ジャンル 現代社会と科学
中野校
習近平政権が抱える世界との摩擦 中国を正しく「知る」という大難
富坂 聰(拓殖大学教授)

曜日 | 木曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全6回
・10月24日 ~
12月05日 (日程詳細) 10/24, 10/31, 11/07, 11/14, 11/21, 12/05 |
コード | 330707 |
定員 | 36名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 17,820 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 20,493 |
目標
・現在まで自分が持っていた中国理解が正しいか否かを判断する
・新しい目でこの10年の中国の変化と発展と課題を理解する
・米国との激しい対立の根源を理解し中国の目指す世界戦略を理解する
・日本にとって最大の外交的課題である中国との付き合い方に示唆を与える
講義概要
アメリカ大統領選挙に向けて、さらに対立を深めることが予測される2つの大国。そのアメリカが同盟国や友好国を取り込んで中国包囲網を完成させようと働きかけている。このときアメリカが「中国排除」の大儀として掲げているのが「価値観の相違」である。そして中国を異質な国として表現するときに多用されるのが「経済的威圧」、「過剰生産」、「人権弾圧」、「現状変更」といったワードだ。いまや中国を特徴づける定番ともいえる言葉だが、その一つ一つをきちんと検証した報道に接することはほとんどない。いま世界で何が起きているのか。それを知るために、普段何気なく使っているこうした言葉をきちんと検証する。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 10/24 | 過剰生産 貿易戦争の現在地 | 今後の世界で大きな飛躍が望める産業の一つに電気自動車(EV)がある。このEVにおいて目立つのが中国の躍進だ。従来、自動車産業はアメリカのビック・スリーや日本のメーカー、ドイツのメーカーが世界をリードしてきた。いまその牙城は中国メーカー群によって切り崩されつつある。そこで生まれたのが関税障壁であり、その正当性を担保するために主張されているのが「中国政府による多額の補助金を得て生産される中国EVの過剰生産」である。この問題を深く掘り下げる。 |
2 | 10/31 | 人権侵害Ⅰ 香港 | 2019年、香港で起きた大規模な民主化デモは世界から大きな注目を集めた。香港では警察とデモ隊が衝突し、多くの逮捕者を出した。最終的に香港の人々の声を治安の強化によって封じ込めたとして中国は西側先進国から強い批判を浴びた。また鄧小平による「50年不変」という約束を反故にしたとして信義を問う声も高まった。しかし、日本や西側先進国のメディアが伝えた香港はほんの一面でしかなく、その裏には米中の激しい攻防戦があった。日本メディアがフォローしない裁判の詳細も含めて明らかにする。 |
3 | 11/07 | 人権侵害Ⅱ 少数民族問題 | 中国の少数民族問題といえば、すぐに思い浮かぶのはチベット族であり、ウイグル族の存在だ。中国にとって国内の少数民族にどう対処するのかは、細心の注意が求められる敏感なテーマの一つだ。概して漢民族よりも貧しく、差別の対象にもなってきた。ただ、こうした視点と欧米社会が取り上げるチベット、ウイグル問題には少なからず乖離がある。彼らが中国へのプレッシャーとして利用してきたことは、その時代や中国との関係によって政策が異なってきたことからも明らかだ。その詳細を解説する。 |
4 | 11/14 | 情報隠蔽 新型コロナウイルス | 2019年の年末、武漢を中心に広がった新型コロナウイルス感染症。感染爆発が武漢市で起こったことから中国の責任を問う声が広がった。また蝙蝠由来と考えられるコロナウイルスは当初は武漢の市場から、後には武漢にあるウイルス研究所から流出したものとして、中国批判に拍車がかかった。こうした問題がなぜ科学的な根拠も示されないまま拡散したのか。それを明らかにしながら、情報が独り歩きしながら定着する過程を明らかにする。 |
5 | 11/21 | 現状変更Ⅰ 台湾海峡 | 「力による現状変更に反対する」という言葉は、ここ数年G7などが発出する声明に頻繁に出てくる表現だ。これが中国に対する批判であることは言うまでもない。一方で、中国は何をどう変更したのか、については具体的に言及されることはない。なかでも台湾問題では、台湾自身も中国に対してこうした批判を繰り返している。では、台湾が指摘する「現状変更」とは何を指しているのか。一つ一つ検証しながらその攻防を読み解いてゆく。 |
6 | 12/05 | 現状変更Ⅱ 上海協力機構 | 中国を指して使われる「現状変更」だが、中国が実際に何を変更したのか、明らかにされることはない。また現状変更という批判の裏側には中国の「領土拡張の野心がある」ということもよく言われる。しかし、中国は領土拡張には慎重である。そのことはソ連崩壊後のロシアとの関係において、旧ソ連に属する中央アジアの国々との関係においてみることができる。具体的には上海協力機構の存在だが、中国はいかにロシアとの紛争を回避したのかを詳細に見てゆく。 |
備考
※講師の都合により、11月28日(木)は休講となりました。補講は12月5日(木)に行います。
講師紹介
- 富坂 聰
- 拓殖大学教授
- 愛知県生まれ。16歳で単身台湾に渡った後、大陸へ。北京大学在学中に共同通信社でアルバイトとして学生デモの報道に携わる。中退して帰国後は週刊誌記者として様々な社会問題にかかわる。2003年に独立。2014年から現職。著書は1994年の『龍の伝人たち』から現在まで30冊を超える。