ジャンル 人間の探求
中野校
現代宗教学 近代欧州ユダヤ文明の20世紀
市川 裕（東京大学名誉教授）
| 曜日 | 火曜日 |
|---|---|
| 時間 | 15:05～16:35 |
| 日程 |
全8回
・04月08日 ～
06月17日 (日程詳細) 04/08, 04/22, 05/13, 05/20, 05/27, 06/03, 06/10, 06/17 |
| コード | 310500 |
| 定員 | 24名 |
| 単位数 | 1 |
| 会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
| ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
・人間性の危機と宗教の役割についての明確な認識を身につける。
・具体的な問いを考える機会としたい:人類の共存を理想とした西欧近代の理念は、ユダヤ人を快く受け入れることができたのだろうか。もし失敗したとすれば、その原因は何か。そしてそれは人類の未来を悲観的にするのだろうか。
講義概要
「ユダヤ人はどこにいけば安住の地を得られるのか。」ユダヤ人にとっては、異国に生きることはむしろ常態だった。その彼らが、もしかしたら安住の地になるかもしれないと期待した地域があった。西欧近代国家である。人権という新奇な理念は、常によそ者と決めつけられた彼らに市民権を与え、国民として迎え入れたのだ。しかしこれは、人類がかつて遭遇したことのない大きな挑戦だった。私たちは、物理的絶滅の危機という無残な結末を知っている。そればかりか、その後の欧州のユダヤ人の葛藤と新たな出立も知っている。ここで改めて、ユダヤ人の思想的挑戦、試練との対決のあり様を見直して、人類の今後の生存の在り方に思いをはせていきたい。
各回の講義予定
| 回 | 日程 | 講座内容 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 04/08 | ヨーロッパのユダヤ人の歴史を回顧する:同化と反ユダヤ主義 | 近代以前と近代の存在形態の変化を歴史的に俯瞰する。「国家の中の国家」から「モーセの宗教を信じる同じ国民」へ。西欧と東欧で近代化に時間差が生じた。人口の規模の違い。 |
| 2 | 04/22 | ハイネとマルクスのヨーロッパ観とユダヤ人論 | 啓蒙主義の楽観的世界観とともにヨーロッパ社会に参入した二人は、ユダヤ的出自を超えてはるかな人類の未来を思い描いたように見える。 |
| 3 | 05/13 | 20世紀前半の同化主義を襲った不安と恐怖:東欧ユダヤ教への憧憬 | 西欧社会への同化に希望を見出したはずのユダヤの若者を襲った根無し草の言いようのない不安。その彼らに、「魔術の巣窟」と侮られた東欧ユダヤが希望の未来となっていく。 |
| 4 | 05/20 | 学塾イェシヴァの復活:ユダヤ人の魂の創造空間の可能性 | かつて離散ユダヤ人を支えたラビ・ユダヤ教は、啓蒙の理念によって打ち捨てられるかに思えたが、はるか北方バルト三国で不死鳥の如く蘇り、ユダヤの未来を照らす光明に。 |
| 5 | 05/27 | ホロコースト以後の西欧に生きる気概:レヴィナスの選択 | ナチに親族を殺害され自身も5年に及ぶ捕虜生活を強いられた実存主義哲学者は、なぜフランスを生きる場に選んだのか。ハイデッガーとの対決を可能にした彼の良心の闘いとは。 |
| 6 | 06/03 | シオニズムの理想と現実:普通の国か宝の国か | ホロコーストに打ち勝つ唯一の方法は主権国家の建設だ、と主張して、夢物語を実現したシオニストは、100年もたたないうちに得体のしれない力に抗おうとしているかのようだ。 |
| 7 | 06/10 | 移民国家アメリカを志向したユダヤ人:契約の国の契約の民 | ヨーロッパに見切りをつけた多数のユダヤ人はアメリカを目指し、自身に満ちてアメリカ系であることに誇りを持つに至る。ユダヤ人にとってのアメリカ文明の魅力とは。 |
| 8 | 06/17 | 離散ユダヤ人の理想社会への思索:バーリンの「品位ある社会」 | ラトビアに生れ英国の市民となったバーリンは、哲学者には似合わないのに、なぜシオニストを自称するほど肩入れしたのか。政治思想史から発見された未来の理想社会とは。 |
ご受講に際して（持物、注意事項）
◆休講が発生した場合の補講日は、6月17日(火曜)を予定しております。
備考
◆講師の都合により、4月15日(火曜)は休講となりました。補講は6月17日(火曜)に行います。
講師紹介
- 市川 裕
- 東京大学名誉教授
- 法学を学んだ後、一生の仕事として聖書研究を志し宗教学の大学院で旧約聖書を学ぶが、イエス時代のユダヤ教に強く惹かれ、ヘブライ大学に留学し律法研究に取り組む。現地のシナゴーグで1年間毎朝の礼拝に出て感銘を受ける。著書に『ユダヤ教の精神構造』、『ユダヤ的叡智の系譜』(ともに東京大学出版会)、『ユダヤ人とユダヤ教』(岩波新書)など。他に、神話学者の松村一男氏と監訳したJ・リュプケ著『パンテオン―新たな古代ローマ宗教史』東京大学出版会2024、日本ユダヤ学会編・編集代表市川裕『ユダヤ文化事典』丸善出版2024。
