ジャンル 世界を知る

早稲田校

亡命インド人とインド独立運動―日本とアジア、ヨーロッパ、そしてアメリカ

  • 秋講座

藤井 毅(東京外国語大学名誉教授)

曜日 金曜日
時間 13:10~14:40
日程 全5回 ・10月04日 ~ 11月08日
(日程詳細)
10/04, 10/11, 10/18, 10/25, 11/08
コード 130325
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 14,850
ビジター価格 受講料 ¥ 17,077

目標

・今まであまり語られてこなかったインド独立運動史への理解を深める。
・わけても、国外への亡命者たちが展開した運動の知見を獲得する。
・そのうえで、世界史や同時代史のなかでインド独立を理解する。

講義概要

高等学校世界史の教科書で語られるインド独立運動史をより幅広い観点から掘り下げてゆきます。つまり、運動の主流は非暴力的なものでしたが、それとは異なる思想と方法論を標榜した人々がいました。そして、その多くは故地を捨てて亡命を余儀なくされました。また、非暴力という掲げられた理念にも拘わらず、1200万人を越えるとされる難民の発生、そこで発生した宗派暴動による殺戮で多くの人々の命が奪われました。それは、イギリス領インドの独立運動が、インドとパーキスターンという二つの国家への分離により達成されたことによっています。亡命者たちは、そこにどのように関与しようとしたのでしょうか。本講座では、それを詳説します。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 10/04 イギリス領インド独立の基本的性格 植民国家であったイギリス領インドは、民族運動の結果として、インドとパーキスターンという二つの国家に分離して独立を達成します。そして、そのそれぞれが、「藩王国」と総称された在来支配者の領土を併合しつつ、憲法制定作業に入ってゆきました。重要なことは、それが第二次世界大戦とほぼ重なっていたことです。民族運動を担った主体は誰で、分離独立の要因は何か、国境線はどのように引かれたのか、そして、それぞれが制定した憲法の基本的性格は何かを説明していきます。つまり、本講義の導入部分にあたります。
2 10/11 亡命者の誕生 インドから亡命者が各地に来着するのは、20世紀初頭に顕著となった現象です。向かった先は、イギリス、ヨーロッパ大陸部、アメリカ太平洋岸、そしてアジアです。アジアでは、シャム(タイ)とわけても日本が目的地となりました。主要な人物を取り上げ、その思想と行動について理解を深めてゆきます。同時代のインドにおける民族運動のあり方、イギリスが構築した治安維持体制についても触れることになります。
3 10/18 日本におけるインド人亡命者 日本には、1910年代より亡命者が来訪し、定着するようになっていきました。そのなかには、国立の専門学校であった東京外国語学校におけるヒンドゥスターニー語の外国人教師であるM.バルカトゥッラーが含まれていました。彼らは、アメリカ太平洋岸に形成されたインド移民の武闘派組織と連携して、多くの亡命者を呼び寄せることになります。そうして来訪した一人が、のちに「中村屋のボース」と通称されるようになる人物でした。彼は、なぜ亡命を余儀なくされたのか、その背景は何であったのか、日本での支援者と亡命者たちが展開した運動について説明していきます。
4 10/25 戦争とインド独立運動 ここでいう戦争とは、第一次と第二次の世界大戦です。わけても後者ではアジア太平洋地域での戦いがインドの独立運動に与えた影響が検討対象となります。そこに、もう一人のボース(スバーシュチャンドラ)が登場してきます。「中村屋のボース」と名前は同じですが、血縁にも姻戚関係にもありません。彼は、民族運動のなかでは急進派に位置づけられていたことから、イギリスのみならずインド国民会議派主流派から疎まれていました。結局、彼は、ナチス・ドイツへの亡命を選択します。そこで、同じ枢軸国である日本との関係ができ、日本占領下の東南アジア地域に招聘されます。そこで彼が担うことになったのが、すでにもう一人のボースが編成に関与していた「インド国民軍」の再編と、亡命インド政府(自由インド仮政府)の樹立です。この時ベンガル地方では、イギリス側の拒絶政策により大飢饉が発生していました。それらは、具体的にどのようなものだったのでしょうか。
5 11/08 イン ド国民軍・自由インド仮政府、そしてインド国民軍裁判とは、何であったのか インド国民軍と自由インド仮政府、そして戦後に行われたインド国民軍裁判については、日本でも幾ばくかは知られていますが、正確なところとその内実は、社会的に共有されているとはいえません。それを各国の公文書・関係者の回顧録などに依拠して解き明かしてゆきます。本講座のまとめにあたります。さて、受講生のみなさんが思い描いていたものとどこまで合致したのでしょうか。それについては、最後の質疑応答でまとめることにしましょう。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆テキストは、指定しません。毎回の講義では、講師が用意した資料を配布します。
◆配布資料には、日本語以外の言語で書かれたものも含まれますが、翻訳して説明しますので日本語能力を有していれば、受講可能です。

講師紹介

藤井 毅
東京外国語大学名誉教授
東京外国語大学(外国語学部・大学院・国際社会学部)教員(1987年〜2021年)。2021年3月末定年退職により名誉教授。東京大学・教養学部非常勤講師(1991年〜2024年)。21世紀COE及び継承組織「史資料ハブ地域文化研究拠点」拠点リーダー(2002年〜15年)。 専門は、ヒンディー語・南アジア地域研究・南アジア近現代史・近現代日本インド関係史。主要著書は、(単著)『歴史のなかのカースト』(岩波書店、2003年)、『インド社会とカースト』(山川出版社、2007年)など。(共編著)『回想の日印関係:三角佐一郎談話録』(東京外国語大学・史資料ハブ地域文化研究拠点、2008年)など。国際学術賞受賞歴として、「国際ヒンディー語栄誉賞」(インド政府外務省、2007年)、「ヒンディー語への奉仕者賞(ジョージ・グリアソン博士記念賞)」(インド大統領府、2015年)。
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