ジャンル 文学の心

早稲田校

松本清張を読む

  • 春講座

高橋 敏夫(早稲田大学名誉教授、文芸評論家)

曜日 火曜日
時間 13:10~14:40
日程 全5回 ・05月13日 ~ 06月10日
(日程詳細)
05/13, 05/20, 05/27, 06/03, 06/10
コード 110156
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 14,850
ビジター価格 受講料 ¥ 17,077

目標

・松本清張が創出した社会派ミステリーの意義をたしかめる。
・各作品がどのように人と社会と時代にむきあったかを確認する。
・松本清張のように「何故だろう」という問いを日々の生活にむける。

講義概要

松本清張がこの混乱の時代に大々的に復活しています。松本清張は、人と社会の暗い秘密をさぐりあて、それを暴露し、告発しつづけました。今回精読するのは次の5作品です。東京の税務署で起きた連続殺人事件を追う『歪んだ複写』。中央官庁における汚職の顚末をえがく『中央流砂』。美術界と美術業界との悪しき癒着を問う『天才画の女』。華やかな結婚式場の上をカラスの大群が不吉に舞う『黒い空』。実際に起きた総合商社(安宅産業)の破綻をモデルにした『空(くう)の城』。テキスト指定はしませんが、文庫本などが手に入りましたらぜひそれぞれの作品を読んでおいてください。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 05/13 東京の税務署で起きた連続殺人事件を追う――『歪んだ複写』を精読する 事件を追い、執拗に記事にしてきたR新聞社会部記者田原典太は、これで税務署も反省するだろうかとの同僚からの問いに、「反省するもんか。一つの悪事が出れば、もっと巧妙に立回るだけだよ」と答える――。
2 05/20 中央官庁における汚職の顚末をえがく――『中央流砂』を精読する 農林省内で、原糖の輸入割り当てをめぐって汚職が発覚。局長らは課長補佐の倉橋で事件を収めようと、自死を迫るも倉橋はそれを拒んだ。傑作短篇「ある小官僚の抹殺」から始まる「小官僚もの」の集大成と本作を評価する者も多い。
3 05/27 美術界と美術業界との悪しき癒着を問う――『天才画の女』を精読する 画のコレクターとして有名な銀行社長は、画廊から届いた新人降田良子の絵に驚く。具象でも抽象でもない、今まで見たことのない幻想画だった。ライバル画商も加わり、降田の「天才画」の売り出しが始まる。しかしこの幻想画には秘密があった。
4 06/03 華やかな結婚式場の上をカラスの大群が不吉に舞う――『黒い空』を精読する 松本清張最晩年の作品のひとつにして、「黒い」が入った最後の作品とされる。東京都八王子市の郊外型結婚式場「観麗会館」は今日も賑わいを見せているが、空には無数のカラスが不吉に舞う。ここにはある殺人事件が関係していた。
5 06/10 実際に起きた総合商社の破綻がモデルとなった――『空の城』を精読する 『空の城』は、1977年に起きた安宅産業倒産をモデルにしている。しかし、倒産事件そのものが主題ではなく、社主の「芸術的」な孤独と、アメリカ現地法人社長の突進を対極においた作品になったと松本清張は述べている。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆テキスト指定はしませんが、文庫本などが手に入りましたらぜひそれぞれの作品を読んでおいてください。

講師紹介

高橋 敏夫
早稲田大学名誉教授、文芸評論家
1952年香川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。早稲田大学文学部・大学院文学研究科教授を経て、現在、早稲田大学名誉教授。日本近現代文学研究。『松本清張 「隠蔽と暴露」の作家』(集英社新書)、『藤沢周平 負を生きる物語』(同)、『井上ひさし 希望としての笑い』(角川新書)、佐高信との長篇対談など多くの著作がある。
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