ジャンル 人間の探求
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自己と他者―その主題からの哲学入門
品川 哲彦(関西大学教授)

曜日 | 水曜日 |
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時間 | 19:00~20:30 |
日程 |
全9回
・10月02日 ~
11月27日 (日程詳細) 10/02, 10/09, 10/16, 10/23, 10/30, 11/06, 11/13, 11/20, 11/27 |
コード | 730561 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 26,730 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 30,739 |
目標
・哲学とはどのような学問であるかを知る。
・「自己と他者」についての哲学的思索を学ぶ。
・古代から現代にかけての真理観の変遷を知る。
講義概要
哲学とはどのような学問か。その思索の根本的な特徴を二点にまとめて説明します。その二つの特徴を実によく表しているのが、デカルトの「われ思う、ゆえにわれあり」。その論証の歩みを丁寧にたどることで、私たちは、徹底的に自己に帰り、デカルトが「近代の哲学の父」と呼ばれた所以を知るでしょう。ところが、徹底的な自己の還帰はどうしても否定できない自己と異なるもの、他者の存在も証明してしまいます。問題は20世紀に受け継がれます。現象学の創始者フッサール、ハイデガー、サルトル、レヴィナス――本講義は「自己と他者」概念の展開をたどります。そしてその裏側に、20世紀における真理という概念の変容もみることでしょう。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 10/02 | 哲学とはどのような学問か | 哲学とはどのような学問か――哲学のもともとの発祥の地ギリシアのことばphilosophiaにさかのぼって、私のみるところ、哲学にとって最も根本的な二つの特徴について説明します。その二つの特徴を、プラトンのイデア、中世の真理の照明説、神の存在証明にふれながら確認します。こういうと難しく聞こえるかもしれませんが、予備知識は必要ありません。最後に、時間のゆとりがあれば、本講座の第一の主要登場人物デカルトに話を進めます。 |
2 | 10/09 | 「われ思う、ゆえにわれあり」――デカルトの思索 | デカルトの「われ思う、ゆえにわれあり」ということばはよく知られています。デカルトは学問の確固たる基盤を求めて、この認識にたどりついたのでした。今回は、その論証を丁寧に検証することにいたします。その結果、この思索もまた、第1回に申した、哲学にとって最も根本的な二つの特徴を備えていることが確認できるはずです。ついで、デカルトが、なぜ、近代の哲学の父と呼ばれるのか、そしてまた、彼の思索と本講座の主題である「自己と他者」の結びつきをみることにしましょう。 |
3 | 10/16 | デカルトからカントへ、そしてまた19世紀から20世紀へ | 第3回は、デカルトからはじまる近代の哲学がどのように進んだか――もちろん時間の制約から本講座の主題に直接に関わるかぎりでのことですが――をみてみます。その脈絡から、人間の認識能力はどのようなものであって、人間はその認識能力によって何を知ることができ、何を知ることができないかを問うたカントをとりあげます。カントの思索も、第1回に述べた哲学の根本的な特徴に深く関係しております。後半では、19世紀後半に登場した思想、実証主義に言及します。「科学には答えがあるけれど、哲学にはないのでは」とお考えになる方は多いですが、もしかすると、第3回の話から、そういう考えの歴史的な背景に納得されるかもしれません。 |
4 | 10/23 | 他の人間という意味での他者――フッサール | 第2回に話したデカルトの試みを20世紀に、もう一度、自分自身で試みた哲学者がいます。現象学と呼ばれる哲学の学派の創始者フッサールです。科学技術の進歩と豊かな生活をもたらした実証主義にたいして、今一度、学問の成り立つ基礎を問うたからです。第4回では、彼の『デカルト的省察』の論証をたどります。この思索は、デカルトの思索を踏襲しながら、しかし出発点の違いから、デカルトとは異なる結論を得ます。その結論は、真理についての考え方の変革をもたらすものでした。 |
5 | 10/30 | 私がほんとうに私であること――ハイデガー | フッサールはデカルト的な方法を継承しました。これにたいして、現象学の思考法を受け継いだハイデガーは別の思索の進め方をしました。ここでは、自己と他者は、学問を支える認識主観ではなくて、それぞれ別の人生を歩む「実存」として捉えられます。第5回では、ハイデガーの『存在と時間』における自己と他者の描き方を参照します。 |
6 | 11/06 | まなざしとしての他者――サルトル | 「実存」という語を聞いて、サルトルの名を思い出される方も多いでしょう。第6回は、サルトルがどのように自己と他者の関係を描いたかをみてみましょう。それは、ひとことでいえば、私が私をどのように考えているか、私が私のまえに広がる世界にあるものをどのように捉えているか、その私の意味づけとは異なる意味づけをする他者――私がその「まなざし」によって射すくめられるような他者でした。 |
7 | 11/13 | 他者による私の審判。それが倫理である――レヴィナス | サルトルでは、私の世界に登場する暴力的なものとして、他者は現われます。しかし逆に、私のほうこそ他者と他者の世界を私の意味づけによってゆがめて理解して生きているのかもしれません。レヴィナスでは、そのような私の傲慢が他者の審問にさらされることが倫理と呼ばれます。第7回は、レヴィナスのこの真摯で誠実な思索をみてみましょう。 |
8 | 11/20 | 法と正義――デリダ | 他者にたいして私はどのような態度をとるべきか、レヴィナスのそれについての考えを受け継いだひとにデリダがいます。第8回は、デリダの考える法と正義の概念を参照します。ところで、本講座の主題は、哲学とはどのような学問かという話からはじまり、学問の基礎づけという問題(デカルト、フッサール)をとりあげ、そして自己と他者の関係をハイデガー、サルトル、レヴィナスにたどるうちに、倫理学へと移ってきました。問題のこの展開を、今一度、第8回で確認しましょう。 |
9 | 11/27 | 「他者」概念の広がり――今、考えるべきこと | 8回の講義を経て、最後に、今、私たちが「自己と他者」という問題に関連して考えなくてはならないことについて考えることにします。今まで「他者」として扱ってこなかった存在を、私たちと同じように大切にしなくてはならない「他者」と考えなくてはならないかもしれない――そういう問題が最後に登場します。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講は、12月4日(水)を予定しています。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず
「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆お申込みいただいた有料講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30 までに公開します。インターネット上で 1 週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。
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講師紹介
- 品川 哲彦
- 関西大学教授
- 京都大学博士(文学)。現象学から研究を始め、大学院在学中に、当時、日本に急速に導入された応用倫理学の研究に関わり、その後、倫理学全般に研究を進めてきました。和歌山県立医科大学講師、広島大学助教授を経て現職。著書に『正義と境を接するもの――責任という原理とケアの倫理』(ナカニシヤ出版、2007年)、『倫理学の話』(同、2015年)、『倫理学入門――アリストテレスから生殖技術、AIまで』(中公新書、2020年)。近年の研究テーマの一つ、「より豊かな正義概念とより効率的なケア概念の構築」は、世界のさまざまな分野の研究を紹介するイギリスの雑誌Science Impactで2020年に紹介されました。