ジャンル 人間の探求

早稲田校

呪術/魔法から読み解く人類史 オカルトと科学の深い関係を考える

  • 秋講座

正木 晃(宗教学者)

曜日 水曜日
時間 15:05~16:35
日程 全10回 ・09月25日 ~ 11月27日
(日程詳細)
09/25, 10/02, 10/09, 10/16, 10/23, 10/30, 11/06, 11/13, 11/20, 11/27
コード 130516
定員 30名
単位数 2
会員価格 受講料 ¥ 29,700
ビジター価格 受講料 ¥ 34,155

目標

・呪術/魔法こそ宗教の起源だったことを学びます。
・呪術/魔法と近代科学は不可分の関係にあった事実を確認します。
・現代人の心の奥底に今なお呪術や魔法への待望がひそんでいる事実を確認します。

講義概要

私たちは17世紀の西ヨーロッパで生まれた近代科学の恩恵を享受しています。近代科学は呪術/魔法に代表されるオカルトと全く縁がないと信じ込んでいます。しかし歴史を振り返ると近代科学とオカルトはかつて密接な関係にあった事実に気付きます。実はオカルトを媒介に近代科学は誕生したのです。科学万能の現代でも呪術/魔法はしぶとく生き残っています。たとえば20世紀の精神医学を代表するユングにはオカルト的な性格が濃厚です。今なお占いがブームとなり、手かざしや祈祷が実践されているのは効能があると信じられているからです。本講義では予断や偏見なくオカルトと近代科学の関係を見つめ、私たちの不可解な心の奥底をのぞきます。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 09/25 現存最古の宗教ゾロアスター教の呪術/魔法 宗教の起源はさまざま論じられてきましたが、死者供養と願望成就のための呪術という説が有力です。3000年以上の歴史をもち、現存する最古の宗教とされるゾロアスター教の聖典をひもとくと、そこにはガーサー(偈=詩句)と呼ばれる呪文が羅列されています。また特殊な薬物を用いてこの世ならぬ世界を体験する儀礼も説かれています。
2 10/02 古代インド:アタルヴァ・ヴェーダの呪術/魔法 特定の呪文を唱えることで願望の成就が期待できる。呪術/魔法の根底には、この種の発想が必ず見出せます。古代インドから伝承されてきたアタルヴァ・ヴェーダはその典型例です。特に呪いや病気治療のように、徹底的な現世利益への志向性は、時代を超えて現代につながるオカルト的思考の源泉とも言えます。
3 10/09 ヘルメス学の伝統 中世から近世初期のヨーロッパには、古代エジプトに起源を発すると称するオカルト的な思想と実践の系譜がありました。それがヘルメス学です。その範囲は広く、錬金術や天文学などすこぶる多岐にわたります。現代人からすると、いかにもオカルト臭いのですが、近代科学を生み出す母胎となったこともあながち否定できません。
4 10/16 占星術師にして天文学者 ケプラー 近代科学の樹立を考えるとき、天文学者ケプラーの功績は実に偉大です。しかしケプラーには、天文学者である前に、占星術師という役割があり、彼自身にはむしろこの方が重要だったという説もあります。また彼が確定した惑星の正確な軌道は、キリスト教の調和に満ちた宇宙論を根底から覆す結果を招きましたが、それは彼の本意ではなかったとも指摘されます。
5 10/23 最後の錬金術師 ニュートン 人類史上、最高の天才の一人と言われるニュートンには、よく知られている最先端の科学者という顔のほかに、最後の錬金術師という顔がありました。おそらく彼の中では、科学とオカルトが分かちがたく結びついていたのです。それはなぜだったのでしょうか。アインシュタインにも見られる、天才独特の直感力あるいはイメージする力ゆえだったのでしょうか。
6 10/30 精神医学者ユングとマンダラ 偉大な精神医学者として知られるユングは、彼自身がいわば呪術師あるいは魔法の実践家的な傾向を持っていました。現にユングは第一次世界大戦の直前に、全ヨーロッパが血の海に沈むというヴィジョンを体験して、戦争を予見しています。また密教のマンダラに注目し、精神を病む人々の治療に用いたのもその一環と言えます。
7 11/06 呪殺の系譜 日本+チベット 呪術や魔法にとって最高かつ最難関の課題は敵対者を呪殺することです。呪殺は古代から始まって、実はつい最近まで実践されてきました。ただしそれは「人を呪はば、穴二つ」というように、文字どおり命懸けでした。その実例は日本とチベット密教に見出せます。
8 11/13 近代日本の呪術合戦と手かざし教団 明治維新以降の近代化とは裏腹に、戦前の日本はオカルト大流行でした。明治中期には東京で霊能者を集めて霊能合戦すら行われていました。また手かざしによる病気治療を標榜する教団は今なお複数が健在です。私自身の体験も含め、この種の呪術/魔法の効能を考えます。
9 11/20 霊能(験力)を求めて 日蓮宗の荒行と修験道 日本の宗教界はどこも表向き現世利益を否定します。しかし一皮むくと、加持や祈祷は今なお大人気です。そしてその種の霊能や験力を求めて、厳しい修行に励む宗教者がたくさんいるのです。
10 11/27 現代人にとっての呪術/魔法 科学が価値観の基準となっている現代日本。しかし科学とは全く縁のないはずの占いがもてはやされ、人を呪う儀礼がいまだ実践されています。その理由は現代人の精神が実はきわめて脆弱で、強い不安感に満ちているからではないか。オウム真理教や旧統一教会の事件はその一端かもしれません。

講師紹介

正木 晃
宗教学者
1953年、神奈川県小田原市生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本仏教・チベット仏教)。文献研究に留まらず、現地調査を実施しチベット・ヒマラヤ地域の調査は20回に及ぶ。高度でありながら誰でも理解できる仏教学を志向。著作は『「ほとけ」論』『現代日本語訳 法華経』など多数。

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