ジャンル 日本の歴史と文化

中野校

戦争と映画 ドキュメンタリーからメロドラマまで 戦争の語られ方の変容

  • 秋講座

川崎 賢子(清華大学日本研究センター客員研究員)

曜日 金曜日
時間 13:10~14:40
日程 全8回 ・10月04日 ~ 12月06日
(日程詳細)
10/04, 10/11, 10/18, 10/25, 11/15, 11/22, 11/29, 12/06
コード 330212
定員 24名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・日中戦争、太平洋戦争、朝鮮戦争、冷戦など、20世紀の戦争と映画の関係について理解を深める。
・戦争の時代の映画とプロパガンダについて理解を深める。
・映画スターの表現を読解する。
・メロドラマの政治性について考察する。

講義概要

20世紀は映画の全盛時代であったが、同時に戦争の時代でもあった。日本人が体験した日中戦争、太平洋戦争、冷戦期を映画はどのように描いただろうか。映画はその時代にどのようなプロパガンダのはたらきをしたのだろうか。そして、綺羅星の如きスターたちは、その映画の中でどのような役割を果たしたのだろうか。ドキュメンタリーからメロドラマまで、そして日本の戦争メロドラマの源流にあるハリウッドの戦争メロドラマまで、映像を見て考えたい。李香蘭(山口淑子)、田中絹代、岸恵子からヴィヴィアン・リー、イングリッド・バーグマンまで、戦争と映画を考える。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 10/04 戦ふ兵隊(1939)亀井文夫監督 旧ソ連に学んだ亀井文夫監督による、日中戦争「ドキュメンタリー」。そこには何が描かれて、何が描かれなかったのか。戦時の統制・検閲のまなざしとも絡めて、考えたい。
2 10/11 哀愁(1940)マーヴィン・ルロイ監督 ヴィヴィアン・リーとロバート・テイラー主演のメロドラマ。舞台は第一次世界大戦であるが、第二次世界大戦の状況も二重写しになっている。また、すれ違いや、恋人の出征中の女性の生活苦など、第二次世界大戦後の日本の戦争メロドラマの原型となったモチーフが含まれている。
3 10/18 カサブランカ(1942)マイケル・カーティス監督 イングリッド・バーグマンとハンフリー・ボガード主演のメロドラマ。名セリフが続々と! ナチス・ドイツの描かれ方、レジスタンスの描かれ方、カサブランカにおけるフランス人とドイツ人の対立など、明確な政治的意図を持つ映画でもある。
4 10/25 サヨンの鐘(1943)清水宏監督 李香蘭(山口淑子)が、台湾先住民族の役で登場する。日本映画の台湾へのまなざしはどのようなものであったのか。戦時下における植民地台湾の表象、および植民地における志願兵のイメージにも考えさせられる。
5 11/15 風の中の牝雛(1948)小津安二郎監督 田中絹代主演。出征し、なかなか復員しない夫を待つ妻は、子供の病気や生活苦に責められて身を売ろうとする。「哀愁」の設定にも触発されたと考えられるメロドラマである。小津安二郎監督作品としては異例の戦争メロドラマとも言える。
6 11/22 上海の女(1952)稲垣浩監督 山口淑子が主演。日中戦争下に、日本と中国との間で苦悩する女性を、上海の情報戦を舞台に描く。戦争期に、「中国で生まれ育った日本人」ではなく、「日本語に堪能な親日派の中国人女優」という設定でメディアに登場した李香蘭(山口淑子)自身をモデルにしたかのような設定が随所に見られる。戦後における日中戦争の描かれ方を考える上でも問題作。
7 11/29 君の名は(1953)大庭秀雄監督 菊田一夫原作。岸恵子、佐田啓二の主演。はじめラジオドラマとしてヒットし、満を持して映画化された。東京大空襲の夜に銀座の数寄屋橋で出会った男女が、慕いあいながら、すれ違いを重ねるという戦争メロドラマの代表作。『哀愁』の設定の引用も読み取ることができる。
8 12/06 二十四時間の情事(1959)アラン・レネ監督 日仏合作映画。脚本はマルグリット・デュラス「ヒロシマ・モナムール Hiroshima, mon amour」。アラン・レネ監督は、アウシュビッツ強制収容所を扱った「夜と霧」(1955)の監督でもある。米軍の原爆投下によって家族を失った男性と、ナチスの将校との恋愛の傷を持つ女性が、束の間の恋に落ちる。戦争の傷と恋愛とを映画はどのように描いたか、考察する。

講師紹介

川崎 賢子
清華大学日本研究センター客員研究員
専門は日本近代文学・文化・映画・演劇。主著に『もう一人の彼女 李香蘭 / 山口淑子 / シャーリー・ヤマグチ』(岩波書店、2019)『彼等の昭和 長谷川海太郎・潾二郎・濬・四郎』(白水社、1994年)、『尾崎翠 砂丘の彼方へ』(岩波書店、2010年)、『宝塚百年を越えて 植田紳爾に聞く』(国書刊行会、2014年)、『宝塚 変容を続ける「日本モダニズム」』(岩波現代文庫、2022年)など。

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