ジャンル 世界を知る
中野校
映画からみる世界 父親・母親とは何かを考える
安井 裕司(駒沢女子大学教授)

曜日 | 月曜日 |
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時間 | 13:10~14:40 |
日程 |
全8回
・01月06日 ~
03月10日 (日程詳細) 01/06, 01/20, 01/27, 02/03, 02/10, 02/17, 03/03, 03/10 |
コード | 340313 |
定員 | 33名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
様々な国・地域の親子関係をテーマにした映画作品を取り上げ、分析することで、その普遍性と相違性の両方を把握し、(映画作品に描かれる)「母親とは何か」「父親とは何か」を国を越えて考えることを目標とします。
講義概要
親は子を愛しみ、子が親を想うことは国境を越えて共通する普遍的な現象であると言えます。しかし、そのような親子の関係も、時代、社会背景、環境の違いによって形が違ってくるケースもあります。本講座では父親と子供の関係を、映画作品『7番房の奇跡』『靴ひも』『海洋天堂』『そして父になる』『もうひとりの息子』『チョコレートドーナツ』を分析することで、地域、国、時代、社会条件別に整理していきます。そして、母親と子供の関係を、映画作品『レディ・バード』『ルーム』『チョコレートドーナツ』を取り上げ、比較していきます。最終的に、それぞれに描かれる親の姿を相対化し、親とは何かを考えていきます。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 01/06 | 『7番房の奇跡』(韓国、2013年) | 知的障害がある父親イ・ヨングは、6歳の娘イェスンとソウルで2人暮らしをしていた。小学校に入学するイェスンにセーラームーンの黄色いランドセルを買ってあげようとする父ヨングは、同じランドセルを背負っていた少女の事故死に居合わせたために、警察に殺人犯に仕立てられてしまう。刑務所の雑居房(7番房)に収監されるヨングは、最初、7番房の囚人たちからも袋叩きにあう。しかし、囚人たちは、ヨングの人の良さと、彼が娘のイェスンをどれほど愛しているかを徐々に理解するようになる。彼らは、あらゆる手を使って、イェスンを7番房まで運び込み、2人を再会させること人成功する。囚人たちに囲まれ、ヨング、イェスン親子の奇妙な生活が始まる。 |
2 | 01/20 | 『レディ・バード』(米国、2017年) | 2002年米国・サクラメント。貧しいながらも私学に通う高校生のクリスティンは、自らを「レディ・バード」と名乗り、米国東部の有名私学への進学を夢見ている。一方で、看護師の母親は父親(夫)が失業し、経済状況が厳しく、クリスティンには近場の公立大学に進学して欲しいと言う。母の気持ちも、家の経済状態も理解しながら、クリスティンは「レディ・バード」として我が道を進む。失恋や母親との喧嘩をしながら、密かに東部の大学に出願し、ニューヨーク大学から補欠合格の通知を得る。母親に無視されながらもニューヨークに到着した「レディ・バード」は、父から母が何度も書いては失敗して捨てた(送れなかった)手紙の原稿を受け取る。 |
3 | 01/27 | 『靴ひも』(イスラエル、2018年) | イスラエル・エルサレムで自動車整備工場を営むルーベンは、ある日、30年以上前に別れた妻が交通事故で亡くなったと知らされる。元妻は発達障害を患う彼らの息子ガディの面倒を見ていたが、ガディは直ぐに施設に入居できず、行き先がない。故に約30年ぶりにルーベンは父親としてガディと2人で暮らすことを余儀なくされる。ルーベンは息子にどう接したらよいか戸惑いながらも、少しずつ時間を取り戻していく。そんな中、ルーベンは末期の腎不全と診断され、人工透析が必要となる。苦しむ父を観ていたガディは父のドナー提供者になることを希望するが、ルーベンは、それはできないと息子のオファーを拒む。 |
