ジャンル 人間の探求
中野校
ハイデガーの哲学―『存在と時間』を読む
轟 孝夫(防衛大学校教授)

曜日 | 金曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全5回
・07月05日 ~
08月02日 (日程詳細) 07/05, 07/12, 07/19, 07/26, 08/02 |
コード | 320502 |
定員 | 24名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 14,850 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 17,077 |
目標
・ハイデガーの主著『存在と時間』の基本的内容を捉える。
・ハイデガーの「存在への問い」の意味を理解する。
・『存在と時間』を自分自身で読めるようになる。
講義概要
本講義はハイデガーの主著『存在と時間』の基本的内容を概観し、彼が同書で掲げた「存在への問い」の意義を明らかにすることを目標とします。彼は「存在への問い」において、われわれが生きている近代社会の問題を「存在忘却」のうちに見て取り、われわれの生をあらためて「存在」によって基礎づけることを目指していました。しかし『存在と時間』は未完に終わり、「存在」が結局、何を意味するかについて同書では示されないままとなりました。本講義では『存在と時間』がこのように挫折した理由を明らかにしたうえで、そこで残された課題に彼がその後、どのように取り組んでいったのかについても触れたいと思います。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 07/05 | 「存在」とは何を意味するのか | ハイデガーが自身の哲学において解明しようとしている「存在」とは、何を意味するのか、そしてこの「存在」が、西洋の伝統的哲学でそれまで問われてきた「存在」とどのように異なるのかについて説明します。『存在と時間』から後期の思索にまで通底する彼の思索の大枠についての見通しを得ることが、初回の講義の目標です。 |
2 | 07/12 | 『存在と時間』への道 | 『存在と時間』という著作がどのように成立したかのプロセスを概観します。彼がキリスト教神学から出発して、どのように「存在への問い」を着想するに至ったのかという同書執筆の思想的背景をまず確認します。自分の思索を「著作」という形で表現することに何度も失敗した挙句、かろうじてつぎはぎのような形で刊行されたのが『存在と時間』でした。講義では、このように難航した『存在と時間』の具体的な執筆過程についても見ていきたいと思います。 |
3 | 07/19 | 現存在の実存論的分析 | 『存在と時間』では「存在」が直接、論じられると思いきや、そうではなく、既刊部分では「現存在」の存在の分析だけが行われています。「現存在」とはハイデガーが人間の存在を示すために導入した用語ですが、彼はなぜ「現存在」という用語を必要としたのでしょうか。そして『存在と時間』では、なぜ「現存在」の分析から出発しているのでしょうか。その理由を示したうえで、『存在と時間』における「現存在」の分析の具体的な内容を概観していきたいと思います。 |
4 | 07/26 | 現存在の本来性と非本来性 | ハイデガーが『存在と時間』で「本来性」と「非本来性」について語っていることについてはご存じの方も多いかと思います。「本来性」はしばしば「死と向き合い、生の一瞬一瞬を大切にするあり方だ」と説明され、「非本来性」は「世間に同調して自分を失ったあり方だ」と説明されます。こうした説明は間違いではないにせよ、この程度のことは別に『存在と時間』を読まなくても言えることだという気もします。こうしたありきたりの解釈は「本来性」と「非本来性」を個人のあり方としてしか捉えていませんが、そこでは実は他者との共同性のあり方が問題になっていること、この点を講義では明らかにしていきたいと思います。 |
5 | 08/02 | 『存在と時間』はなぜ未完に終わったのか | 『存在と時間』は未完の著作です。「存在への問い」を標榜しながら、実はそれに対する答えは『存在と時間』の既刊部分では示されていません。そのような不完全な書物をわれわれが彼の「主著」としてありがたがるのは、よく考えると不思議な気もします。しかしそのことには理由があります。その理由は、ハイデガーが『存在と時間』を失敗作だと見なす理由とも関係します。講義ではハイデガーが『存在と時間』のどのような点を問題と見なし、その完結を断念したのかを明らかにします。そのうえで、彼がそうした問題点をその後の思索においてどのように克服しようとしたのかについても見ていきたいと思います。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講日は、8月23日(金)を予定しています。
テキスト
テキスト
轟孝夫『ハイデガー『存在と時間』入門』(講談社)(ISBN:978-4062884372)
講師紹介
- 轟 孝夫
- 防衛大学校教授
- 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専門はハイデガー哲学、現象学、近代日本哲学。著書に『存在と共同――ハイデガー哲学の構造と展開』(法政大学出版局)、『ハイデガーの超-政治――ナチズムとの対決/存在・技術・国家への問い』(明石書店)、『ハイデガー『存在と時間』入門』『ハイデガーの哲学――『存在と時間』から後期の思索まで』(講談社現代新書)などがある。