

目標

・一般的な報道ではあまり伝えられない、沖縄のさまざまな現状を知る。
・現代沖縄の背後に介在する、日本そして世界の実情や問題点を知り、考察する。

講義概要

2024年の沖縄は何かと落ち着かなかった。観光地はインバウンドであふれオーバーツーリズム、だが頭上に響く軍用機の爆音が、回数も音量も増していると気づく者は少ない。大開発が止まらず、グルメ狂騒曲が鳴り止まず、県政は基地問題を糾弾する一方で、豪雨被害のお粗末な対応が批判を浴びた。全国そして今や全世界から人が集まる沖縄は、現代社会を映し出す鏡であり、この場所は世情をいち早く反映する。沖縄を深く知ることで「日本そして世界の今」を、より早く察知できるといっていい。本講座では講師が自身の足で歩き、見て感じた沖縄のさまざまな「現場」を紹介し、背後に介在する日本と世界の実情を共に考察する。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/10 本部町営市場解体? そして水納島リゾート開発 1966(昭和41)年に開業して59年、県内最古の歴史を誇る公設市場「本部町営市場」を、2027年度以降に解体する方針が固められた。老朽化と耐震性の問題が原因とのことだが解体後の跡地利用、市場の現役店舗に対する補償や移転先の確保など何も決まっておらず「解体ありきの方針決定」に批判が集まっている。一方で同じ本部町内の小島・水納島の大規模リゾート開発が決まった。本島北部やんばるの原風景が残る本部町で、何が起こっているのか、最新の実踏をもとにレポートする。
2 07/17 首里劇場の終焉が意味するもの 1950(昭和25)年に開館した映画館「首里劇場」が、惜しまれつつ閉業そして解体された。戦後の沖縄には多くの映画館が立ち、敗戦に沈む人々に復興の活力を与えた。テレビ登場で映画産業は衰退したが、首里劇場は成人映画上映に特化して、令和まで生き永らえた。解体は残念であり、沖縄の「成人映画館の灯」が消えることに、ひとつの文化の終焉を感じる。表ではあまり語られない「沖縄の官能文化史」に光を当てつつ、劇場解体が意味するものを考える。
3 07/24 沖縄グルメ戦線異状アリ? ここ数年、特に観光客がらみで、沖縄で「奇妙な食のブーム」が散見される。突然巨大化し始めた「アレ」そして「その料理に、その店に行列しちゃう?」珍場面のオンパレード。初歩的な沖縄グルメを、ユーチューバーが「自分が発見した」ように喧伝し、軽薄な動きに違和感を禁じえない。珍現象の数々は、人々の劣化の象徴なのか。最近の沖縄で目撃した「何だこりゃ?」なグルメシーンを紹介しつつ、背景にある「令和日本」を推察する。
4 07/31 豪雨と県政―水に翻弄された2024沖縄 2024年11月、本島北部を未曾有の豪雨が襲い、甚大な被害が生じた。そして沖縄県の対応が後手後手に回り「豪雨被害は人災だ」と批判も続出、思わぬ形で県政基盤の脆弱さを露呈してしまった。ほかにも2024年の沖縄は年頭の水不足、4月に津波警報が発令されるなど、水のトラブルが相次いだ。一方で沖縄県庁では離職者の増加が目立ち、問題となっている。豪雨被害の詳細を追いつつ、県政の在り方を今一度問い直したい。
5 08/21 那覇で爆音を聞くことが増えた ここ数年は那覇市街で、会話もできない大音量の、軍用機の爆音を聞くことが増えた。軍用機の所属は米軍か、それとも自衛隊か。単に飛行範囲が広がっただけか、それとも飛行回数や機数が増えているのか。国際通りにあふれる観光客の大半は、爆音を気にする様子もなく、その光景にも身震いを覚える。観光バブルに浮かれる沖縄、だが水面下で何が起こっているのか。着々と進む軍事要塞化についても、最新状況を併せてお伝えする。
6 08/28 いぶし銀の街・西原町を歩く 那覇市の北東に隣接する西原町を、観光で訪ねる旅行者は少ないだろう。沖縄では「北」を「ニシ」と呼び、首里の北側に位置するから「西原」だそうだが、沖縄らしくない地名も含め町は地味な印象だ。代表的な名所は「内間御殿」(渋い!)、そして琉球大学があること以外に、特筆すべきことは見当たらない。那覇に近すぎて見落としがちなこの街をじっくり歩き、知られざる名所や名物を紹介したい。
7 09/04 検証・検見川事件―なぜ沖縄の若者は、千葉で殺されたのか 1923年9月5日、関東大震災発生の4日後に、千葉市検見川で3名の地方出身者が朝鮮半島出身者と間違われ惨殺された。3人のひとりは20代前半の、沖縄出身の男性だった。震災発生後に「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などデマが広がり、方言から外国人と間違われた3名が惨殺されてしまったのだが、背景に地方出身者に対する差別が感じられる。同じ千葉県で発生した「福田村事件」が映画になり話題を呼んだが、検見川事件を知る人は少なく、現場には事件を伝える慰霊碑なども立っていない。事件から100年超、今も消えない差別の念に警鐘を鳴らしつつ、知られざる事件を取り上げる。

講師紹介

カベルナリア 吉田
紀行ライター
1965年北海道生まれ、早稲田大学卒、読売新聞社他を経て2002年からフリー。車を使わず自分の足で歩く「実踏の旅」を重ね、沖縄と島を中心に全国を歩き、紀行文を執筆。近年は出身地である北海道も歩き続けている。最新刊は『秘境駅で途方に暮れた』(イカロス出版)、近著に『アイヌのことを考えながら北海道を歩いてみた』(ユサブル)、『新日本エロい街紀行』(アルファベータブックス)。ほかに『何度行っても変わらない沖縄』(林檎プロモーション)、『沖縄戦546日を歩く』(彩流社)、『狙われた島』(アルファベータブックス)など旅に関する著書多数。趣味はレスリング、バイオリン、料理。

  • 外国語 コースレベル選択の目安
  • 広報誌「早稲田の杜」
  • オープンカレッジ友の店