ジャンル 人間の探求
早稲田校
仏教vs.キリスト教 どこがどう同じで、どこがどう違うのか?
正木 晃(宗教学者)

曜日 | 水曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全10回
・04月02日 ~
06月11日 (日程詳細) 04/02, 04/09, 04/16, 04/23, 05/07, 05/14, 05/21, 05/28, 06/04, 06/11 |
コード | 110516 |
定員 | 30名 |
単位数 | 2 |
会員価格 | 受講料 ¥ 29,700 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 34,155 |
目標
・仏教とキリスト教をさまざまな視点から対比して、それぞれの特徴を指摘します。
・どの宗教も表現が異なるだけで同一の真理をめざしてきたのか?それとも表現だけでなく真理も同一ではないのか?見極めます。
・最終目標は、「宗教」とは何か?を深く考察することです。
講義概要
私たちが「宗教」というとき、まず頭に浮かぶのは仏教とキリスト教だと思います。本講座ではまずこの二つの宗教をさまざまな視点から対比して、それぞれの特徴を見ていきます。すると、同じに思える部分と同じとは思えない部分がある事実に気付かざるを得ません。さらに進んで、ではどこがどう同じなのか、どこがどう違うのか、詳しく検討します。どの宗教も最終的にめざすところは同じだと言う人がいますが、それは本当でしょうか。宗教は互いを深く理解して、真に和解できるのでしょうか。それとも違いを認めた上で、共存するのが精一杯なのでしょうか。以上のプロセスから、「宗教」とは何か?を考えます。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 04/02 | インド型宗教vs.セム型宗教 | 仏教とキリスト教が誕生する前提となった宗教的伝統を考察します。すると、前提となった宗教的伝統に、大きな違いがあることに気付きます。インド型は輪廻転生が前提なので時間は永遠の輪を描くのに対し、セム型宗教は始めと終わりが設定されているので時間は直線を描きます。 |
2 | 04/09 | ゴータマブッダvs.イエス・キリスト | 開祖となった人物の生涯とその活動を考察します。ブッダは80年の長寿と45年間の布教活動、イエスは35年(?)の短い生涯と僅か2年ほどの布教活動でした。また、ブッダは自然死なのに対し、イエスは処刑という異様な死でした。その死の違いが、二つの宗教に大きな違いを生じる原因となった可能性があります。 |
3 | 04/16 | 聖典 | キリスト教の聖典はいわゆる旧約聖書と新約聖書ですから、やや厚めの本1冊です。仏教は漢訳経典の場合、A4版で1冊の厚さは5cmを超え、しかも80巻以上もあります。この大きな差はなぜ生じたのでしょうか。そしてこの大きな差に真理観の違いがあらわになっています。 |
4 | 04/23 | 仏vs.神 | 仏教が崇拝対象とする仏菩薩は複数います。とりわけ大乗仏教ではそれが顕著です。キリスト教の崇拝対象は唯一絶対の神一人です。この違いはとても大きいと言えます。しかもイエスは、キリスト教の開祖でありながら、同時に神として崇拝されます。ちなみに仏教は、世界創造神の存在を認めていません。世界はおのずから生まれたとみなすからです。仏教では努力によって人は仏に成れますが、キリスト教ではどんなに努力しても人は神になれません。 |
5 | 05/07 | 暴力/平和 | ブッダもイエスも、暴力を徹底的に否定しました。この点は同じですが、仏教がブッダの教えを守って、暴力をあまり行使しなかったのに対し、キリスト教はたとえば十字軍のように、イエスの教えを無視して、暴力を大々的に行使してきました。この違いがなぜ生じたのでしょうか。 |
6 | 05/14 | 悪魔 | どの宗教でも悪魔が登場します。仏教とキリスト教も例外ではありません。ブッダもイエスも、生涯にわたり悪魔と付き合っています。意外かもしれませんが、ブッダは悟った後も悪魔と対話し続けました。またキリスト教の場合、すべてを創造した万能の神が、なぜ悪魔の存在を許したのか、大きな謎として残されました。 |
7 | 05/21 | 性 | ブッダもイエスも、性行為を否定しました。その徹底ぶりはブッダの方が強く、イエスは一夫一妻間の性行為を最小限の性行為として容認していたようです。ところが仏教はやがて性行為に寛容になり、8世紀以降は性行為こそ悟りへの近道と説く密教を生み出しました。ちなみに日本仏教はおおむね性行為に、ときには同性愛にも寛容な傾向がありました。 |
8 | 05/28 | 自然観 | 仏教とキリスト教の自然観は大きく異なります。仏教は概ねの傾向として、人間と自然の間に徹底的な断絶を認めませんでした。特に日本仏教はその傾向が顕著で、自然すら成仏するという思想を育みました。キリスト教は自然と人間の間に徹底的な断絶を認め、自然は人間が生きていくための素材、もしくは搾取の対象とみなされました。またキリスト教は人間と動物の間にも徹底的な断絶を設定してきましたが、仏教は人間と動物の間にさして差違を認めませんでした。 |
9 | 06/04 | 死後世界 | 死後世界と死後も存続する霊魂の存在は、ほとんどの宗教にとって、暗黙の前提です。この点でキリスト教は標準的です。ところが仏教はそうとは限りません。ブッダは死後世界の存在は認めていましたが、霊魂については肯定も否定もしませんでした。また日本仏教の場合、浄土真宗のような阿弥陀信仰はキリスト教によく似ていて、阿弥陀仏に対する信仰のみで理想の死後世界(極楽浄土)に生まれ変われると主張してきました。 |
10 | 06/11 | 芸術 | セム型宗教は原則として具象表現に否定的でしたが、キリスト教は布教の媒体として容認してきました。仏教も具象表現の導入に積極的でした。そのためキリスト教も仏教も美術を発展させてきました。また音楽についても両者は導入に熱心でした。結果的に仏教圏とキリスト教圏で多種多様な芸術が開花したのです。 |
講師紹介
- 正木 晃
- 宗教学者
- 1953年、神奈川県小田原市生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本仏教・チベット仏教)。文献研究に留まらず、現地調査を実施しチベット・ヒマラヤ地域の調査は20回に及ぶ。高度でありながら誰でも理解できる仏教学を志向。著作は『「ほとけ」論』『現代日本語訳 法華経』など多数。