ジャンル 現代社会と科学

中野校

ビタミンDの科学からみた医薬品開発

  • 冬講座

橘高 敦史(帝京大学名誉教授)

曜日 金曜日
時間 10:40~12:10
日程 全4回 ・01月17日 ~ 02月07日
(日程詳細)
01/17, 01/24, 01/31, 02/07
コード 340705
定員 24名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 11,880
ビジター価格 受講料 ¥ 13,662

目標

・ビタミンDはどこからきたのか。また、ヒトでの生合成経路について学ぶ。
・ビタミンDの代謝活性化と作用、その後の不活性化について学ぶ。
・健康とビタミンD、そして医薬品化について考える。

講義概要

抗くる病因子ビタミンD発見から丁度100年が経つ。ヒトはこの脂溶性ビタミンを太陽光の利用で生合成する。皮膚で生成したビタミンD3は肝臓酵素の働きで25-水酸化ビタミンD3となり、近年この血中濃度と健康との関係が広く研究されている。必要に応じて腎臓酵素の働きで1位が水酸化されホルモン様作用を発揮する活性型ビタミンD3となる。核内受容体と結合した複合体は転写因子として機能し、血中カルシウム恒常性維持や骨に対する作用、細胞増殖抑制・細胞分化誘導、免疫系への作用など様々な働きを示す。この強い生理作用は代謝酵素の働きでやがて無力化される。この過程でビタミンD医薬品化の機会はどこにあるのか考えていきたい。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 01/17 太陽からの贈り物ビタミンD:太古に紫外線照射と熱異性化で生成した物質 地球上ビタミンDの誕生は紫外線光反応による偶然の産物だといわれるが、ヒトには抗くる病因子として発見され1925年にビタミンDと命名された。くる病治療に太陽光が絡むことでこの物質の発見には臨床と化学が協働した歴史がある。ヒトでの生合成経路を学び、化学構造からくるプレビタミンDとの熱的平衡についても紹介する。他に、ビタミンD2とD3、魚のビタミンD3はどこから、など。
2 01/24 ビタミンDの代謝活性化と作用点:驚異のホルモン様生理活性 ビタミンDには生理作用はない。肝臓で代謝酵素CYP2R1あるいはCYP27A1により分子の25位が水酸化され、25-水酸化ビタミンDとなる。この分子はビタミンD結合タンパク質との結合力が最大で、複合体として血中を移動する。必要に応じて腎臓でCYP27B1が発現して1α,25-ジヒドロキシビタミンD(活性型ビタミンD)が生産される。ビタミンD受容体と結合し血中カルシウム濃度が上昇する。すぐに自身を不活性化するCYP24A1を誘導して代謝排泄へと向かう。
3 01/31 ビタミンDと健康:現代人はビタミンD不足 ビタミンDの栄養不良では活性型ビタミンDが充分量生成せず、低カルシウム血症や二次性副甲状腺機能亢進症、さらにはくる病や骨軟化症を発症する。骨代謝には活性型ビタミンDの働きが不可欠であり、それを作る酵素CYP2R1あるいはCYP27B1が変異する場合や、正常に生成してもビタミンD受容体が変異しているとくる病を発症する。がん、炎症性疾患、神経変性疾患などにも話題を広げ、ビタミンDと健康について考える。
4 02/07 ビタミンD誘導化による医薬品開発:世界で認可されているビタミンD誘導体医薬品はこれまで8種類(骨粗鬆症、乾癬、二次性副甲状腺機能亢進症治療薬) ビタミンD3は体内で生合成されるが、日光に当たることが必要である。食事からも供給されるが、実は魚(ビタミンD3)ときのこ類(ビタミンD2)しか目的にかなう食材はない。サプリメントが市販されているが、吸収されて代謝酵素やビタミンD受容体など関連タンパク質が正常に機能する必要がある。ビタミンD医薬品開発は、関連タンパク質との相互作用を踏まえつつ、超高齢社会における健康寿命延長に重要な分野と考えられる。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講日は、2月14日(金)を予定しております。

講師紹介

橘高 敦史
帝京大学名誉教授
薬学博士(東京大学)。スイス連邦工科大学博士研究員後、昭和大学および帝京大学で有機化学/医薬化学を講義。「創薬科学・医薬化学」化学同人、等を編著。専門分野は薬化学。特にビタミンDの領域に明るい。2024年度日本ビタミン学会学会賞、日本薬学会学術貢献賞を受賞。
  • 外国語 コースレベル選択の目安
  • 広報誌「早稲田の杜」
  • オープンカレッジ友の店