ジャンル 日本の歴史と文化
中野校
人物回覧―太宰治・森繫久彌・向田邦子・五木寛之 映像で読み解くその時代
柴崎 信三(ジャーナリスト、元日本経済新聞論説委員)

曜日 | 金曜日 |
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時間 | 13:10~14:40 |
日程 |
全4回
・02月07日 ~
02月28日 (日程詳細) 02/07, 02/14, 02/21, 02/28 |
コード | 340218 |
定員 | 42名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 11,880 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 13,662 |
目標
・日本の近代の〈稗史〉を生きた人物を通してその時代を考えます。
・それぞれの人物が〈日本〉や〈アジア〉という国家とどのように向き合い、かかわってきたのかを問います。
・かれらの歩みが、その時代の歴史とどのような関係を取り結んだのかを考えます。
・かれらの行動や作品を通して、その今日から見た意味を掘り起こします。
講義概要
今回とりあげる4人は、戦後社会のなかでエンターテインメントとしての作品を通して時代のシンボルとなった作家たちです。いわば「同時代人」としての彼らがどのようにして人々に迎えられ、共感や喝采を得ていったのかを、映像作品を通してみてゆきます。終戦直後の荒れた世相のもとで「人間失格」などでベストセラー作家になった太宰、飄逸な演技によって人生の面白さと人間の哀歓を演じ続けた森繁、夫婦や家族のなかに息づく男と女のせめぎあいを巧みにドラマにした向田、そして戦後の荒廃から復興して成長へ向かう時代の日本人の夢と挫折を物語にした五木。それぞれの作品から「われらの時代」としての《戦後昭和》を探ります。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 02/07 | ①太宰治◆映画『ヴィヨンの妻』 | 戦前に心中未遂を重ねるなど、すさんだ暮らしをしてきた太宰が、結婚して子供を得た戦中期には『富嶽百景』や『津軽』などの名作を書いて、比較的安定した日々を送っていた。それが敗戦とともに再びデカダンスな生活に戻った。『斜陽』や『ヴィヨンの妻』『人間失格』など、戦後の焼跡を舞台に虚無的な物語を次々書いた。そてが戦後の日本人の心をとらえたのはなぜか。「天皇」の人間宣言が太宰にもたらした転換点とみて、その前後の作品を読み解く。 |
2 | 02/14 | ②森繁久彌◆映画『庄造と猫と二人の女』 | 満州でNHKのアナウンサーだった森繁は引き揚げのあと、喜劇俳優として映画や舞台を中心に戦後のメディアを駆け抜けた。人間の優しさと狡さの間の業を行き交う演技は、おそらく歌舞伎の人情噺の伝統に行き着く。織田作之助の『夫婦善哉』から谷崎潤一郎の作品のの男たち、はたまた映画『社長漫遊記』の軽妙と笑い、舞台『屋根の上のヴァイオリン弾き』の哀歓、さらに巧みな話芸やエッセイにいたるまで、その芸域の由来は何処にあったのか。 |
3 | 02/21 | ③向田邦子◆映画『あ・うん』 | 向田邦子は戦後の高度成長期に主にテレビの家庭劇を書いて大きな評判を得た。しかし、代表作の『あ・うん』をはじめ、その家庭劇は戦前の都会のリベラルな中産階級に依拠している。家庭という秩序と男と女の立ち位置が揺らいだ戦後であればこそ、向田ドラマは一種のノスタルジーとして日本人の共感を得ていったのではないか。小津安二郎の映画との対比で、その作品世界を探る。 |
4 | 02/28 | ④五木寛之◆映画『青春の門』 | 小説『さらばモスクワ愚連隊』でデビューした五木寛之の視野には、戦後社会が冷戦体制とその崩壊、その先のグローバリゼーションがあった。ジャズや大衆芸術をよりどころにして国境を越えたユートピアへの夢想は、やがて転換点を迎える。自伝的な大河小説『青春の門』を書き継ぐ中で、作家がの次第に仏教の精神世界へ没入していったのはなぜか。そのニヒリズムの軌跡をたどって、この作家と20世紀という時代を考える。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆各回資料配付の予定です。
◆参考書籍は、各回、教室で個別に紹介します。
講師紹介
- 柴崎 信三
- ジャーナリスト、元日本経済新聞論説委員
- 1946年東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業、日本経済新聞社へ入社。文化部長、論説委員などを務めた。獨協大、白百合女子大で表象文化論、日本文化論などを講じる。著書に『魯迅の日本 漱石のイギリス』(日本経済新聞社)『絵筆のナショナリズム』『絵画の運命』(ともに幻戯書房)『パトリの方へ』(ウエッジ)『〈日本的なもの〉とは何か』(筑摩書房)などがある。