ジャンル 現代社会と科学
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耕さない農業―土壌生態学からのアプローチ
金子 信博(横浜国立大学名誉教授、福島大学名誉教授)

曜日 | 金曜日 |
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時間 | 10:30~12:00 |
日程 |
全5回
・10月11日 ~
11月22日 (日程詳細) 10/11, 10/18, 10/25, 11/08, 11/22 |
コード | 730764 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 14,850 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 17,077 |
目標
・生態学的な理論にもとづく土壌管理を理解する
・慣行農業、有機農業に共通する問題点を土壌の視点から考える
講義概要
私たちの食を支える農業は、大きな転換点に立っています。「緑の革命」と呼ばれる農業の近代化は、工業的な農業を世界中に拡大しました。単収は飛躍的に伸びたものの、生物多様性の低下や環境汚染、労働者の権利侵害など多くの問題点が指摘されています。最近よく耳にするリジェネラティブ農業は「耕さない農法」を採用することで、環境を再生する新たな農業であると喧伝されていますが、実態は工業的農業技術の延長です。同じ「耕さない農法」でもリジェネラティブ・オーガニック農業では、土壌生態系の機能を活かしつつ、少コストと人や生態系の両立が可能です。大きく変化する農業をとりまく事情を土壌生態系の視点からときほぐします。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 10/11 | なぜ人は耕すのか?耕さない農業への大転換 | 耕すことは農業の基本のように思われていますが、森林や草原ではだれも耕さないのに植物が健康に育っています。国連FAOが提唱する「保全農業」は耕さず、地面を裸にせず、多様な作物を育てることを推奨しています。日本では不耕起栽培はほとんど行われていませんが、世界ではすでに農地の13%以上が不耕起栽培を採用しています。なぜ耕すのかについて、改めて考えます。 |
2 | 10/18 | 農業、環境、健康 | 私たちの体は、食べたものからできています。食べ物がどのような方法、環境で作られているかは私たちの健康に直接かかわります。環境分野では農業セクターは主要な環境負荷を与える存在と捉えられています。食から遡って農業のあり方を考えることは、環境問題の解決に必須です。 |
3 | 10/25 | 地球上で最大の生物多様性を誇る土壌生態系のしくみ | 普段、私たちは土の中の生き物を意識しませんが、地球全体の生物多様性のうち59%は土壌生物です。森林や草原で誰も肥料をやらないのに植物が健全に育つ理由は、土壌の生き物たちの活動にあります。炭素や窒素といった主要な元素の動きを例に土壌生態系のしくみを考えます。 |
4 | 11/08 | なぜ耕さなくても作物が育つか? | 耕さない農業では生産量の低下が懸念されますが、最新の研究ではその低下は世界平均で3%程度であり、乾燥の厳しい地域ではむしろ耕さない方が増収することがわかりました。先入観に囚われず、科学的なデータに基づく農業の改革について考えます。 |
5 | 11/22 | ライ麦畑に集まろう | 不耕起栽培を始める際に一番簡単なのは、それまで耕していた場所に秋にライ麦を蒔き、翌年春から不耕起栽培に転換することです。2024年に各地で実践された不耕起栽培の事例を紹介しつつ、不耕起栽培を始めたいと考える方の向けて、そのノウハウを共有します。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講日は11月22日(金)を予定しています。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず 「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆お申込みいただいた有料講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け)
【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)
備考
※講師の都合により、11月15日(金)は休講となりました。補講は11月22日(金)に行います。
講師紹介
- 金子 信博
- 横浜国立大学名誉教授、福島大学名誉教授
- 農学博士。島根大学生物資源科学部助教授、横浜国立大学大学院環境情報研究院教授を経て、2018年から福島大学勤務。森林,畑地,水田土壌の生物多様性と生態系機能の関係を研究。主要な著書に「土壌生態学入門 (2007)」「土壌生態学(編著)(2018)」、「ミミズの農業改革(2023)」。日本の大学院で初めてのアグロエコロジープログラムを福島大学大学院食農科学研究科に開設。