ジャンル 日本の歴史と文化

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荘園の世界―播磨国矢野荘の様相

  • 冬講座

伊藤 俊一(名城大学教授)

曜日 金曜日
時間 15:30~17:00
日程 全5回 ・01月31日 ~ 02月28日
(日程詳細)
01/31, 02/07, 02/14, 02/21, 02/28
コード 740264
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 14,850
ビジター価格 受講料 ¥ 17,077

目標

・日本中世の荘園の具体像に触れる。
・荘園で繰り広げられた人間模様を知る。
・政治・経済・気候の変化が荘園に与えた影響を理解する。

講義概要

本講座では播磨国矢野荘という荘園を舞台に中世社会の実態に迫ります。矢野荘は現在の兵庫県相生市の領域に広がっていた荘園です。網野善彦氏が『中世荘園の様相』(岩波文庫)で描いた若狭国太良荘とならび、矢野荘は史料が最も豊富に残る荘園の一つで、荘園の開発過程、荘園の景観、年貢高の変化をはじめ、京都から派遣された代官、現地の有力者、働いた荘民らが繰り広げた人間模様をうかがうことができます。矢野荘は「悪党」の跳梁や南北朝の内乱の危機にさらされ、京都から土一揆が波及し、嘉吉の乱に巻き込まれるなど、外部の政治や気候変動にも翻弄されました。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 01/31 矢野荘の成立と開発 矢野荘の成立と開発について解説します。播磨国矢野荘は赤穂郡司の秦為辰が開発した久富保を中心に、鳥羽上皇妃の美福門院により周辺の山野も含めた領域型荘園として設立されました。山野は次第に開墾されて田畑となり、米・麦・蕎麦・大豆などが生産されました。矢野荘の設立に至る歴史的事情を述べた上で、その開発過程や荘園で行われた農業生産について、現地に即して明らかにします。
2 02/07 寺田悪党の台頭と没落 鎌倉時代の矢野荘について解説します。承久の乱により東国武士の海老名氏が地頭に任じられ、地頭と領家の間で下地中分が行われて領家方が東寺に寄進されます。この転変のなかから現地の有力者で秦為辰の子孫を称する寺田法念が台頭し、東寺や荘民と対立して「都鄙名誉の悪党」と呼ばれます。「悪党」の出現は鎌倉時代末の新興勢力の台頭と混沌とした世相の現れでしたが、寺田法念は荘民との戦いで敗れて追放されます。
3 02/14 代官祐尊の活躍 南北朝内乱期の矢野荘について解説します。内乱が始まると荘園は周囲の武家や守護の侵略にさらされます。矢野荘には東寺から荘園経営を専門とする妻帯の僧侶である祐尊が派遣されます。彼は有能で、播磨国守護赤松氏に対して人夫や兵糧米などをさし出し、その妻妾にも取り入って東寺の権益を守ります。しかし重い課役に苦しむ荘民は祐尊の強引さや強欲さに不満を持つようになります。
4 02/21 荘家の一揆 矢野荘で起きた荘民の一揆について解説します。南北朝時代には荘民の経営も安定し互いの結びつきも強まりました。荘民と代官祐尊との対立は抜き差しならないものとなり、荘民は集団で耕作を放棄する「荘家の一揆」を起こします。祐尊は親しい近隣の武家を動員して弾圧しようとしますが、経営を優先した東寺から解任されます。後任の代官には明済が赴任しますが、彼は副業で手広く金貸しをしており、経済問題で荘民と対立し再び荘家の一揆を招いてしまいます。
5 02/28 矢野荘の混乱と荒廃 矢野荘の混乱と荒廃について解説します。将軍足利義満・義持の時代に京都は繁栄を謳歌しますが、気候変動と過剰開発による農地の荒廃や、金融業者による高利貸しが農民の暮らしを圧迫しました。京都近郊で発生した正長の土一揆は播磨国にも波及し、矢野荘の政所が焼き討ちされます。赤松満祐が嘉吉の乱を起こして山名氏によって滅ぼされると、矢野荘も山名氏から圧迫されます。耕地の荒廃も進んで年貢も減り、矢野荘は歴史から消えてゆきました。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆参考図書:『室町期荘園制の研究』伊藤俊一著(塙書房)、『荘園-墾田永年私財法から応仁の乱まで』同著(中公新書)
◆休講が発生した場合の補講は、3月7日(金)を予定しています。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆本講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け)
【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)

講師紹介

伊藤 俊一
名城大学教授
名古屋市生まれ。博士(文学、京都大学)。専門分野は日本中世史。名城大学教職課程部専任講師を経て現職。国立歴史民俗博物館、総合地球環境学研究所の共同研究員を歴任。著書に『荘園-墾田永年私財法から応仁の乱まで』(中公新書)、『室町期荘園制の研究』(塙書房)などがある。

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