ジャンル 現代社会と科学
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DNAと神話が語る人類史―ホモ・サピエンスの移動と世界の神話の関係を考える
後藤 明(南山大学人類学研究所研究員、元南山大学教授)
曜日 | 月曜日 |
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時間 | 13:00~14:30 |
日程 |
全6回
・01月20日 ~
03月10日 (日程詳細) 01/20, 01/27, 02/03, 02/10, 03/03, 03/10 |
コード | 740712 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・人類進化史の最前線を学ぶ
・人類進化の中で世界の神話がどのように広がったかを学ぶ
・人類進化史の中での日本神話の位置づけを学ぶ。
講義概要
遠く離れた地に似た神話が語り継がれている。アフリカで発生したホモ・サピエンスの移動は人類学やDNA研究によって徐々に解明されているが、世界神話学説にそって移動ルートと神話素の分布を重ね合わせると、世界の神話の中に、ゴンドワナ型(南アフリカ、南インド、東南アジア、オーストラリアなどに多い)とローラシア型(エジプト、メソポタミア、ギリシャ、ヨーロッパ、中国など文明圏中心)の2つの神話群が浮かび上がる。本講座では最新学説によって明らかになった人類の移動に伴う最古の神話や天文学について概観し、人類最古の物語と科学思考の起源へさかのぼる旅に誘う。同時に日本神話の世界的意味について考えたい。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 01/20 | 人類進化と遺伝子・神話素、および神話とはなに:世界神話学説への招待 | アフリカで20万年前に進化したとされるホモ・サピエンスの移動ルートを古人類学、考古学、言語学、遺伝子学、脳科学などから概観し、世界の神話の類似を説明する枠を確認する。あわせて神話、特に創世神話とはどのようなことがテーマとなるかを論ずる。具体的には宇宙や自然の起源、動植物の起源、人間の起源、そして文化(火、作物、技術など)の起源神話である。 |
2 | 01/27 | 人類最古のゴンドワナ型神話と日本神話への影響 | 人類が神話を語っているとして、それはいつからか、どのような証拠からいえるのかを論ずる。そして人類移動のもっとも古いルートといわれるアフリカからインド海岸、東南アジアのスンダランドそしてサフル大陸(ニューギニアやオーストラリア大陸)、さらに南米アマゾニアに共通する神話から人類最古の神話の原型を考える。近年のDNA研究では日本人の最古にたどれる遺伝子は東南アジアのネグリト系であるといわれているが、日本神話の中で、古層のゴンドワナ型神話にまで遡りうる神話素を探し、日本列島が北ルート(第3回講義)、南ルート(第4回講義)をつなぐブリッジ的位置づけにあったことを示す。 |
3 | 02/03 | 北方ルート:コズミックハント(宇宙の狩り)、アイヌ民族の森の王や熊祭の系譜、など | アフリカからアラビア半島を経由してヨーロッパ方面に入った集団が、ユーラシアに入り北を通ってシベリアからさらにアメリカ大陸へ至ったルートにそった神話を概観する。アースダイバー、コズミックハント、熊祭などを見ながら、北海道アイヌの文化や東北地方のナマハゲなどにも言及する。 |
4 | 02/10 | 南方ルート:海の民の発生とポリネシア人の宇宙観 | 南太平洋には日本の縄文時代に新たな集団が海の民となって移動した。それがハワイやラパ・ヌイ(イースター島)やアオテアロア(ニュージーランド)に渡っていったポリネシア人たちである。彼らのルーツや前人未踏の島々へと渡っていった理由、その知恵、とくに天体を使った航海術や宇宙観について迫りたい。またその後西洋で「南海の楽園」というイメージが作られていた事情にも言及したい。 |
5 | 03/03 | 古代文明の宇宙観 | 神話の新層であるローラシア型の背景を古代の神殿遺跡の出現や背景にある天文学などと関連して概観する。そして日本列島へのインパクトについても考察する。また古代の文明とともに英雄サイクル的な叙事詩が世界各地の古代文明や王権を正当化する神話として発達してくる。英雄サイクル的神話は近年の映画(例 スターウォーズ、タイタニック)等にも成功をもたらす人類の元型的な思考であるという仮説の批判的検討も行う。 |
6 | 03/10 | 世界神話学から問い直す日本神話 | 世界神話学を概観した後、日本神話の系譜、背景にある世界観について人類史の中で考える。神話冒頭の混沌の世界と原初大海、湿地のような状況(メソポタミア、エジプト)、卵のような原初世界(中国神話)。最初の兄姉神イザナキ・イザナミに関しては、柱を回る兄妹神、オルフェウス型、呪的逃亡神話素から考察する。死体化成型のオウゲツヒメ神話、バナナ型のコノハナサクヤビメ神話など。関連して縄文土偶を巡って:南方説(死体化成型)と北方説(山の神、北方シャーマニズム説)などの紹介を行う。さらに日本神話における天体神話の可能性、さらに釣針喪失譚と英雄サイクル、浦島物語、そして日本らしいテーマとして火山や地震・津波(物言う魚、ウナギと地震)などについて論じたい。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講日は3月10日(月)を予定しております。
◆本講座は、2023年度冬学期にオンラインで開講した同名講座の内容をもとに、新たな知見を加えてお話しします。
◆Zoom ウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆お申込みいただいた有料講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30 までに公開します。インタ
ーネット上で 1 週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け)
【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)
備考
2/17(月)は休講となりました。補講は3/10(月)に実施いたします。
講師紹介
- 後藤 明
- 南山大学人類学研究所研究員、元南山大学教授
- 東京大学で考古学を専攻し、修士修了の後、ハワイ大学で人類学Ph.D.を取得。オセアニアの海洋人類学や天文人類学が主なる関心。沖縄海洋博公園海洋文化館のリニューアルの総監修を務め、現在、沖縄美ら島財団の研究顧問、喜界島サンゴ礁科学研究所学術顧問、沖縄伝承話資料センターの理事などを務める。エアドーム式プラネタリウムを使った人類学的天文学「アンソロポリウム」を日本各地で展開中。主な著作に『世界神話学入門』『海から見た日本人』『海を渡ったモンゴロイド』(以上、講談社)、『物言う魚たち』(小学館)、『ハワイ・南太平洋の神話』『南島の神話』(以上、中央公論)、『天文の考古学』(同成社)など。