4 | 02/03 | 『ルーム』(カナダ・アイルランド・英国、2015年) | 5歳の男の子・ジャックは、彼のママと一緒に「部屋」で暮らしていた。彼は、「部屋」から出たことがなく、「部屋」とTVが彼の世界のすべてであった。2人は「オールド・ニック」と呼ばれる男にジャックが生まれる前から(7年間)監禁されており、最低限の食糧や必需品は彼が外から運んできていた。そのような中、ママはジャックを死んだことにし、ジャックだけでも外に運ばせようとする。嫌がるジャックを説き伏せて、計画を実施し、辛うじて脱出に成功し、ジャックは警察によって保護される。ジャックのたどたどしい証言から何とかママも救出されたが、やっとの思いで実家は両親が離婚しており、ママにとっては厳しい現実を突きつけられる。 |
5 | 02/10 | 『海洋天堂』(香港・中国、2010年) | 47歳の水族館職員・ワン・シンチョンは自閉症と知的障害を持つ21歳の息子・ターフーを、妻が亡くなって以来1人で育ててきた。シンチョンは肝臓癌で余命あと数か月であり、自分の死後を思い悩んだ末、ターフーと無理心中を試みたが、泳ぎの特異なターフーに助けられてしまう。シンチョンは、今度はターフーが、自分がいなくなってからも1人で生きていけるようにバスの乗り方、食事の作り方など日常生活の術を教える。そして、シンチョンはターフーが淋しくないよう、お父さんは海亀になるんだよと言い残して、この世を去っていく。 |
6 | 02/17 | 『愛と追憶の日々』(米国、1983年) | 1948年、テキサス州ヒューストン。オーロラは娘エマを出産する。夫は直ぐになくなってしまい、オーロラはエマを女手一人で育て上げるが、エマが21歳の時、エマは若い大学教員フラップと、オーロラの反対を押し切って結婚してしまう。一人になったオーロラだが、隣に元宇宙飛行士ギャレットが引っ越してくる。横柄な態度を取りながらも不思議な魅力のあるギャレットにオーロラは徐々に惹かれていく。一方、エマは3人の母親になったが、夫フラップの浮気に悩まされる。エマとオーロラは別々の道を歩みながらも毎日のように電話し、時に喧嘩しながらも、親友のような親子関係に変化していく。 |
7 | 03/03 | 『チョコレートドーナツ』(米国、2012年) | 1979年カリフォルニア。ショーパブで歌いその日暮らしをする男性歌手ルディは、客として訪れた検事のポールと意気投合し、恋愛関係に発展する。そのような中、ルディは隣の部屋に住むダウン症の少年マルコが、母親の薬物所持逮捕によって施設へと入れられてしまうことを知る。マルコが、何度も施設から脱走しようとすることを知り、ルディはポールを説得し、マルコを引き取りともに暮らそうと提案する。同性愛の恋人同士であることを隠し、マルコの監護者となったルディとポールとマルコは三人で幸せな日々を送る。しかし、ポールの上司の逆鱗に触れたことによって、事態は一転してしまう。 |
8 | 03/10 | 『そして父になる』(日本、2013年)/『もうひとりの息子』(フランス、2012年) | 『そして父になる』大手建設会社に勤務し、都心の高級マンションで妻と息子と暮らす野々宮良多は、人生の勝ち組で誰もがうらやむエリート街道を歩んできた。そんなある日、病院からの電話で、6歳になる息子が出生時に取り違えられた他人の子どもだと言われる。妻のみどりや取り違えの起こった相手方の斎木夫妻は、それぞれ育てた子どもを手放すことに苦しむが、互いの子どもを「交換」することになる。 『もうひとりの息子』イスラエル・テルアビブで暮らすユダヤ人ヨセフは18歳。兵役検査を受けると自分の両親の子供ではないと言われる。18年前、出生時に湾岸戦争が勃発しており、混乱の中、別の赤ん坊と取り違えられていたのである。やがて取り違えられていた相手が、パレスチナ自治区にてパレスチナ人一家に育てられているヤシンであることが判明する。それから、2人の息子たちの人生が激変する。 |
講師紹介
- 安井 裕司
- 駒沢女子大学教授
- 栃木県出身。英国バーミンガム大学大学院博士課程修了(PhD)。ルーマニア・アカデミー歴史学研究所研究生、法政大学国際日本学研究所客員研究員、日本経済大学神戸三宮キャンパス教授を経て現職。NPO法人・大阪ユネスコ協会理事。