ジャンル 文学の心

早稲田校

松本清張を読む

  • 冬講座

高橋 敏夫(早稲田大学名誉教授、文芸評論家)

曜日 火曜日
時間 13:10~14:40
日程 全4回 ・02月04日 ~ 03月04日
(日程詳細)
02/04, 02/18, 02/25, 03/04
コード 140152
定員 36名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 11,880
ビジター価格 受講料 ¥ 13,662

目標

・松本清張が創出した社会派ミステリーの意義をたしかめる。
・各作品がどのように人と社会と時代にむきあったかを確認する。
・松本清張のように「何故だろう」という問いを日々の生活に向ける。

講義概要

松本清張が混乱の時代に大々的に復活しています。松本清張は、人と社会の暗い秘密をさぐりあて、それを暴露し、告発しつづけました。今回精読するのは次の4作品です。ムラで孤立した或る女性へのシンパシーが捜査を歪めてしまう『凶器』。男の死体の首にはビニール紐がなぜかきれいに巻かれていた『紐』。論敵を求め研究にうちこむ考古学者をえがく『断碑』。明石原人を発見した直良信夫をモデルにアカデミズムと在野の争闘をとらえた『石の骨』。テキスト指定はしませんが、文庫本が手に入れば作品を読んでおいてください。『凶器』『紐』は新潮文庫版『黒い画集』に、『断碑』『石の骨』は同『或る「小倉日記」伝』に収録されています。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 02/04 孤立する女性へのシンパシー――『凶器』を精読する 凶器はじつに意外なものだった。撲殺された雑貨商は、都会からムラに来たある女にしつこく言い寄っていた。ムラで孤立する女への刑事たちのシンパシーが、しかし、捜査を歪め、凶器の正体を隠してしまう。
2 02/18 家族の殺人にはやさしい心づかいがみえる――『紐』を精読する 多摩川の河原で死体で発見された中年男の首には、ビニール紐がきれいに巻かれていた。解剖の担当医は、家族の殺人は惨たらしいようでも、どこかにやさしい心づかいがみえると言う。いったい現場ではなにがおきたのか。
3 02/25 不遇の考古学者の悲哀と執念――『断碑』を精読する 在野の考古学者森本六爾をモデルにした作品。学歴に劣等意識をいだきつつもいかなる権威にも負けず活動、活躍した主人公には、芥川賞を受賞しデビューしたばかりの松本清張のつよい意思があらわれている。
4 03/04 既成の権威による新鋭の抑圧に断固抗して――『石の骨』を精読する 「明石原人」を発見し、日本にも旧石器時代があったことを告げた直良信夫をモデルにした作品。既成の権威による新鋭の抑圧に抗する姿には、ここにもまた松本清張の作家としての新たな挑戦が示されている。

講師紹介

高橋 敏夫
早稲田大学名誉教授、文芸評論家
1952年香川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。早稲田大学文学部・大学院文学研究科教授を経て、現在、早稲田大学名誉教授。日本近現代文学研究。『松本清張 「隠蔽と暴露」の作家』(集英社新書)、『藤沢周平 負を生きる物語』(同)、『井上ひさし 希望としての笑い』(角川新書)、佐高信との長篇対談など多くの著作がある。
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