ジャンル 世界を知る

中野校

【対面+オンラインのハイブリッド】中国史の五人の僧侶―アジアと日本をつなぐ仏教の歴史

  • 春講座

加藤 徹(明治大学教授)

曜日 火曜日
時間 10:40~12:10
日程 全5回 ・05月20日 ~ 06月17日
(日程詳細)
05/20, 05/27, 06/03, 06/10, 06/17
コード 310315
定員 36名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 14,850
ビジター価格 受講料 ¥ 17,077

目標

・中国史に対する理解を深める。
・仏教に対する見方を広げる。
・日本とアジアのつながりを再認識する。

講義概要

紀元前のインド北東部で誕生した仏教が、6世紀の日本に伝来して定着するまで、アジアを横断する壮大なリレーがありました。本講座では、中国で活躍し日本仏教にも大きな影響を与えた五人の僧侶、鳩摩羅什(くまらじゅう)、達磨(だるま)、玄奘(げんじょう)、慧能(えのう)、鑑真(がんじん)の生涯を取り上げ、豊富な図版を使いながら、予備知識のないかたにも、わかりやすく解説します。
※参考図書についてはホームページでご確認ください。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 05/20 鳩摩羅什(くまらじゅう)――日本人も読むお経を訳したシルクロード出身の訳経僧 中国人は儒教・仏教・道教を「三教」と呼びます。中国発の儒教や道教は漢民族の民族宗教という色彩が強い。それに対して、中国人にとって外来の宗教であった仏教は、当初は全く中国社会に広がりませんでした。しかし4世紀の五胡十六国時代、少数民族(「胡」)と漢民族の連合政権である「胡漢融合国家」が成立すると、民族の枠を超えた世界宗教が必要となりました。胡漢融合国家が求めた人材が、西域(シルクロード)出身の天才的訳経僧・鳩摩羅什(344年?-413年?)でした。鳩摩羅什は単なる訳経僧ではなく、インドとシルクロードの仏教から「中国仏教」を導き出した布教者でもありました。彼が漢訳した『法華経』『阿彌陀経』『般若経』『維摩(ゆいま)経』など三百余巻の漢訳仏典は、中国仏教のみならず、朝鮮半島、日本列島、ベトナムなど、漢字文化圏の各地で大乗仏教が広まる起爆剤となったのです。
2 05/27 達磨(だるま)――本当は手も足もあったインドからの渡来僧 「祖師西来意」は禅の公案で「禅の祖師である達磨がわざわざ西のインドからやってきた真意は何か?」という意味です。伝承によれば、南インド出身の僧・達磨は、西暦527年、海路で中国にやってきて、南北朝時代の梁の武帝と会見しました。日本の浄土真宗では高く評価される梁の武帝ですが、禅宗の伝承では武帝の仏教理解は表面的でした。その後の達磨の「面壁九年」などの伝説から、日本では手足がない「だるま像」がつくられました。達磨のモデルとなった渡来僧は実在したようですが、達磨についての伝承や記録は伝説的なものが多い。達磨非実在説さえあります。ただ、伝説にいどられた達磨の説話を分析すると、6世紀当時の中国人の仏教理解の限界や、インド、中国、日本の禅の違いなど、興味深い事実が見えてきます。
3 06/03 玄奘(げんじょう)――日本とも縁が深い「孫悟空のお師匠」 日本人が読む『般若心経』の訳者である玄奘(600年-664年)は、『西遊記』の孫悟空の師匠・三蔵法師のモデルです。史実の玄奘も陸路で中国とインドを往復し、詳細な旅行記『大唐西域記』を残しました。日本の日蓮も『大唐西域記』の説話を引用するなど、玄奘の日本への影響は絶大でした。玄奘がインドに留学した理由は、それまでの中国のお経が鳩摩羅什など中央アジア出身者を経由したものであったため、直接インドで原典を研究し、新たな「仏教東漸」を図るためでした。中国に戻った玄奘は訳経事業に精力的に取り組み、日本から来た若い僧・道昭(629年-700年)を熱心に指導しました。玄奘という人物を介して、インド、中国、日本の仏教が、リアルタイムでつながったのです。その玄奘の遺骨の一部は、今、日本にあります。『西遊記』の三蔵と史実の玄奘の違いも含めて、わかりやすく解説します。
4 06/10 慧能(えのう)――日本・中国・韓国・ベトナムの禅僧の「共通祖師」 中国禅宗の開祖である達磨は非実在説もある伝説的な人物ですが、禅の六祖こと六代目の祖師である慧能(638年-713年)は実在した高僧です。慧能は貧しい母子家庭の出身で、幼少期に教育を受けられず、生涯、文字の読み書きができませんでした。しかし修行の末、東アジアの禅宗系仏教の「六祖」こと第六代の共通祖師となりました。彼の説法集『六祖壇経』は、中国人の著作としては唯一、釈迦の説法集と同等の価値をもつ「お経」として扱われました。日本の曹洞宗・臨済宗・黄檗宗(おうばくしゅう)を始め、中国・韓国・ベトナムの禅宗の「共通祖師」である慧能の、ドラマチックな生涯を紹介します。
5 06/17 鑑真(がんじん)――日中友好の象徴として語り継がれる高徳の僧 奈良時代の仏教界の顔ぶれは、中国出身の道璿(どうせん 702年-760年)、インド出身の菩提僊那(ぼだいせんな 704年-760年)、ベトナム出身の仏哲(ぶってつ 生没年不詳)など国際色豊かでした。唐の高僧・鑑真(688年-763年)は、752年の大仏開眼(だいぶつかいげん)には間に合いませんでしたが、何度も失敗した末に第六回目の渡海で753年に来日に成功しました。鑑真は、日本初の本格的な戒壇を設けたほか、日本の律宗と天台宗の成立にも決定的な影響を与えました。21世紀の今も日中友好の象徴として語られる鑑真の生涯を追いながら、中国仏教と日本仏教の違いや、日本仏教の戒律の特殊性についても、わかりやすく解説します。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆本講座は対面でもオンラインでも受講できるハイブリッド講座です。対面・オンラインのご都合の良い形式でご受講いただけます。
◆休講が発生した場合の補講日は6月24日(火)を予定しています。
◆講師は中野校の教室で講義し、オンラインで同時配信いたします。
◆対面でご受講される方は、通常の対面講座と同様に開講確定後にお送りする教室案内通知記載の教室にお越しください。
◆あらかじめ、加藤徹著『貝と羊の中国人』(新潮新書)をお読みくださると、いっそう理解が深まると思います。
◆テキストはありません。教材はネット上に公開します。教室での対面受講者にはプリントを配付します。
◆オンラインで受講される方はオンライン講座と同様にマイページからご受講ください。
◆オンラインは、Zoomのウェビナー形式を使用しています。
◆オンラインでの受講予定の方はお申込みの前に必ず「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆本講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け)
【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)

講師紹介

加藤 徹
明治大学教授
1963年、東京生まれ。東京大学中文科を卒業後、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。文学修士。専門は京劇(中国の伝統演劇)。著書に『京劇』(中公叢書、2002年度サントリー学芸賞受賞)、『西太后』(中公新書、2005年)、『貝と羊の中国人』(新潮新書、2006年)、『漢文で知る中国』(NHK出版、2021年)その他がある。2025年4月よりNHKテレビ「中国語!ナビ」に出演中。
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