ジャンル 人間の探求
早稲田校
仏教聖典の核心を読み解く 原始仏教から密教まで
正木 晃(宗教学者)

曜日 | 水曜日 |
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時間 | 13:10~14:40 |
日程 |
全8回
・01月08日 ~
03月05日 (日程詳細) 01/08, 01/15, 01/22, 01/29, 02/12, 02/19, 02/26, 03/05 |
コード | 140508 |
定員 | 41名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
・これだけ読んでおけば「仏教とは何か」をおおむね理解できるはずです。
・「仏教」が多種多様な事実、つまり「仏教はいろいろある」という事実を学びます。
・「仏教」にまつわる固定観念を打ち破ります。
講義概要
ゴータマ・ブッダを開祖とする「仏教」とは何か。この問いに答えることはとても難しいのです。なぜならば「仏教」は多種多様なので、「これが仏教だ!」と断言できないからです。仏教の究極の目的は生老病死という苦を克服するために「悟り」を得ることです。しかしブッダが弟子たちに語ったのは「どうすればさとりを得られるか」であり、自身が体験した「悟り」についてほとんど何も語っていません。しかも仏教は時代と地域によって大きく変容し続けてきました。本講座では原始仏教から最後発の密教まで、代表的かつ最重要の聖典を読み解きながら「仏教とは何か」を考察します。この考察は仏教にまつわる固定観念を打破する試みでもあります。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 01/08 | スッタニパータ・サンユッタニカーヤ | 成立が最も早く、ゴータマ・ブッダの肉声が残っているともいわれる原始仏教の聖典です。スッタニパータに語られているのは仏教者としての生き方の基本であり、概説書などで必ず記されている「四聖諦」も「十二因縁」もまだ語られていません。サンユッタニカーヤには、悟りを得る前はもちろん、悟りを得てからも涅槃(死)に至るまで、ブッダが悪魔と向き合い続けたことが語られています。 |
2 | 01/15 | 怖駭経・聖求経・大般涅槃経 | 怖駭経(ふがいきょう)には例外的にゴータマ・ブッダが得た悟りの内実が語られています。聖求経(しょうぐきょう)には仏教の究極の目的が輪廻からの解放、つまり二度と生まれ変わらないことであり、ブッダはそれに成功したと説かれています。大般涅槃経はブッダの涅槃を語り、葬儀の方法などが詳しく語られています。とても興味深いのは、ブッダほど偉大な人物でも弟子たちを完全には導けなかった事実も語られていることです。 |
3 | 01/22 | 無量寿経・観無量寿経 | 古代末期以来、日本仏教の中心的な課題の一つは、阿弥陀仏に帰依して、死後は極楽浄土へ往生することでした。ところが仏教の生まれ故郷のインドでは阿弥陀信仰はすこぶる弱く、むしろ東アジアの仏教圏、とりわけ日本で盛んになったのです。インドで希薄だった阿弥陀信仰卯が、日本で興隆したのはなぜか。この問は、日本人が仏教に何を求めたのかという重要な問いにつながります。 |
4 | 01/29 | 法華経 | 法華経もインドではさして重視されなかったのに、中国で俄然注目され、日本では阿弥陀信仰と並んで大きな勢力となりました。そして仏教者として現実の変革をめざす人々にとって唯一無二の聖典として、特別な価値を見出されました。それは現代の日本において、新宗教系を含めれば、法華経を聖典とする日蓮宗系(法華宗系)の教団が、圧倒的に多くの信者数を誇る事実から証明されます。 |
5 | 02/12 | 中論・ラトナヴァリー | ナーガールジュナ(龍樹 2〜3世紀)は大乗仏教の基本理念を構築した偉人であり、日本仏教でも「八宗(南都六宗+天台宗+真言宗)の祖」と称えられてきました。主著の中論は、仏教の核心は「空」である、つまり世界は実在しない、私自身もまた実在しないと主張し、インド大乗仏教の歴史を規定したほどの影響力がありました。同じく著作のラトナヴァリーでは、「空」を説きながら、一転して現実世界を現実世界として認め、弱者救済をはじめ、すこぶる現実的な施策を提言しています。 |
6 | 02/19 | 般若心経 | インド大乗仏教の主流は「空」を説く般若経でした。ひとくちに般若経といっても、種類も規模もまさに多種多様です。般若心経は最小版であり、インド大乗仏教やその忠実な後継者にあたるチベット仏教ではさして評価されませんでしたが、日本では奈良時代からとても人気がありました。現代でもいろいろな解釈書が出版されていますが、残念ながらその大多数はほとんどでたらめです。般若心経には密教的な呪文の性格もあり、簡単そうで実は簡単ではない経典なのです。 |
7 | 02/26 | 華厳経 | 華厳経は数ある大乗経典の中でも際立って規模が大きく、その内容もすこぶる壮大かつ緻密です。また最も重要とされる「入法界品」では、善財と呼ばれる少年が悟りを求めて53人の聖人たちを訪れる物語が記され、文学的にも高い評価があります。ただし宗教的にはヒンドゥー教によく似た思想が語られ、本尊とされる毘盧遮那仏は全宇宙をつかさどる、いわば宇宙神的な性格が指摘されることもあって、理解するのはそう簡単ではありません。 |
8 | 03/05 | 大日経・金剛頂経 | 大日経と金剛頂経は空海が開拓した真言密教にとって、二大聖典です。複雑かつ高度な密教の教えを視覚を通じて伝える胎蔵曼荼羅と金剛界曼荼羅の典拠でもあります。密教経典は難解なことで有名ですが、原始仏教以来の教えを、表現は変えながらも、忠実に継承している面もあります。そして空海の思想と行動を理解するためには絶対に読んでおきたい聖典です。 |
講師紹介
- 正木 晃
- 宗教学者
- 1953年、神奈川県小田原市生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本仏教・チベット仏教)。文献研究に留まらず、現地調査を実施しチベット・ヒマラヤ地域の調査は20回に及ぶ。高度でありながら誰でも理解できる仏教学を志向。著作は『「ほとけ」論』『現代日本語訳 法華経』など多数。