ジャンル 日本の歴史と文化

早稲田校

16・17世紀における宣教師の日本での活動と日本観

  • 冬講座

マルティ・オロバル ベルナット(早稲田大学准教授)

曜日 金曜日
時間 10:40~12:10
日程 全8回 ・01月10日 ~ 02月28日
(日程詳細)
01/10, 01/17, 01/24, 01/31, 02/07, 02/14, 02/21, 02/28
コード 140258
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・キリスト教における「宣教」の意味、イエズス会の「布教政策」を理解する。
・イエズス会と托鉢修道会の関係、「布教政策」の相違点を分析する。
・宣教師が書いた書簡・報告書・日本人に関する研究書物の読解を行う。
・思想史・宗教思想史の観点から、西洋人・キリスト教信者のものの見方、そして彼らがどのように異文化・異宗教を理解したのかを分析する。

講義概要

周知のように、ザビエル等のイエズス会士は1549年にポルトガルが開いた航路を通って日本にやってきて、日本でのキリスト教布教を始めた。また、イエズス会より50年後に、フィリピンから来日したスペイン系の托鉢修道会も福音伝道を行った。本講義では、イエズス会及び托鉢修道会の布教活動を紹介しながら、両団体間の関係にも注目する。また、彼等が自ら見て書き残した日本人の風習・社会・宗教について書かれた文献を足がかりとして、思想史・宗教思想史の観点から、西洋人・キリスト教信者のものの見方そのもの、そして彼らがどのように異文化・異宗教を理解したのかを考察していきたい。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 01/10 ザビエルの日本到着・ザビエルの見た日本 ザビエルは1545年にマラッカに到着した際、友人のポルトガル商人、ジョルジェ・アルヴァレスから日本について初めて聞き、「日本の諸事に関する報告書」を作成するよう依頼した。まずこの報告書についてコメント、次にザビエルが来日してから執筆した書簡の中に見られる日本・日本人に関する言及を紹介・分析し、アルヴァレスの資料と比較する。
2 01/17 山口におけるキリスト教対仏教の論争。山口の討論 1551〜1552年に山口で、イエズス会士のザビエル、フェルナンデス及びトーレスと日本の僧侶の間で、キリスト教と仏教の教学を巡る論争が行われた。仏教側の資料は存在しないが、イエズス会士がその議論の内容を書簡に記し、ヨーロッパに報告したものが残っている。これらの報告書を通じて、イエズス会士の日本仏教理解、僧侶のキリスト教批判、日本人のキリスト教教義に関する疑問を垣間見ることができるため、本講義で分析を行う。
3 01/24 ヴァリニャーノの布教戦略 イエズス会士は、日本語に既に存在していた術語(特に仏教用語)を借用するなど、日本の風習にある程度合わせ伝道活動を行っていた。ヴァリニャーノは、最初の滞在の時、それを更に一歩進め、「適応主義」と呼ばれる宣教方針を立てた。しかし、3回に亙り(1579–1582、1590–1592、1598–1603)来日した彼の執筆資料には、それぞれの時期で、日本人観、布教方法に関する意見の変容が見られる。本講義ではそれらに着目して分析を行う。
4 01/31 日本の「同宿」について(カブラルとヴァリニャーノの論争) イエズス会士の間で問題になった、日本人をイエズス会に受け入れるか否かの議論を紹介する。主としてフランシスコ・カブラルとヴァリニャーノの対照的な意見を分析する。最後に日本人を巡る議論から出発し、宣教師と世界人類の文化・社会の順位づけについての考察を展開する。
5 02/07 フロイスから見た日本文化・社会の特徴 ルイス・フロイスが日本文化について執筆した貴重な書物、『ヨーロッパ文化と日本文化』を紹介し、彼が行ったヨーロッパと日本の比較を分析する。
6 02/14 宣教と武力。明国征服論・日本征服論と伴天連追放令 宣教師が武力の使用をどのように捉えていたのかを検討し、来日した宣教師たちが明国及び日本征服についてどのように考えていたのかを紹介する。征服を提案した宣教師と反対した宣教師それぞれの理由を紹介し、分析する。最後に、それらの計画と伴天連追放令(1587年)との関係を考察する。
7 02/21 フィリピンより来日したスペイン系の托鉢修道会と二十六聖人の殉教 フィリピンを拠点にしたフランシスコ会は、1593年に日本に宣教師を派遣した。使節団が来日すると、イエズス会とフランシスコ会の間で摩擦が生じた。それぞれの団体の布教保護権や布教方法の相違を紹介し、これまで注目されていなかった秘跡を巡る論争に焦点を絞る。最後に、両団体の論争と日本二十六聖人の巡教(1597年2月5日)との関係を探る。
8 02/28 迫害期におけるキリシタンの慣習と信仰。コリャードの『懺悔録』について 迫害期のキリシタンの日常生活や風俗習慣を窺い知る上でドミニコ会のディエゴ・コリャードが準備した『懺悔録』は他に類を見ない重要な著作である。そこに本来口外される筈のない日本人キリシタンの懺悔(告解)の内容が記されているからである。その著作を基に日本人の習慣、迫害期のキリシタンの日常生活について考察する。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆本講座は、2022年度冬学期に早稲田校で開講した同講師による講座と一部内容が重複しますが、新たな知見を加えて再編成しています。

講師紹介

マルティ・オロバル ベルナット
早稲田大学准教授
Bernat MARTI OROVAL(ベルナット マルティ・オロバル)。1979年スペイン(バレンシア市)生まれ。2006年から2012年にかけて交換研究員、特別研究生として早稲田大学東洋哲学研究室に在籍し、2013年にスペインのバレンシア大学で博士号を取得。2012年より東京外国語大学、慶應義塾大学、早稲田大学、東京大学等で非常勤講師、2017年4月より2020年3月まで上智大学准教授を務めた後、2020年4月より早稲田大学政治経済学部准教授。専門分野は、明治時代の思想(特に明治仏教)及び16世紀と17世紀日本におけるキリスト教宣教師の伝道活動。
(主要著書)
『日本のキリスト教迫害期における宣教師の「堅信」論争』(春秋社、2023)。
(主要論文)
「イエズス会とフランシスコ会の間に起こった秘跡論争―堅信論争を中心に―」『キリシタン文化研究会会報』 (163号、2024年5月) 1-23頁。
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