ジャンル 人間の探求

オンライン

現代政治哲学の論点

  • 夏講座

仲正 昌樹(金沢大学教授)

曜日 金曜日
時間 15:30~17:00
日程 全4回 ・07月05日 ~ 07月26日
(日程詳細)
07/05, 07/12, 07/19, 07/26
コード 720506
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 11,880
ビジター価格 受講料 ¥ 13,662

目標

・社会問題を哲学的に捉える方法を身に付ける。
・現代の政治哲学で何が重要な論点として浮上しているか把握する。
・哲学が政治や経済の問題にどのように関わるか理解を深める。

講義概要

グローバル化や科学技術の発展に伴って、政治哲学が直面する現代的課題のいくつかを取り上げ、それらにどのような意味があるか哲学的に考える。初回は、経済格差や差別等の問題に戦後のリベラルな正義論がどう取り組んだのか概観する。第二回は、共同体を重視するコミュニタリアニズムやソーシャル・キャピタル論が、どのようにリベラルな正義論を批判し、代案を提示しているか検討する。第三回は、民主主義とコミュニケーション形態や公共性の関係について考察する。第四回は、インターネットの浸透など、社会や技術の構造的変化が、人間のコミュニケーション能力にどう影響し、延いては、「人間」という概念自体をどう変化させているか考える。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/05 リベラルな正義論の課題 二〇世紀のアメリカで、アメリカ固有の意味の〈liberalism〉が生まれ、発展した経緯と、それがロールズやドゥウォーキンなどの平等主義的な正義論とどのように繋がっているか概観する。そのうえで、ロールズやドゥウォーキンが「自由」「平等」「公正」「功績」などについてどのような主張をしたか、どこに特徴があるか見ていく。また、彼らとライバル関係にあるリバタリアン(自由至上主義)の議論も参照し、対立軸を明らかにする。近年の、妊娠中絶やアファーマティヴ・アクションなどに関する判例変更についても考える。
2 07/12 コミュニタリアンの正義論の課題 一九八〇年代以降、リベラルな正義論の基礎を問い直し、共同体に根ざした思考の必要性を主張したマッキンタイヤ、テイラー、ウォルツァー、サンデルなどのコミュニタリアン的な議論を、当時のアメリカの政治文化の変化を背景にしながら紹介する。コミュニタリアンの議論と関係の深いソーシャル・キャピタル論やアマルティア・センの潜在能力論との関連についても検討する。近年話題になった、サンデルの『実力も運のうち』の反メリトクラシー的な問題提起についても考える。
3 07/19 公共性とコミュニケーションをめぐる課題 近代市民社会における「公共圏」の形成と、メディアや社会・文化の関係を論じたハーバマスの議論を起点に、コミュニケーション能力と民主主義の在り方について考察していく。その流れで、民主主義における「熟議」とは何か明らかにする。また、インターネットの発展に伴う、市民間の対話の可能性や民主主義の在り方の変化をめぐる憲法学者サンスティンの問題提起や、ヤン=ヴェルナー・ミュラーのポピュリズム論にも触れ、ネットが当たり前になった社会において、政治はどうなっていくか、民主主義は存続できるか考える。
4 07/26 「人間」の再定義をめぐる課題 「人間の条件」をめぐるハンナ・アーレントの議論を起点として、西欧思想史の原点において「人間」とはそもそもどういう存在と捉えられていたか概観し、それが近代初期における非西欧世界との遭遇や、メディアやコミュニケーション形態の発展、生命科学の発展によってどう変化しつつあるか、技術の哲学(ギュンター・アンダース、ハンス・ヨナス)やメディア論(スローターダイク、東浩紀)の問題提起に即して検討する。また、人新世をめぐる問題状況において、政治がどうなっていくか、ダーク・エコロジーの視点も混じえて考える。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講日は8/2(金)、8/23(金)を予定しています。
◆Zoomミーティングを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆本講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。 
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け) 
【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)

講師紹介

仲正 昌樹
金沢大学教授
東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻修了(学術博士)。駒沢大学非常勤講師、金沢大学法学部助教授を経て現職。専門は政治思想史、法哲学、ドイツ文学。主な著書に、『集中講義!日本の現代思想』『悪と全体主義』『現代哲学の最前線』『現代哲学の論点』(以上、NHK出版)、『今こそアーレントを読み直す』『マックス・ウェーバーを読む』『ハイデガー哲学入門』(以上、講談社)、『ハンナ・アーレント「人間の条件」入門講義』『ドゥルーズ+ガタリ「アンチ・オイディプス」入門講義』『マルクス入門講義』『フーコー「性の歴史」入門講義』『ニーチェ入門講義』(以上、作品社)、『今こそハイエクに学べ』(春秋社)。
  • 外国語 コースレベル選択の目安
  • 広報誌「早稲田の杜」
  • オープンカレッジ友の店