ジャンル 文学の心

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ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』を読む(第7~12挿話)

  • 秋講座

小林 広直(東洋学園大学 准教授)

曜日 土曜日
時間 13:00~14:30
日程 全6回 ・09月28日 ~ 11月09日
(日程詳細)
09/28, 10/05, 10/12, 10/19, 10/26, 11/09
コード 730101
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 17,820
ビジター価格 受講料 ¥ 20,493

目標

・ジェイムズ・ジョイスおよび『ユリシーズ』(1922)の第7~第12挿話の読みどころを概観する
・難解と名高い『ユリシーズ』ではあるが、21世紀を生きる私たちの「生」に連なり、重なり合っていることを確認する
・翻訳を用いても海外文学を「味読」することができることを体験する(もちろん英語原文で読める方も大歓迎です)

講義概要

20世紀で最も優れた小説(の1つ)と称される、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』は、2022年2月2日に出版100周年を迎えました。独力ではなかかな読み通すことの難しい本作品を、ぜひ一度紐解いてみましょう。英語で書かれたこの小説がなぜ「アイルランド文学」を代表する作品と言えるのか、そして、超絶的に(?)難解であると名高いこの作品を今読むことの意義は何か――以上2点の問いを念頭に置きながら、本講座では『ユリシーズ』第7~第12挿話を各回で1挿話ずつ(適宜原文を参照しながら)その読みどころを解説いたします。
※講義では基本的に日本語訳を用いますので、英語が苦手な方でもご参加いただけます。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 09/28 第1〜第6挿話の復習&第7挿話 アイオロス 講座の冒頭で第1挿話〜第6挿話がどのような話だったかを簡単に振り返ります。第7挿話では、ダブリンの中心にある新聞社での出来事が描かれます。『ユリシーズ』の男性主人公二人、前半は慌ただしい社内の様子と広告取りとして働くブルームを、後半はディージー校長の原稿を持ち込むスティーヴン(と彼が語る「プラムの寓話」)が描かれます。全体としてはこれまでの挿話と似た語りですが、そこに侵入する「見出し」の存在とは?さらに、ジャーナリズムとは何か、そしてそれは歴史とどのように関係するのか、を念頭に置いて第7挿話を読み解きます。
2 10/05 第8挿話 ライストリュゴネス族 第8挿話では、ブルームの昼食の様子が描かれます。オコンネル通りからグラフトン通りへと真っすぐ南下し、その後お店を選ぶ際に、来た道を一度戻るブルームの足取りの意味は? デイヴィー・バーンというパブで(現在もダブリンにあります)、赤ワインを飲みながらサンドウィッチを食する彼の脳裏に舞い戻る思い出の意味は?歩いて、食べて、想いに耽る――そのような私たちの日常的行為はどのように「異化」(V・シクロフスキー)されるか、という視点から第8挿話を読み解きます。
3 10/12 第9挿話 スキュレとカリュブディス 第9挿話では、国立図書館でシェイクスピア論を語るスティーヴンが描かれます。ハムレット王子=シェイクスピアという従来の解釈に異を唱えるスティーヴンは、シェイクスピアは妻アン・ハサウェイから性的劣等感を植え付けられ、かつ、弟によって妻を寝取られた夫(!)、すなわち劇作家は王子ではなく、亡霊のハムレット先王である、という実に突拍子もない説を唱えます。スティーヴンが(実際には自分でも信じていない)このような奇説をなぜ打ち出すのか?――「自己言及性」という概念を手掛かりに、第9挿話を読み解きます。
4 10/19 第10挿話 さまよう岩々 第10挿話では、これまでの挿話とは異なり、ダブリンの街が19のセクションに分かれ、「意識の流れ」が他の登場人物にも割り振られます。『ユリシーズ』が1904年6月16日のダブリンという都市を描いた小説であることを改めて想起させる挿話ですが、同時にジョイスは空間だけでなく、時間的な連続性も書き込んでいます。各人が思い思いの時間を過ごす中、それらを抑え込む二大権力の姿が浮かび上がるとき、ダブリンという街が意味するものは?――「二人の主人」とダブリン市民たち、という観点から第10挿話を読み解きます。
5 10/26 第11挿話 セイレン 第11挿話では、リフィー川北岸のオーモンド・ホテルを舞台に、様々な音楽が奏でられます。二人のバーメイドの描写から始まり、壁を挟んでボイランの様子を盗み見るブルームや、サイモンとドラードの歌に耳を傾けるブルームの様子が描かれます。ギリシャ神話において船乗りたちを破滅させたセイレンたちの歌声が、ここでは男性の声に置き換えられ、さらに、我らがオデュッセウス、ブルームにどのような影響を与えるのか?――偶然の音楽としてのノイズ、という考えを踏まえつつ第11挿話を読み解きます。
6 11/09 第12挿話 キュクロプス 第12挿話では、1904年のアイルランドにおけるナショナリズムの問題を扱った挿話です。酒場に集まる男たちは、英国による帝国主義支配に毒づきつつも、「ユダヤ人」であるブルームに対して差別的な眼差しを向けます。「ところでお前さんの国はどこなんだい?」と問う「市民」に対し、「アイルランドです」と答えるブルームが、「愛」について語るとき、ナショナリズムがなぜ往々にして排他的になってしまうのか、という近代国民国家の大問題を『ユリシーズ』は今日なお私たちに問いかけています。国を愛するということはどのようなことなのか、という大きな問いにも応答しながら第12挿話を読み解きます。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講は、11月30日(土)を予定しております。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず
「オンラインでのご受講にあたって」
をご確認ください。
◆お申込みいただいた有料講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け)
【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)
◆配付資料は講義後に配付いたします。
◆翻訳(丸谷才一他訳、集英社文庫、第1巻~第2巻)を各回の講義前に読んでおくことを強くお勧めしますが、未読の方にもわかりやすく説明していきます。

講師紹介

小林 広直
東洋学園大学 准教授
1983年埼玉県生まれ。早稲田大学文学研究科博士課程修了(博士)。早稲田大学文学学術院英文学コース助手、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て現職。専門分野は、ジェイムズ・ジョイスを中心としたアイルランド文学。著書に『ジョイスの罠』(共著、言叢社、2022)、『ジョイスへの扉』(共著、英宝社、2019)、『ジョイスの迷宮』(共著、言叢社、2016)、『ジョイスの罠』(共著、言叢社、2016)などがある。現在、『ダブリナーズ』全15篇を3年かけて読破するオンライン読書会Deep Dubliners(https://www.stephens-workshop.com/deep-dubliners/)を主催している。
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