ジャンル 現代社会と科学

早稲田校

情報戦争の世界地図をさらに探る

  • 冬講座

春名 幹男(国際ジャーナリスト、元共同通信ワシントン支局長)

曜日 木曜日
時間 13:10~14:40
日程 全5回 ・01月16日 ~ 02月13日
(日程詳細)
01/16, 01/23, 01/30, 02/06, 02/13
コード 140703
定員 88名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 14,850
ビジター価格 受講料 ¥ 17,077

目標

・ソ連はなぜ崩壊したのか。米国はなぜ対テロ戦争で失敗したのか。
・またウクライナ侵攻の真の目的は? 金大中事件の舞台裏で何が?
・日本では知られていない情報戦争の真相を明らかにします。

講義概要

戦後最大の出来事はソ連崩壊です。なぜソ連が崩壊したのか、日本ではほとんど論議されていません。本講座では「ソ連崩壊のきっかけ」と「ソ連崩壊を決定づけた戦略」の2回に分けてお話しします。さらに3回目の講義で「ロシアはなぜウクライナを侵攻したのか」、その理由を明らかにします。4回目は、米国の国力を消耗させた対テロ戦争失敗の理由を探ります。5回目は昨年TBSテレビの連続ドラマで話題になった「別班」を取り上げます。実は「金大中事件」は、韓国が別班の関係者に要請して断られ、韓国中央情報部(KCIA)が自ら実行していたことが分かりました。船で輸送中に米中央情報局(CIA)が介入して、金氏は命を救われました。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 01/16 ソ連崩壊のきっかけ ソ連崩壊のきっかけは1981年の先進国首脳会議(サミット)でレーガン米大統領と初めて会談したフランスのミッテラン大統領が、ロシア人スパイから得た秘密情報を伝えたことです。このスパイ情報から分かったのは、ソ連国家保安委員会(KGB)が西側先進諸国からハイテク技術を入手する大がかりな秘密工作を展開していたことです。米中央情報局(CIA)はそのソ連の調達ルートにひそかに不良品を潜り込ませることに成功し、不良品の半導体を使ったソ連の天然ガスパイプラインが爆発する事故まで起きました。
2 01/23 ソ連崩壊を決定付けた戦略 ソ連の崩壊を決定づけたのは、ソ連の外貨収入が大幅に減少し、十分な食料を輸入することができなくなったからです。1991年8月、ソ連崩壊を防ごうとKGB議長らがクーデター未遂事件を起こしますが、彼らは国家財政が破綻していたので、政権を担うことができず、クーデターは失敗した、と後のロシア首相代行で経済学者のガイダル氏は証言しています。レーガン米政権はサウジアラビアと組んで、1985年9月に石油の大幅増産を決定しました。それに伴って石油価格の大幅下落が続き、ソ連の外貨収入が激減しました。貧困と飢餓でソ連は崩壊したのです。
3 01/30 ロシアはなぜウクライナを侵攻したのか ロシア情勢に詳しい専門家の間でもプーチンが開戦を決断した動機は「分からない」という人が多い。恐らくロシア専門家は、米国の情報をしっかりと収集していないため、重要な事実を把握できていないのだと思われます。実は2014年のいわゆる「マイダン革命」で、ウクライナは反露・親欧米路線を選択しました。それを受けて、米国は軍部がウクライナ軍を支援し、CIAがウクライナ情報機関を取り込んで、ウクライナ国内に潜むロシア分子の摘発を進めました。ウクライナは西側と接する戦略的要衝です。プーチンはウクライナを取り戻すため、軍事介入に踏み切ったのは明らかです。舞台裏のそんな動きを追及します。
4 02/06 米国が対テロ戦争で大失敗した理由 2001年9月11日の米中枢同時多発テロを受けて、ブッシュ米政権(子)はアフガニスタン攻撃とイラク戦争の2つの戦争を戦います。アフガニスタンのタリバン政権はテロの主犯、ビンラディンを匿っていました。しかし、イラクはテロとはまったく無関係でした。にもかかわらず、戦争をリードしたチェイニー副大統領とラムズフェルド国防長官らのタカ派と「ネオコン」のグループは、誤った情報を真実だとデッチ上げてイラクを攻撃したのです。目標の大量破壊兵器は発見できず、イラクを破綻国家にし、6000人を超える米兵が死にました。まったく大義のない戦争で米国は8兆ドル(1200兆円)を超す戦費を無駄にしたのです。
5 02/13 金大中事件と「別班」 後に韓国大統領になる金大中は1973年、東京のホテル・グランドパレスから韓国中央情報部(KCIA)の工作員に拉致され、5日後にソウルの自宅に連れ戻されました。実は当初、KCIAは日本の元自衛隊員に依頼して、拉致する計画でした。しかし、この元自衛隊員は2000万円と額面に明記された小切手に驚き、受け取りを拒否したため、KCIAは自らの手で拉致を実行したのです。金大中を乗せた船が日本海を航行中、事件に気付いたCIAがヘリコプターを飛ばし、船に向けて「殺すな」と伝え、金大中は命を救われました。近年、この元自衛隊員は現役時代に「別班」に所属していたことが分かりました。TBSドラマで注目された別班とはどんな組織か、考えてみたいと思います。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆今年度秋学期の講座名と酷似していますが、全く新しい内容となります。
◆毎回、手作りのレジュメをお渡しします。
◆休講が発生した場合の補講は、2月20日(木)を予定しています。

講師紹介

春名 幹男
国際ジャーナリスト、元共同通信ワシントン支局長
国連、国務省、ホワイトハウス、米中央情報局(CIA)などを現地で取材。在米報道はニューヨークとワシントンで計12年。国連特派員協会第2副会長やナショナルプレスクラブ国際委員長を務めた。共同通信特別編集委員を最後に退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学大学院客員教授を歴任。外務省の「密約」調査で有識者委員を務めた。著書に『ヒバクシャ・イン・USA』『スクリュー音が消えた―東芝事件と米情報工作の真相』『秘密のファイル―CIAの対日工作』『仮面の日米同盟』『ロッキード疑獄―角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』など。ボーン上田記念国際記者賞、日本記者クラブ賞、早稲田ジャーナリズム大賞を受賞。

  • 外国語 コースレベル選択の目安
  • 広報誌「早稲田の杜」
  • オープンカレッジ友の店