ジャンル 文学の心

早稲田校

『ロビンソン・クルーソー』―名作再読で考えるイギリス文化

  • 冬講座

佐藤 和哉(日本女子大学教授)

曜日 木曜日
時間 10:40~12:10
日程 全4回 ・01月30日 ~ 02月27日
(日程詳細)
01/30, 02/13, 02/20, 02/27
コード 140158
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 11,880
ビジター価格 受講料 ¥ 13,662

目標

・『ロビンソン・クルーソー』という作品について、理解を深める。
・この作品を通して、近現代のイギリスと世界の文化について学ぶ。
・この作品が現代の日本に与えた影響について、より深く理解する。

講義概要

ダニエル・デフォー『ロビンソン・クルーソー』(1719年)は発表当時から、イギリスを始め欧米で広く読まれ、その後の世界が進む道のりや文化の有り方を決めていくうえで大きな役割を果たしました。『ロビンソン』のような、「小説」というジャンルがどういう歴史的、政治的、社会的要因で成立したか、ということを始め、この物語がイギリス帝国の展開にどのように関わったか、さらに、日本の近現代に及ぼした影響(『ロビンソン』は、もっとも初期に日本に紹介されたイギリス文学作品です)、そして、現代の文化にまで見たり聴いたりできる残影や残響、それらの光と影の両方についてお話ししてみたいと思っています。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 01/30 『ロビンソン・クルーソー』と18世紀イギリスの社会と文化 イギリスでは1688年の名誉革命によって、裕福な上層中流階級がそれまで以上に大きな勢力を持つことになり、文化のさまざまな局面も影響を受けました。また、出版業や読書の形態などの変化にも注目すると、なぜこの物語が広く読まれるようになったのか、その一端を垣間見ることができます。
2 02/13 『ロビンソン・クルーソー』と植民地支配 『ロビンソン・クルーソー』は、無人島にたった一人流れ着いた男のサバイバル冒険物語である・・・という認識は間違ってはいませんが、そもそもなぜクルーソーは難破することになったのでしょうか。そこには「奴隷貿易」というヨーロッパ史上、いえ、世界史上最大の汚点とも言える所業が関連しているのです。そして、その行方は・・・。
3 02/20 『ロビンソン・クルーソー』と近現代日本 この物語は、戦後復興の日本において改めて意味を持つようになります。それは、戦後民主主義がモデルにしようとした、イギリスにおける民主主義の発展がその土台を豊かな中間層に置いていた、という学説のためです。このような観点を中心に、『ロビンソン・クルーソー』が日本に与えた影響を政治、社会、そして文化の面から辿ってみましょう。
4 02/27 『ロビンソン・クルーソー』と現代の文化 『ロビンソン』のように「島に流れ着いた人(場合によっては人々)のサバイバル」を描いた物語は、さまざまに形を変えて、読者の想像力を刺激しました。島に流れ着くのが集団だったら、少年たちだったら・・・。あるいは流れ着くのは島ではなく、遠い宇宙の誰も知らない惑星だったら・・・。さらに、「人喰い人種(現代では差別語ですが、当時の用語です)」に取り囲まれたクルーソーの姿は、何かに似ていないでしょうか。こうして『ロビンソン』は変形しながら語り継がれてきましたし、これからも伝えられていくでしょう。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆基本的には日本語の資料を配付いたします。英語の資料は必要最低限度に留めますし、すべて詳しく解説いたしますので、英語についてはまったくご心配には及びません。

講師紹介

佐藤 和哉
日本女子大学教授
福岡市出身。東京大学教養学部卒、同大総合文化研究科博士課程中退(地域文化研究)、オクスフォード大学修士(社会経済史)。東京外国語大学専任講師、日本女子大学専任講師、准教授を経て現職。イギリスの子どもの本について文学と歴史の二つの視点から研究するほか、英語学習と文学の関係について考えている。主要著作に『〈読む〉という冒険』、『物語、英語で読んでみない?』(いずれも岩波書店)、『近代イギリスを読む―文学の語りと歴史の語り』(分担執筆、法政大学出版局)、『教室の英文学』(分担執筆、研究社)、 Robinson Crusoe in Asia (分担執筆、Palgrave Macmillan) がある。
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