ジャンル 日本の歴史と文化

早稲田校

江戸幕府武士社会の歩み方 幕府・藩の下級武士イメージの再検討

  • 夏講座

戸森 麻衣子(東京農業大学講師)

曜日 金曜日
時間 15:05~16:35
日程 全7回 ・07月11日 ~ 09月05日
(日程詳細)
07/11, 07/18, 07/25, 08/01, 08/22, 08/29, 09/05
コード 120241
定員 41名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 20,790
ビジター価格 受講料 ¥ 23,908

目標

・江戸時代の政治や社会に対する理解を深める。
・江戸時代について、深く知ることを楽しむ。
・日本近世史研究の最前線に触れてみる。

講義概要

皆さんは、下級武士と聞いてどのような姿や光景を思い浮かべるでしょうか。古びた着物をまとい、家族総出で内職にいそしんでいる様子でしょうか。小説や時代劇の影響もあり、そうしたステレオタイプなイメージを持ってしまっているかもしれません。「下級」というのは武士社会内での序列が低いことを指すだけなので、実は、下級武士であっても経済的に豊かな存在もいました。下級武士世界は驚くほど多様だったのです。そうした下級武士の実態や、身分制社会たる江戸時代において彼らがどのような役割を果たしていたのかを知ってみませんか?本講座では、幕府の下級武士も藩の下級武士も取り上げるので、全体像をつかむことができます。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/11 武家社会の構造と下級武士 武士というと、裃を着用し、両刀を差し、供を従えて登城する姿が典型的に思い浮かびますが、それは武家社会の上層に位置する人たちです。彼らより序列が低い者たち、徒や、足軽・中間などの武家奉公人がかなりの人数おり、武家社会を支えていました。なかなか把握しにくい下級武士層の様相をふまえて、武家社会の全体構造を考えてみたいと思います。
2 07/18 大名家臣団における下級武士 国持大名と呼ばれる外様の大藩と、関八州などの譜代大名では家臣団の構造にどのような違いがあったのでしょうか。それぞれに属する下級武士は、どのような来歴を持つ者たちだったのでしょうか。江戸時代後期に諸藩で編纂された家臣の系譜を手掛かりに探っていきたいと思います。また、下級武士の生活実態なども取り上げます。
3 07/25 “維新の元勲”たちは貧しい下級武士出身なのか? 明治維新の政治変革において大きな役割を果たした、薩摩藩の大久保利通や西郷隆盛、萩藩の桂小五郎や伊藤博文に対して、時代劇での描かれ方も影響していますが、下級武士出身のイメージをもっていませんか? 彼らの出自はどういったものであり、藩論を主導する地位にいかにのし上がっていったのか、そこには藩の官僚制をめぐるどのようなメカニズムが働いていたのかを考えてみます。
4 08/01 「藩士の家臣」「旗本の家臣」の世界 将軍を頂点とする主従制のピラミッド構造は、階層が下がるほど武士としての存立が難しくなります。よって、藩士に召し抱えられた家臣となるとごく貧しい武士たちでした。しかも、藩士との身分上の差を意識せざるを得ない状態に追い込まれていく傾向がみうけられます。また、将軍の直臣である旗本に召し抱えられた家臣が置かれていた状況も同様に厳しいものでした。そうした“又者”の世界を概観します。
5 08/22 様々な下級武士のかたち 武士は、大名や旗本・御家人の系列にあると思われがちですが、身分の低い武士層についてみると各種の存在が発見できます。例えば、寺侍(寺院に仕える武士)、公家の家司(公家の家臣で武士的な存在)、郷士(村に居住し耕作して暮らすも武士としての身分を認められているもの)などが挙げられましょう。また、大庄屋や農兵のように、百姓であるものの、特別な勤めを行っている時間のみ武士として扱われる存在もありました。下級武士世界の広がりに目を向けます。
6 08/29 幕府直轄領の地付き役人と地役人 幕府直轄領には、幕府の仕事を務めておりながら、旗本でも御家人でもなく、百姓でもない存在が多々ありました。関所番・御林守・牧士などがそれにあたります。そうした諸存在は、身分上、どのように位置づけられたのかを整理してみます。また、飛騨高山郡代付地役人・美濃郡代付地役人の二つの事例を取り上げ、郡代・代官附属地役人の特質について考えます。
7 09/05 幕府御家人という下級武士の特質 御家人は徳川家臣団の下層を構成したわけですが、藩の下級武士と違って将軍の直臣であることや、巨大都市江戸に活動基盤を置いていたために、家の“流動性”をその特徴として持つようになりました。その“流動性”は武家社会の本質を変えていくことになります。最終回には、江戸の下級武士世界と藩の下級武士世界の違いや、それが時代の転換にどのように影響したのかが見えてくるはずです。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆江戸時代の武士制度に関して高校の日本史教科書レベル程度の知識がある方でしたら、全くの初心者でもご受講いただけます。

講師紹介

戸森 麻衣子
東京農業大学講師
1975年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科日本文化研究専攻博士課程修了。専攻は日本近世史。幕府直轄領(天領)の支配のしくみや、旗本・御家人などについて研究をおこなっている。著作に『江戸幕府の御家人』(東京堂出版、2021年)、『大江戸旗本 春夏秋冬』(東京堂出版、2023年)、『仕事と江戸時代―武士・町人・百姓はどう働いたか―』(ちくま新書、2023年)、『長崎奉行遠山景晋日記』(共編、清文堂出版、2005年)などがある。

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