ジャンル 日本の歴史と文化

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戦国大名たちの世界戦略

  • 夏講座

鹿毛 敏夫(名古屋学院大学学部長・教授)

曜日 木曜日
時間 15:30~17:00
日程 全5回 ・07月04日 ~ 08月01日
(日程詳細)
07/04, 07/11, 07/18, 07/25, 08/01
コード 720230
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 14,850
ビジター価格 受講料 ¥ 17,077

目標

・日本の戦国大名を、日本史ではなく世界史の観点から理解する。
・大内義隆、大友義鎮、島津義久、豊臣秀吉、徳川家康らの世界戦略を史料等から読み取る。
・日本の外交史が、伝統的「中華」世界秩序を脱却し、西洋的互恵関係に転換していく画期を理解する。

講義概要

スペインとポルトガルによる大航海時代に、日本の戦国大名たちも、東アジアの宗主国中国が古代以来描いてきた「中華」世界の殻を打ち破り、「南蛮」(東南アジア)を抜けて「西」へとその歩を踏み出していた。16世紀日本の戦国大名は、明代中国からは密貿易を営む倭寇集団に責任を負う存在と見なされ、カンボジア等の東南アジア諸国からは外交的支持と軍事的援助を相互に得る善隣外交パートナーとして認識された。ヨーロッパのイエズス会においては、東アジアにおけるキリスト教の布教を庇護しうる「国王」と位置づけられた。本講義では、講談社現代新書『世界史の中の戦国大名』の内容にそくして、戦国大名たちの世界戦略を考えていく。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 07/04 「倭寇」となった大名たち―戦国大名と中国 「世界」へと進出しようとした戦国大名たちの活動の「前史」として、まず中国明(みん)王朝を中心とする東アジア世界のなかでの室町将軍(足利義満ら)と守護大名・戦国大名たち(大内義隆・義長、大友義鎮ら)の諸活動を分析・紹介する。15世紀初頭に室町幕府(足利義満)が樹立した対明関係を基軸とする東アジア世界での日本の外交関係は、その外交主体が同世紀後半以降に幕府から地域大名にすり替わるものの、「中華」世界における「日本国王」受認者が外交権を保持する(その主権をめぐって大内氏等諸大名が競合・対立する)という性質面においては、15世紀初頭から16世紀前半(1550年代)まで変化はなかった。
2 07/11 外交交易対象の転換―対中国から対東南アジアへ 東アジア海域世界における日本外交に明確な性質転換が認められるのは、1560〜70年代からである。この時期になって初めて日本外交は、中国皇帝から「日本国王」に冊封されることを最早必要としない脱「中華」志向の外交へと切り替わっていった。この時期になると、豊後の大友氏はポルトガルのインド総督への使者をゴアへ派遣し、肥前の松浦氏はアユタヤ国王へ書簡と武具を贈答した。カンボジア国王との間では、1570年代には大友氏がその外交関係の締結に成功していたが、九州を二分する軍事衝突(豊薩合戦)以降は、軍事的優位に立った薩摩の島津氏がその通交を遮断し、自らがカンボジアとの善隣外交関係を構築した。
3 07/18 対ヨーロッパ外交の開始とその影響 16世紀半ば以降になると、その領域の大小いかんにかかわらず、自らの領国を「国」と認識するような戦国大名の「国家」意識の成熟により、従来型の「日本国王」外交権に依拠しない、新たな「地域国家」外交権が主張されるようになった。特に西欧を相手とした外交では、かつて足利義満が苦労した対中華の朝貢外交ほどの複雑な障壁はなかった。16世紀半ばから近世初頭の徳川家康の時代までのおよそ半世紀の間、イエズス会は、日本の実質的権力者は大名であるととらえ、その領国をある程度独立した「国」と認識し、大名そのものを「国王」として評価していた。同時期のイエズス会系諸史料を読むと、各戦国大名を、「尾張の国王」(織田信長)、「山口の国王」(大内義隆)、「河内の国王」(三好義継)等と表記している。
4 07/25 東南アジア貿易豪商の誕生 戦国大名の対外交易の実務を実際に担っていたのはどのような人々だったのだろうか。ここでは、近年新たに確認された文献史料や考古史料も活用しながら、九州の豊後を本拠として活動した豪商仲屋顕通と宗越という、2代およそ50年間におよぶ商人の貧商から大豪商への成長の軌跡を見ていく。顕通は、物資の輸送から得た高率の物流収益を基盤としながら、寺社領年貢の複数年請け負い契約に伴う米の運用投資益や、地域升の換算差や米・銭の交換相場の変動を利用したレート操作益等、重層的な収益システムによって富を蓄え、大名権力公定分銅の製作・発行権を獲得して、海外貿易を含めた銀取引を統括する立場に成長した。宗越も、豊臣秀吉と結びついて商圏のさらなる拡大に成功し、カンボジア交易を手がける明の貿易商人と結んで東南アジアの物資を取引した。
5 08/01 戦国大名の「世界」と徳川政権の「世界」 秀吉の外交は、1590年までに完遂した国内統一政策の延長線上に組み立てられたものであった。日本国土を政治的に統一支配する中央政権「国家」として、真の意味での全国統一を完成するには、主として西日本の戦国大名が個々に保持する「地域国家」としての外交権を剥奪し、それを自らが一元的に集約する必要があった。東アジア周辺国に自らへの朝貢を求め、拒絶されると朝鮮半島への軍事侵攻という手段に出た16世紀末の豊臣政権の外交思想は、中華とその周辺国によって構成される東アジアの伝統的国際秩序の呪縛から抜け出せなかったものと評価できる。それに対して、徳川家康の外交戦略は、豊臣期の外交断絶状態からの修復を図るという喫緊の政治課題を念頭に、かつての戦国大名たちが先駆的に行使した脱中華の外交権を、統一政権として要領よく整理・一元化した性質のものだった。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆6/8(土) 13:30より本講座の無料体験講座を実施します。
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備考

無料体験会での本講座の様子を公開しました。5分程度の動画です。
再生すると音が出ます。視聴の際はご注意ください。

講師紹介

鹿毛 敏夫
名古屋学院大学学部長・教授
九州大学大学院修了。博士(文学)。専門は日本中世史、特に対外交渉史。主な著書に、『世界史の中の戦国大名』(講談社現代新書、2023年)、『大友義鎮―国君、以道愛人、施仁発政―』(ミネルヴァ書房、2021年)、『戦国大名の海外交易』(勉誠出版、2019年)がある。
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