ジャンル 世界を知る
中野校
教科書では学べない新・西洋史 社会・生活・制度から見る古代と中世ヨーロッパ
新保 良明(東京都市大学名誉教授、元・文部科学省教科書調査官)

曜日 | 火曜日 |
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時間 | 13:10~14:40 |
日程 |
全10回
・04月01日 ~
06月17日 (日程詳細) 04/01, 04/08, 04/15, 04/22, 05/13, 05/20, 05/27, 06/03, 06/10, 06/17 |
コード | 310302 |
定員 | 24名 |
単位数 | 2 |
会員価格 | 受講料 ¥ 29,700 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 34,155 |
目標
・巨大なローマ帝国がどのように統治され、維持されていたのか、そして中世国家がどうであったのかを理解する。
・キリスト教がなぜ迫害されたのか、その反面、どのようにしてヨーロッパの普遍的宗教になったのかを理解する。
講義概要
「ヨーロッパとは何か」という素朴な問いに対し、「古代ギリシア・ローマの文化+ゲルマン人の精神+キリスト教」と回答されることが往々にしてあります。本講義はこれをベースにしつつ、近年の歴史学研究の成果もとりいれながら、前近代の西洋史像を描いてみたいと思います。その際、受講生の幅広い興味関心に応えるため、さまざまな映画や文学・童話、絵画などを切り口にして、西洋史の教養書や高校世界史の教科書が触れない内容についても積極的に取り上げるつもりです。※本講座は2021年春期および2022年春期の同名講座の内容に、新たな知見を大幅に追加して再構成しています。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 04/01 | 風呂をめぐる「新西洋史」― 歴史の新鮮なみかた、楽しみかた | 古代ローマ社会では、カラカラ浴場に代表されるように、入浴が一つの文化を形成し、市民は公共浴場(テルマエ)での入浴を楽しみにしていました。これを背景にマンガならびに映画の『テルマエ・ロマエ』が成立することは言うまでもありません。ならば、主人公のルシウス(古代ローマの浴場設計技師)が現代のローマやパリなどヨーロッパの都市にタイムスリップせずに、毎回、現代日本にやってくるのは一体なぜなのでしょうか。チコちゃんに怒られないよう、その謎を解いてみましょう。 |
2 | 04/08 | 古代ギリシア民主政の光と影 | 現代の「民主政」「民主主義」のルーツが古代ギリシアにあることは言うまでもありません。とはいえ、ギリシアの二大ポリスであるアテネとスパルタでは、その成立の経緯、様相の点で違いを抱えていました。これらを踏まえて、非民主的な面にも目を向けてみましょう。その一つが女性の存在です。ポリスの民主化が進むにつれて、女性の法的・社会的地位は下降していくのです。なぜでしょうか? |
3 | 04/15 | ローマ皇帝と帝国社会 | ローマ皇帝は「万世一系」であったのでしょうか。実は、そのような状態にはありませんでした。では、皇帝はどのようにして即位していたのでしょうか。また帝政前期のローマ帝国は300名弱という極少数の官僚により統治されていました。EU以上の面積を支配下に置く巨大帝国ローマがこのような小規模官僚制でコントロールされていた秘密に迫ってみましょう。 |
4 | 04/22 | キリスト教の成立と迫害 | イエス・キリストの誕生日は西暦に基づくと、紀元後1年12月25日ということになります。しかし、これは新約聖書(特に福音書)で確認できるのでしょうか?またイエスはなぜ処刑され、キリスト教徒はローマ帝国下、なぜ迫害にさらされたのでしょうか。 |
5 | 05/13 | ゲルマン民族大移動とキリスト教拡大策 | 西ローマ帝国崩壊の原因を考えつつ、初期キリスト教徒がヨーロッパにおいて少数派であった点を踏まえ、ローマ・カトリック教会が信者獲得のために採った「あの手、この手」を確認してみましょう。さらに、最初の女性たる「イヴ」に着目して、キリスト教の女性観にも目を向けましょう。 |
6 | 05/20 | 封建社会の成立 | 北からノルマン人、東からマジャール人、南からイスラーム勢力による圧迫を巡って、ヨーロッパ各地が自衛の道を模索した過程を確認しましょう。これを理解するために、「長靴をはいた猫」を導きの糸とします。そもそも、なぜ猫は長靴を履かねばならなかったのでしょうか。実は、そこにこそヨーロッパ封建制の実相の一面を垣間見ることができるのです。 |
7 | 05/27 | 11世紀のヨーロッパと農業の変化 | 中世ヨーロッパにおいて11世紀は大きな転機を意味しました。対外的発展期を迎えるからです。その中で、農業の変化も取り上げますが、日本ではかつて仏教的に忌避(精進料理を想起しましょう)されてきた「肉食」がなぜヨーロッパでは受容されたのかを確認しましょう。つまり、小麦などの穀物生産と家畜の飼育は有機的に関連していたのです。 |
8 | 06/03 | 中世都市と修道院 | 都市と修道院の内実を明らかにする一方で、前者については「ハーメルンの笛吹き男」が実際に起きた事件を基にして創作・脚色された点に着目し、ストーリーに決定的影響を与えた時代背景を確認しましょう。また後者については、修道院を舞台にした映画『薔薇の名前』に触れてみましょう。最期に、都市と修道院に関連する「時間」概念を考えてみることにします。 |
9 | 06/10 | 大学の誕生 | 12世紀にはイタリアのボローニャにおいて世界最古の大学が誕生します。なぜ、この時期に大学が登場してきたのでしょうか。そしてボローニャ大学は学生が教師を管理するという点を大きな特徴としていました。現代の大学との違いを意識しながら、成立の経緯や組織形態を確認していきましょう。ちなみに、大学を意味する英単語university, collegeはラテン語の「組合」を意味します。なぜ組合が大学の基礎と関連するのでしょうか。 |
10 | 06/17 | 封建制の危機とルネサンス | ボッカチオ『デカメロン』にも登場する黒死病(ペスト)はヨーロッパ社会に甚大な影響を与えたと言われます。これは14世紀の出来事でありますが、当時、イタリアではルネサンスも始まっていました。「封建制の危機」と「ルネサンス」の両方を見ながら、秋学期の「近現代編」への足がかりとします。 |
講師紹介
- 新保 良明
- 東京都市大学名誉教授、元・文部科学省教科書調査官
- 1958年長野市生まれ。東北大学博士前期課程修了。博士(文学、東北大学)。専門分野は古代ローマ史。手頃な著書として単著『ローマ帝国愚帝物語』(新人物文庫)と共著『悪の歴史 西洋編(上)+中東編』(清水書院)、『侠の歴史 西洋編(上)+中東編』(清水書院)、『歴史学者と読む高校世界史』(勁草書房)、専門書として単著『古代ローマの帝国官僚と行政-小さな政府と都市-』(ミネルヴァ書房)などがある。