ジャンル 文学の心
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「風土記」と日本人の心のありよう
橋本 雅之(皇學館大学教授)

曜日 | 月曜日 |
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時間 | 13:00~14:30 |
日程 |
全7回
・01月06日 ~
03月10日 (日程詳細) 01/06, 01/20, 01/27, 02/03, 02/17, 03/03, 03/10 |
コード | 740101 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 20,790 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 23,908 |
目標
・日本の文化や日本人の価値観について理解を深める。
・風土と人間の関係について理解を深める。
・現代にも通じる社会問題や災害について考える力を養う。
講義概要
風土記には、古事記や日本書紀には残っていない地方独自の伝説が多く残されています。それらを読んでみると、日本人の心理的特徴、憧れや夢、災害の爪痕など、現代の私たちにとっても他人事とは思えない大切な問題に出会います。古代の地方に生きた人々が、それらの問題をどう感じて、どう向き合っていたのかを知ることは、現代を生きる私たち自身の問題を考える上でとても役に立つと思います。私たちが住んでいるこの同じ大地に生きた古代の人々の伝説に耳を傾けることを通して、皆さんと一緒に日本の風土と日本人の心のありようを探ってゆきたいと考えています。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 01/06 | 悲劇の深層に何が見えるか(1)「丹後国風土記 浦島伝説」 ―自分の心に裏切られた浦島子― | 浦島伝説はもっともよく知られた物語の一つですが、玉手箱から白い煙が出てきて浦島太郎が老人になる、という結末に疑問を感じている人も多いのではないでしょうか。最も古い丹後国風土記バージョンの浦島伝説にはこの結末はありません。浦島太郎の悲劇の深層には何が隠されているのか? この疑問を深層心理学的な考え方に学びながら、自分の心に「うらぎられた」「うらしま」の真実に迫ってみたいと思います。 |
2 | 01/20 | 悲劇の深層に何が見えるか(2)「丹後国風土記 羽衣伝説」 ―傷つけられた女性の尊厳― | 地上に降り立った天女が羽衣を奪われるという羽衣伝説は、室町時代に能舞台で演じられて人気を博しました。「丹後国風土記」に残された最古のバージョンでは、天女は老夫婦の養女となり、献身的に尽くしたあげくに追い出されてしまいます。天女はなぜ追い出されたのでしょうか。この問題を女性の傷つきという視点からみていくと、そこには現代の「いじめ」や「家庭内暴力」にまでつながる問題が見えてきます。現代社会が抱える問題を受け止めるヒントを風土記の羽衣伝説から探ってみたいと思います。 |
3 | 01/27 | 海に生きる人々の伝説(1) 「出雲国風土記 国引き神話」 ―国引きの奇跡は夜に起きた― | 島根半島は巨人の神が引き寄せて出来上がったという国土創成の神話が「出雲国風土記」の中に残されています。スケールの大きなこの神話は、いつ頃、誰が、どのような想像力を働かせて生み出したのでしょうか。古代史の研究では、この問題を出雲国の発展の中で考えてきました。この講義では、神話学と出雲国の地理的環境という視点から見直してみたいと思います。海に生きた古代人の生活と風土の中から誕生した神話を読んでいきたいと思います。 |
4 | 02/03 | 海に生きる人々の伝説(2) 「日向国風土記と播磨国風土記 太陽神の深層を読む」 ―東を目指した太陽の民― | 深層心理学者の河合隼雄は「太陽の昇るときの感動」(『神話の心理学』)と言っています。古事記の神話では太陽神の子孫は天上界から下ってきます。古代の人は「昇る太陽」と「下る太陽」のどちらに感動したのでしょうか。風土記には、日向国(宮崎県)の人々が、船に太陽神(天照大神)を祀って航海していた伝説が残されています。その伝説をたどりながら東を目指した古代人の心に触れてみたいと思います。 |
5 | 02/17 | 災害の国日本の記憶(1) 「伊勢国風土記 去って行く風の神」 ―台風の国の風土と伝説― | 今から65年前、紀伊半島に上陸した伊勢湾台風は三重県や愛知県に甚大な被害をもたらしました。古来、三重県は毎年のようにやって来る台風に苦しめられてきましたが、鈴鹿山脈から吹き降ろす冬の季節風は恵みの風でもありました。「神風の伊勢」と呼ばれるこの土地で生まれた「伊勢国風土記」の伝説を通して、災害と恵みをもたらす日本列島の風土の中で生きた人々の信仰と文化について考えてみたいと思います。 |
6 | 03/03 | 災害の国日本の記憶(2) 「豊後国風土記 災害伝説」 ―南海トラフ巨大地震の記録― | 関東大震災の襲来を警告した地震学者の今村有恒は、日本書紀の中に九州から四国に及ぶ大地震があったことを示す記録を見出しました。それが、今後30年以内に約80%の確率で発生すると考えられている南海トラフ巨大地震の最古の記録です。「豊後国風土記」にもこの地震に関する記録が残されており、これらの記録を読み解くことはこれからの防災を考える上でも大いに参考になると思います。日本の風土を正面から記録した風土記は、現代に生きる私たちにとって大切な歴史の証言であると言ってもいいでしょう。私たちが暮らす日本の風土を知ることの大切さを考えてみたいと思います。 |
7 | 03/10 | まとめとしての「風土論」 「風土記」に見る日本の風土と日本人の心 | 日本の風土論としては、倫理学者和辻哲郎の『風土』、フランスの地理学者オギュスタン・ベルクの『風土の日本』などの著名な研究があります。それらは、知的で洗練された美意識の風土論と呼べるかもしれません。それに対して、風土記から見えてくるのは「生々しい風土の中に生きる人々」の姿です。それは、富士山の裾野のような風土論と譬えることができるでしょう。この講義を締めくくるにあたり、その裾野に広がる日本人の心のありようを、風土記の伝説を通して確認したいと思います。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講は3月17日(月)を予定しております。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆本講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け)
【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)
◆11/29(金) 111:00より本講座の無料体験講座を実施します。
◆無料体験講座お申込みはこちらから。https://www1.ex-waseda.jp/online/ 「無料体験講座」をクリックし、「絞り込み」をクリックしてください。
備考
無料体験会での本講座の様子を公開しました。5分程度の動画です。
再生すると音が出ます。視聴の際はご注意ください。
講師紹介
- 橋本 雅之
- 皇學館大学教授
- 大阪府生まれ。博士(文学、奈良女子大学)。専門分野は、日本古代文学、および神話学。三重県の高専、愛知県・大阪府の短期大学などを経て皇學館大学で古事記などの科目を担当。主要著書として『風土記 日本人の感覚を読む』(角川選書 第7回古代歴史文化賞受賞)などがある。