ジャンル 芸術の世界
早稲田校
音楽と文学の対位法
青柳 いづみこ(ピアニスト、文筆家)

曜日 | 火曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全6回
・10月01日 ~
12月10日 (日程詳細) 10/01, 10/15, 10/29, 11/12, 11/26, 12/10 |
コード | 130456 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・クラシック音楽ファンは、なじみのない文学に対する親近感を持つ。
・文学ファンは、なじみのないクラシック音楽に対する親近感を持つ。
・両方のファンは、音楽と文学の自在な往還を楽しむ。
講義概要
19世紀ロマン派の時代から19世紀末〜20世紀初頭にかけては、音楽と詩・小説などの文学が緊密に結びあっていた。文学に着想を得た音楽作品は枚挙のいとまがなく、音楽家を主人公にした文学、または音楽が主要な役割を担う文学作品も数多い。演奏家としてもリスナーとしても読者としても、それらを読み解き、享受するためには、双方に対する理解が必要である。本講座では、音楽と文学の相互影響を知り、両芸術により親しむことを目的に、毎回必要な音源を流し、それぞれの事例についてわかりやすく解説する。
青柳いづみこ著『音楽と文学の対位法』(中公文庫)の内容に準拠する。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 10/01 | モーツァルト カメレオンの音楽 | モーツァルトの音楽では、しばしば長調と短調が唐突に交替する。宮本輝『錦繍』、シェファー『アマデウス』、カポーティ『カメレオンのための音楽』、筒井康隆『モーツァルト伝』、マッカラーズ『心は孤独な狩人』、ヘッセ『荒野のおおかみ』などモーツァルトを題材に使った文学作品をヒントに、彼の音楽の相対性、悲劇性と喜劇性のクロスオーバーについて考える。 |
2 | 10/15 | シューマンとホフマン | ホフマンを愛読し、『雄猫ムルの人生観』の主要人物である楽長クライスラーをモデルにピアノ組曲『クライスレリアーナ』を作曲したシューマン。ともに法律家をめざし、文学と音楽を志し、音楽評論家としても大きな役割を果たした2人の道行きを比較しながら、シューマンの音楽にみられる二面性を解析し、謎に満ちたピアノ曲理解の一助とする。 |
3 | 10/29 | ショパンとハイネ | ともに1831年にパリに出てきた作曲家のショパンと詩人のハイネ。前者はワルシャワ動乱で岐路を絶たれ、後者は7月革命の余波でパリ移住を決意した。ハイネは、サンドのサロンなどでショパンの即興演奏に接し、特派員をつとめるアウグスブルクの『一般新聞』でレポートしている。ショパンを「ピアノ界のラファエロ」と呼んだハイネの言葉を解析することによって、音楽上のロマン主義全盛の時代に生きながら、マインドは18世紀を向いていたショパンの姿を明らかにする。 |
4 | 11/12 | ワーグナーと象徴派の詩人たち | ワーグナーは1861年の『タンホイザー』パリ初演以来、ボードレールによって熱烈に賛美され、マラルメをはじめとする象徴派の詩人たちによって受け継がれた。一方で、ショーソン、ヴァンサン=ダンディなどの作曲家は、ワーグナーの強大な影響から脱するために多大な努力を強いられた。フランス19世紀末のワーグナー・ブームが音楽家ではなく文学者たちによって推進されことの意味を考えることによって、音楽と文学の差異を浮き彫りにする。 |
5 | 11/26 | ラヴェルとレーモン・ルーセル | 機械仕掛けの玩具を好んだ作曲家ラヴェルと、機械文学と呼ばれるジャンルを立ち上げた作家のレーモン・ルーセルは同じ時期にパリ音楽院に在籍していた。ラヴェルは作曲科、ルーセルはピアノ科。まったく接点のなかった二人だが、創作スタイルは奇妙に類似している。言葉の読み替えによって荒唐無稽な「機械文学」を編み出したルーセルの手法を、「スイスの時計技師」と呼ばれたラヴェルの作曲技法と重ね合わせることによって、その音楽に新たな光を当てる。 |
6 | 12/10 | ドビュッシーとランボー | 1871年秋、パリ音楽院入学をめざしてモンマルトルのニコレ街14番地に通った9歳のドビュッシー。ちょうど同じ時期に、17歳の詩人のアルチュール・ランボーが、ピアノ教師の娘と結婚していた詩人のヴェルレーヌを頼ってパリに出てきた。文学史上よく知られたランボー=ヴェルレーヌ事件が作曲家としてのドビュッシーに与えた影響ははかりしれない。ドビュッシーの歌曲やピアノ曲、オーケストラ曲を、象徴派詩人との相互影響から読み解く。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆『音楽と文学の対位法』は未読でも可。
講師紹介
- 青柳 いづみこ
- ピアニスト、文筆家
- 1976年、マルセイユ音楽院首席卒業。1980年ピアニスト・デビュー。1989年、東京芸術大学大学院博士課程修了。『ドビュッシーと世紀末の美学』で学術博士号。1990年、文化庁芸術祭賞。演奏と文筆を両立させ、2024年までに著作は34作、CDは25点を数える。『翼のはえた指』で吉田秀和賞、『6本指のゴルトベルク』で講談社エッセイ賞、『ロマンティック・ドビッュシー』でミュージックペンクラブ音楽賞。近著に『パリの音楽サロン ペル・エポックから狂乱の時代まで』(岩波新書)、CDに『シューベルト 19歳の自画像』(ALM)。大阪音楽大学名誉教授。日本ショパン協会、日本演奏連盟理事。兵庫県養父市芸術監督。