ジャンル 世界を知る

中野校

アメリカ映画を読む ハリウッドが描くアメリカ大統領

  • 秋講座

寺地 五一(元東京経済大学教員)

曜日 木曜日
時間 10:40~12:10
日程 全6回 ・09月26日 ~ 10月31日
(日程詳細)
09/26, 10/03, 10/10, 10/17, 10/24, 10/31
コード 330303
定員 36名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 17,820
ビジター価格 受講料 ¥ 20,493

目標

・アメリカ映画を素材に、映像・作品の意味を主体的に読み取り、作品と能動的にかかわる楽しみを味わう。
・アメリカ映画を通して、欧米の社会・文化・歴史の一端に触れる。

講義概要

11月には米国大統領選挙があります。アメリカ政治の頂点に立ち、巨大な権力を持つ大統領をハリウッドはどう描いてきたのでしょうか。1960年代以降の実在の大統領あるいは大統領にまつわる事件・出来事を描いた作品を取り上げます。これらの作品に描かれる大統領像は史実に正確に基づいたものなのか、それとも製作された時点での社会の反映なのでしょうか。以下の作品について考えます。①ドナルドソン監督『13デイズ』(2000年) ②ストーン監督『JFK』(1991年) ③ストーン監督『ニクソン』(1995年) ④ハワード監督『フロスト×ニクソン』(2008年) ⑤マッケイ監督『バイス』(2018年)

各回の講義予定

日程 講座内容
1 09/26 序論:ハリウッドとアメリカ大統領 20世紀のマス・メディアの時代に入り、アメリカの大統領は自らのイメージと政策を国民に伝えるためにハリウッド映画から多くを学んできたと言われている。いまやアメリカの大統領は映画の主人公のように振る舞い、しゃべるのである。ハリウッド映画文化と大統領政治とがいかに深くつながっているかを、フランクリン・ルーズベルト、ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、ビル・クリントン、バラック・オバマなどを例にして考える。
2 10/03 ロジャー・ドナルドソン監督『13デイズ』(2000年) ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設したことに端を発したキューバ危機(1962年10月16日から29日までの13日間)において、キューバ侵攻を主張する軍部に対して、粘り強く打開の道を探るケネディ大統領の苦悩とリーダーシップを描くサスペンス・ドラマ。大枠は事実に基づいた映画であるが、ケネディ大統領とフルシチョフとの関係など、実際のキューバ危機と対比して考える。大統領のあり方を描いた映画としてだけでなく、ウクライナに侵攻したロシアが核兵器による威嚇を繰り返す現在、核の危機がその一歩手前で回避された実例としていま見る価値のある作品。
3 10/10 オリバー・ストーン監督『JFK』(1991年) ジョン・F・ケネディ大統領の衝撃的な暗殺を描き、アメリカで大きな物議と反響を巻き起こした作品。この映画がきっかけとなり、JFK暗殺に関する情報を保存する「JFK暗殺記録収集法」が制定され、暗殺情報の公開についても定められたが、まだすべて公開には至っておらず、依然として暗殺は謎に包まれている。オリバー・ストーンが2021年に公開した『JFK/新証言 知られざる陰謀』も踏まえ、ストーンが映画で提起する暗殺の背景が根拠あるものであるかどうか、またJFKが大統領として目指し実現できなかった平和政策、そして大統領のあるべき姿について考える。
4 10/17 オリバー・ストーン監督『ニクソン』 (1995年) オリバー・ストーンのアメリカ大統領三部作の第二弾。ニクソン大統領のウォーターゲート事件による辞任までの半生を描く。この事件をはじめとしてニクソンの政治的業績と失敗が網羅されているが、JFK暗殺へのかかわりの示唆など事実と憶測を織り交ぜるストーン一流のナラティブを通して人間ニクソンの内面が浮かび上がる。アンソニー・ホプキンズがニクソンを熱演している。1950年代から70年代までアメリカ政治をしぶとく生き延びたニクソンの政治家の光と影を考えたい。ウォーターゲート事件を暴く二人のジャーナリストを描く『大統領の陰謀』(1976年)についても言及する。
5 10/24 ロン・ハワード監督『フロスト×ニクソン』(2008年) 英国のエンタメ系司会者デイヴィッド・フロストが企画したニクソン・インタビュー(1977年)の再現であるが、フロストとニクソンの駆け引きと息詰まる対決が見事なドラマになっている。4回の録音セッションのうち3回は老獪なニクソンに振り回されるフロストだが、最後の録音セッションで一挙に形勢が逆転し、二人の対決はフロストの勝利に終わる。インタビューというエピソード一点に絞りながら、ニクソンの生々しい俗物性を描き出している。テレビで放映され、大反響を呼んだこのインタビューは政治とメディアの関係を私たちに考えさせる。
6 10/31 アダム・マッケイ監督『バイス』(2018年) イエール大学を中退し、架線工夫として働いていたディック・チェイニーがジョージ・W・ブッシュ大統領の副大統領として政権を牛耳り、「影の大統領」と呼ばれるほど大統領を超える権力者となるが、最後には失墜する顛末をマイケル・ムーアばりの手法も交えて軽快・軽妙に描く。ブラック・コメディで誇張もあるが、9.11同時多発テロを受けて、政府存続計画を立て、自らを中心とした「影の政府」を組織していく「ネオコン政治家」としてのチェイニーの実像を知る上で貴重な作品。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆もし可能であればとりあげる映画を事前に見ておいていただけると、講義をより理解できると思います。
◆休講が発生した場合の補講日は11月7日(木)を予定しています。

講師紹介

寺地 五一
元東京経済大学教員
1943年生まれ。東京外国語大学卒業後、同大学院修士課程修了。著書に『アメリカ一日一言』、訳書に『ノーム』、『去年を待ちながら』、『ウッドストック―1969年・夏の真実』、『マーシャン・インカ』、『ジョン・F・ケネディはなぜ死んだのか―語り得ないものとの闘い』、雑誌連載「私たちはなぜ先住民族について考えなければいけないか」など。長年国際交流ボランティアを続ける。
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