ジャンル 世界を知る

オンライン

スキャンダルのイギリス史 近代篇

  • 冬講座

齊藤 貴子(早稲田大学・上智大学大学院講師)

曜日 水曜日
時間 13:00~14:30
日程 全5回 ・01月15日 ~ 02月12日
(日程詳細)
01/15, 01/22, 01/29, 02/05, 02/12
コード 740334
定員 50名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 14,850
ビジター価格 受講料 ¥ 17,077

目標

・当時の世間を騒がせ、後世まで語り継がれてきた歴史的スキャンダル (事件、事故、情事etc.)を通じてイギリスを知る。
・イギリス(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の歴史を芸術的観点から考察する。
・イギリスを例にスキャンダリズムのありようについても可能な限り理解と考察を深める。

講義概要

古の昔から21世紀の今日に至るまで、イギリスという国はスキャンダルに事欠きません。政治・経済の分野はいうに及ばず、宗教や芸術といった文化方面でも、歴史上のエポック・メイキングとなるような重大な不祥事がいくつも起こってきました。そしてまた、たとえ王室だろうと官邸だろうと、対象を常に同じまな板の上にのせ、実際に起こった出来事を正しく伝えることで、良くも悪くもスキャンダリズムを貫いてきたのがイギリスという国でもあります。本講座では、中世から現代までの各種歴史的なスキャンダルを通じて、イギリスという国そのものへの理解と関心を深めていきます(今期は18世紀に起こったスキャンダルの数々を取り上げます)。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 01/15 「女王陛下のお気に入り」の栄光と転落 18世紀初頭、スチュアート朝最後の君主として登場したアン女王の時代には、度重なる家庭的不幸から心身のバランスを崩した女王の「友人」として、側近であるモールバラ公爵夫人サラ・チャーチルが大変な権勢をふるうようになります。宮廷女官の最高位ミストレス・オブ・ザ・ローブズ(Mistress of the Robes)として公私にわたり女王を意のままに操り、栄華を極め、贅沢の限りを尽くした彼女の存在は、まぎれもなく宮廷政治における一種の危機でした。その名が示す通り、第二次世界大戦期の首相ウィンストン・チャーチルの遠い祖先でもあるサラ・チャーチルの成功と失敗、とりわけ彼女自身の誤算による失脚の経緯を、今や世界遺産となったチャーチル家の邸宅ブレナム宮殿や、アン女王の治世におけるイングランドとスコットランドの合同(=グレート・ブリテン王国誕生)の意義、さらには二大政党制を基盤とする議会政治の発展の流れのなかで概観します。
2 01/22 美しき母の幽閉〜ハノーヴァー朝の親子の確執〜 長年にわたり妊娠出産を繰り返しながらも、世継ぎを残せず崩御したアン女王の代で、17世紀以来のスチュアート王朝は断絶。遠縁にあたる新国王ジョージ1世がドイツから迎えられましたが、すでに齢五十を過ぎていた王の傍らに妃ゾフィーの姿はなく、美女の誉れ高かった彼女は姦通・出奔の恐れありとして32年もの間ドイツの城に幽閉され、そのまま王妃としてブリテン島の地を一度も踏むことなく亡くなりました。これは当事者である夫婦間というより、嫁姑の過去の因縁に端を発し、ほとんど母に会えぬまま成長した後のジョージ2世と父王との親子関係に大変な禍根を残すことにもなった悲劇的な事件といっていいでしょう。美しき妃ゾフィーを追い詰め、子から母を奪った私憤私怨絡みのスキャンダル――その身勝手な罪深さを改めて振り返りたいと思います。
3 01/29 バブル崩壊!南海泡沫事件 18世紀前半のイギリスでおこった株価の急騰と暴落、当該株発行元の「南海会社」の社名からその名も「南海泡沫事件(South Sea Bubble)」と呼ばれる出来事は、世界初のバブル崩壊ではないにせよ、「バブル経済」の語源として有名です。21世紀の今も決して無縁ではいられない奇々怪々なる経済現象の歴史的事例として、また18世紀イギリス社会を震撼させた世紀の大スキャンダルとして、南海会社の誕生のいきさつから株発行のからくり、株売買で悲喜こもごもな目にあった政治家や宮廷人たち等について文化史的観点からも考察を深め、南海泡沫事件そのものの歴史的意義と、そこから学ぶべき教訓の何たるかを見極めたいと思います。
4 02/05 悩ましき王妃の肖像〜シャーロット王妃アフリカ人説の謎〜 2017年、現国王チャールズ3世の次男ヘンリー王子がメーガン妃との婚約を発表した際「英王室初の黒人プリンセス誕生か?」と騒がれたのは、まだ記憶に新しいところです。このニュースに呼応して当時にわかに蘇り、再注目されたのが、18世紀の国王ジョージ3世の王妃シャーロットが一部アフリカ人の血を引いていたのではないかという説です。これは彼女の遠い祖先にあたる13世紀のポルトガル王アフォンソ3世の愛妾マドラガーナが、ポルトガル最南端のムスリム支配地域(=イベリア半島におけるイスラム支配圏)の出身だったことや、ムーア人と呼ばれていたイスラム系民族とアフリカ系民族の混同から生じた一種の珍説で、今ではほぼ完全に否定されています。が、かつてこの説が流布するうえで、しばしば根拠として持ち出されたのが、宮廷画家アラン・ラムゼーによるシャーロット王妃の肖像画でした。当該肖像画およびその他のシャーロット王妃の肖像画をつぶさに鑑賞し、そこから浮かび上がる夫ジョージ3世との関係や家庭生活の様々な面にまで目配りしつつ、シャーロット王妃アフリカ人説の是非を今いちどきちんと問いたいと思います。
5 02/12 18世紀ロンドン社交界の花形:デヴォンシャー公爵夫人ジョージアナ 18世紀後半の第5代デヴォンシャー公爵夫人ジョージアナは、その美貌とカリスマ的な社交性、ホイッグと呼ばれる急進派政治家たちへの絶大な影響力や文芸への深い理解、さらに自身の奔放な恋愛および妻妾同居状態だった複雑な夫婦関係等でつとに有名でした。彼女こそは、近代イギリスが生んだ最も華やかなセレブだったといえるでしょう。実際、今は亡きダイアナ元王太子妃および現チャールズ国王の実弟ヨーク公アンドルー王子の元妃セーラ・ファーガソンの祖先にもあたるジョージアナを知ることは、彼女によく似たダイアナ元妃やセーラ元妃を知ることにもつながり、イギリスのセレブの歴史を知ることにほかなりません。様々なエピソードをしのばせた数々の肖像画を主たる頼りとして、スキャンダルに事欠かなかったデヴォンシャー公爵夫人ジョージアナの人生と、彼女が生きた時代と社会とを総じてご紹介します。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講は、2月19日(水)を予定しています。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず
「オンラインでのご受講にあたって」
をご確認ください。
◆お申込みいただいた有料講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け)
【ビジター】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)

講師紹介

齊藤 貴子
早稲田大学・上智大学大学院講師
早稲田大学教育学部英語英文学科卒、同大学院教育学研究科博士課程修了後、助手を経て現職。専門は近代イギリス文学・文化。主として詩と美術の相関を研究。『ラファエル前派の世界』(東京書籍)、『英国ロマン派女性詩選』(国文社)、『肖像画で読み解くイギリス史』(PHP研究所)、『イギリス恋愛詞華集―この瞬間を永遠に―』(研究社)など著訳書多数。
  • 外国語 コースレベル選択の目安
  • 広報誌「早稲田の杜」
  • オープンカレッジ友の店