ジャンル 現代社会と科学

オンデマンド

【オンデマンド】人口減少の見方・捉え方―人類史の転換点を考える

  • 夏講座

原 俊彦(札幌市立大学名誉教授、日本医療大学特任教授)

コード 920706
定員 20名
単位数
会員価格 受講料 ¥ 9,900
ビジター価格 受講料 ¥ 9,900

目標

・客観的なデータをもとに人口減少を正しく理解する
・人口減少を理解する上で必要な知識を身につける
・人口減少をグローバルかつ人類史的視点から考える

講義概要

世界人口は80億人を突破、2100年には103.5億人に達するが、日本の人口は1.2億人から0.62-0.72億人へと半減する。この日本の人口減少は、毎年、記録を更新し、政府は「異次元の少子化対策」を打ち出した。だが人口学的には、人口減少は日本だけの問題ではなく、政府の失策や陰謀によるものでもない。晩婚晩産化/非婚無子化の責任を若い世代に求めたり、直系家族制の伝統の衰退やフェミニズムやジェンダーフリー的な社会的傾向などの犯人探しも有効な対策には結びつかない。なぜなら、この人口減少は歴史的な人口転換の必然的な帰結であり、いかに止めるかではなく、経済・社会・文化をどう対応させるかが問われている。

各回の講義予定

講座内容
1 縮減に向かう世界人口 国連の新人口推計(UNWPP22)(2022.7)や国立社会保障・人口問題研究所の日本の将来推計人口(令和5年推計)(2023.4)などのデータを基に、なお人口増加が続く世界人口と減少し続ける日本の人口という二律背反的な人口動向をどう解釈すれば良いのかという問題を考える。今後増加する世界人口を地域別・年齢階層別に分解し、1950年から2100年までの合計特殊出生率や平均寿命、平均出生年齢、純再生産率などの動向を分析し、少子高齢・人口減少へと向かう世界人口の動きを展望する。
2 持続可能な人口の原理 世界人口は消滅に向かうのか。コーエン(Joel E. Cohen)は『新人口論』(1997)の中で、紀元前100万年から現在までの世界人口の変化をグラフ化し、離陸する飛行機が垂直な壁に沿い急上昇しているような、逆L字型のロングテールな曲線を示した。この「絶滅曲線」は、人口が長期的・事後的には、フラクタルな指数関数増加(幾何級数的増加)となることを意味する。またマルサスの「人口の原理」は間違いではないが、人口については、さらにダブリングタイム(倍加期)やハーフライフ(半減期)、成長の限界を含む成長曲線(ロジスティック曲線)などの知識が必要であり、これらを含めた「持続可能な人口の原理」を提案する。
3 多産多死から少産少死へ 国連推計が示す世界人口の展開をどう解釈したらよいのだろうか。人口学者の頭にすぐ浮かぶのは20世紀最後のグランドセオリーといわれた人口転換理論(Demographic Transition Theory)である。この理論は、近代社会の人口は産業化の進行とともに多産多死から少産少死へ、つまり沢山の人が生まれ沢山の人が死んでゆく状態から、少なく生まれて少なく死ぬ状態へとシフトしていくとしている。さらに長寿化が進み出生力が人口の置換水準以下となり、人口減少が始まる点については1986年に提唱されたヴァン・デ・カー(Van de Kaa)とレスタギ(Lesthaeghe)の第二の人口転換理論(The Second Demographic Transition, SDT)を待たねばならない。ここでは、日本の長期データを基に、この人口転換がなぜ起きたのかを人口学的に説明し、それが人類社会全体に共通する普遍的・必然的な現象であることを示す。
4 人口が減ると何が問題なのか? 当面、我々にできることは、人口転換の地域的なタイムラグを活かし、少子高齢・人口減少のスピードを可能な限り遅らせるとともに、少子高齢・人口減少にともない生起する様々な社会・経済・文化・政治的課題に対応し、社会システムの改善を進め、その持続可能性を確保することである。ここでは、人口減少にともない生じる主要な課題として、所得再分配、自然環境との関係の再編、人口再配置、合意形成について論じる。
5 サピエンス減少の未来 国連の人口推計(UNWPP22)によれば、世界人口の構成比は、アフリカの人口が 17.2%(2020) から37.9 %(2100)まで増大する一方、アジアは59.2%から45.2 %に縮減し、アジアの世紀からアフリカの世紀へと変化して行くことがわかる。その一方、日本の人口構成比は現在の1%強から1%未満に低下する。この世界人口の構成比の変化を「世界がもし100人の村だったら」になぞらえて、人口が減少することの相対的意味や、また1人の平均的な村人(ホモ・サピエンス)の遺伝子構成の変化として捉えた場合について考える。また人口転換の主要な動因である社会的生産の未来や、出生・死亡・移動の未来について考察する。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆視聴期間は一般申込開始(2024/06/04)から学期終了翌月末(2024/10/31)までになります。一般申込開始(2024/06/04)以降はお申し込みいただけましたら視聴可能になります。
◆この講座は
2023年度 冬期 「人口減少の見方・捉え方―人類史の転換点を考える」 (02/06〜03/05 火曜日、全5回)
で開講した講座のアーカイブ講座になります。
◆途中映像音声の乱れるところがありますがご了承ください。
◆オンデマンド講座のため講義内容に関する質疑は受付けいたしかねます。あらかじめご了承お願いいたします。

講師紹介

原 俊彦
札幌市立大学名誉教授、日本医療大学特任教授
1953年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒・フライブルグ大学社会学博士(Ph.D)、北海道東海大学・札幌市立大学教授を経て,札幌市立大学名誉教授。2024年より日本医療大学総合福祉学部特任教授。近著にAn Essay on the Principle of Sustainable Population,『世界』2021年8月号特集を機に岩波新書「サピエンス減少―縮減する未来の課題を探る」(2023)。共著『SDGsの人口学』(佐藤龍三郎・松浦司編)原書房(2023)など。

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