ジャンル 現代社会と科学
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人口減少の見方・捉え方―私たちは人類史の転換点にどう対応すべきか
原 俊彦(札幌市立大学名誉教授、日本医療大学特任教授)

曜日 | 火曜日 |
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時間 | 15:30~17:00 |
日程 |
全5回
・02月04日 ~
03月11日 (日程詳細) 02/04, 02/18, 02/25, 03/04, 03/11 |
コード | 740760 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 14,850 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 17,077 |
目標
・最新のデータをもとに人口減少を正しく理解する
・人口減少を理解する上で必要な知識を身につける
・人口減少をグローバルかつ人類史的視点から考える
講義概要
最新の推計によれば世界人口は2024年の82億人から80年代半ばには103億人でピークを迎えたのち減少に転じ世紀末には102億人となる。一方、日本の人口は1.2億人から0.62-0.77億人へとほぼ半減する。この日本の人口減少は、すでに毎年、記録更新を続け政府は「異次元の少子化対策」を打ち出した。しかし人口減少は今や日本だけの問題ではなく、政府の失策や陰謀によるものでもない。晩婚晩産化の責任を若い世代に求めたり、直系家族制の衰退や経済環境の悪化などの犯人探しも有効な対策には結びつきません。なぜなら、この人口減少は、いかに止めるかではなく、いかに経済・社会・文化を適応させるかが問われているからです。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 02/04 | 縮減に向かう世界人口 | 国連の新人口推計(UNWPP24)(2024・7)や国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口(令和5年推計)(2023.4)などのデータを基に、なお人口増加が続く世界人口と減少し続ける日本の人口という二律背反的な人口動向をどう解釈すれば良いのかという問題を考える。今後増加する世界人口を地域別、年齢階層別に分解したり、1950年から2100年までの合計特殊出生率や平均寿命、平均出生年齢、純再生産率などの動向を分析し、少子高齢・人口減少の向かう世界人口の動きを展望する。 |
2 | 02/18 | 持続可能な人口の原理 | 世界人口は消滅に向かうのか。コーエン(Joel E. Cohen)は『新人口論』(1997)の中で、紀元前100万年から現在までの世界人口の変化をグラフ化し、離陸する飛行機が垂直な壁に沿い急上昇しているような、逆L字型のロングテールな曲線を示した。この「絶滅曲線」は、人口が長期的・事後的には、フラクタルな指数関数増加(幾何級数的増加)となること意味する。またマルサスの「人口の原理」は間違いではないが、人口については、さらにダブブリングタイム(倍加期)やハーフラフ(半減期)、成長の限界を含む成長曲線(ロジスティック曲線)などの知識が必要であり、これらを含めた「持続可能な人口の原理」を提案する。 |
3 | 02/25 | 多産多死から少産少死へ | 国連推計が示す世界人口の展開をどう解釈したらよいのだろうか。人口学者の頭にすぐ浮かぶのは20世紀最後のグランドセオリーといわれた人口転換理論(Demographic Transition Theory)である。この理論は、近代社会の人口は産業化の進行とともに多産多死から少産少死へ、つまり沢山の人が生まれ沢山の人が死んでゆく状態から、少なく生まれて少なく死ぬ状態へとシフトしていくとしている。さらに長寿化が進み出生力が置換水準以下となり、人口減少が始まる点については1986年に提唱されたヴァン・デ・カー(Van de Kaa)とレスタギ(Lesthaeghe)の第二の人口転換理論(The Second Demographic Transition, SDT)を待たねばならない。ここでは、日本の長期データを基に、この人口転換がなぜ起きたのかを人口学的に説明し、それが人類社会全体に共通する普遍的・必然的な現象であることを示す。 |
4 | 03/04 | 人口が減ると何が問題なのか? | 当面、我々にできることは、人口転換の地域的なタイムラグを活かし、少子高齢・人口減少のスピードを可能な限り遅らせるとももに、少子高齢・人口減少にともない生起する様々な社会・経済・文化・政治的課題に対応し、社会システムの改善を進め、その持続可能性を確保しなければならない。ここでは、人口減少にともない生じる主要な課題として、所得再分配、自然環境との関係の再編、人口再配置、合意形成について論じる。 |
5 | 03/11 | サピエンス減少の未来 | 国連の新人口推計(UNWPP24)によれば、世界人口の構成比は、アフリカの人口は 18.4%(2024) から37.4 %(2100)まで増大する一方、アジアは59.0%から45.4 %に縮減し、アジアの世紀からアフリカの世紀へと変化して行くことがわかる。その一方、日本の人口構成比は現在の1.5%から0.8%に低下する。この世界人口の構成比の変化を「世界がもし100人の村だったら」になぞらえて、人口が減少することの相対的意味や、また1人の平均的な村人(ホモ・サピエンス)の遺伝子構成の変化として捉えた場合について考える。また人口転換の主要な動因である社会的生産の未来や、出生・死亡・移動の未来について考察する |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講は、3月18日(火)を予定しています。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆本講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け)
【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)
◆この講義では原俊彦「サピエンス減少―縮減する未来の課題を探る」(岩波新書、2023年3月刊,880円税別)の各章の内容をお話します。お手元にあると理解し易いと思います。
◆事前に配布資料をダウンロードしておいて下さい。
◆ご意見・ご質問があれば、遠慮なくメール(t.hara@scu.ac.jp)にご連絡下さい。
講師紹介
- 原 俊彦
- 札幌市立大学名誉教授、日本医療大学特任教授
- 1953年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒・フライブルグ大学社会学博士(Ph.D)、北海道東海大学・札幌市立大学教授を経て,札幌市立大学名誉教授。2024年より日本医療大学総合福祉学部特任教授。近著にAn Essay on the Principle of Sustainable Population,『世界』2021年8月号特集を機に岩波新書「サピエンス減少―縮減する未来の課題を探る」(2023)。共著『SDGsの人口学』(佐藤龍三郎・松浦司編)原書房(2023)など。