ジャンル 人間の探求

早稲田校

最も重要な仏典を読む 南北朝時代〜室町時代

  • 秋講座

正木 晃(宗教学者)

曜日 水曜日
時間 13:10~14:40
日程 全10回 ・09月25日 ~ 11月27日
(日程詳細)
09/25, 10/02, 10/09, 10/16, 10/23, 10/30, 11/06, 11/13, 11/20, 11/27
コード 130513
定員 30名
単位数 2
会員価格 受講料 ¥ 29,700
ビジター価格 受講料 ¥ 34,155

目標

・この時期に日本人の精神性に大きな変化が起こった事実を学びます。
・動乱期ならではリアルな宗教観を学びます。
・中世が他の時代よりも遙かに多様性にあふれていた事実を確認します。

講義概要

南北朝時代〜室町時代はまさに動乱期でした。価値観、とりわけ宗教観や生命観に大きな変化が起きました。宗教界では旧仏教系の力が徐々に衰え、鎌倉(新)仏教系の宗派が台頭し始めました。動乱期は、既存の約束事に拘らない、個性あふれる魅力的な人材を生み出します。本講座ではそれらの人材に焦点を当てつつ、この時代の精神世界を解明します。そこにはこれまで伝統仏教の各宗派が「正史」として語ってきた「事実」と、著しく異なる出来事や内容も見出せます。特に宗教者の性愛にかかわる領域は私たちの常識を超えていて、実に興味深いものです。資料は仏教の教義書に限定せず、文学作品、絵伝、御伽草子も引用して、楽しく学んでいきます。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 09/25 瑩山和尚『瑩山和尚清規』 曹洞宗は両祖と称して、祖師が道元と瑩山の二人います。そして瑩山が現れなければ、曹洞宗という宗派は滅び去っていたとさえ言われます。それほど瑩山が果たした役割は大きかったのです。その瑩山が僧堂の規則を定めた『瑩山和尚清規』を読み解きます。日本人の自然観や生命観を知る上でもきわめて興味深い内容です。
2 10/02 大智『仮名法語』 曹洞宗の大智は瑩山紹瑾の後を継ぎ、永平寺第六代の正嫡となった人物です。『仮名法語』は難解な道元の思想をわかりやすく語っていて、曹洞宗の教えを知るには絶好の著作です。
3 10/09 世阿弥 『風姿花伝』 世阿弥と言えば、能の大成者としてよく知られています。そして著作の『風姿花伝』には世阿弥が能という芸に何を託したか、が語られています。ちなみに世阿弥は、庇護者だった足利義満の寵童だったという説もあります。
4 10/16 五山文学 室町前期、京都の臨済宗は室町幕府との緊密な関係を背景に、隆盛を誇っていました。特に五山と呼ばれる巨大寺院は、政治力に加え、圧倒的な経済力もあって、文芸の領域でも主導権を握っていたのです。
5 10/23 『秋夜長物語』 本来、仏教は性行為を全面的に否定します。しかし日本仏教はおおむね戒律を無視し、僧侶の大半は実質的に妻帯していました。また同性愛も認められるどころか、むしろ推奨されていました。とりわけ中世になると、少年愛こそ悟りへの近道のような思想すら生まれていたのです。『秋夜長物語』はその典型例です。
6 10/30 一休『狂雲集』 破天荒と言えば、一休の右に出る人物はいません。若い頃は命懸けで修行し、悟りを開いたと伝えられます。その一方で本人が述懐しているとおり、両性愛者でもありました。特に最晩年は、『狂雲集』に述べているとおり、森侍者と呼ばれる盲目の美女との性愛に没頭していました。
7 11/06 覚如 『慕帰絵詞』 浄土真宗の歴史において、覚如は本願寺第三世という重要な位置を占めています。しかしその一代記にあたる『慕帰絵詞』をひもとくと、私たちが抱いているイメージとは大きく異なる浄土真宗の実像が浮かび上がってきます。少年愛・贅沢な生活・親鸞は善鸞を義絶していなかった・・・・・などです。
8 11/13 蓮如『蓮如文集』 蓮如は浄土真宗にとって最大の功労者です。もしこの布教の天才が現れなければ、浄土真宗は日本最大の宗派になれなかったでしょう。蓮如の発した言葉は、なぜこの時代の人々の心をしっかり捉えることができたのか。蓮如が残した多種多様な文章から読み解きます。
9 11/20 日親『鍋かぶり日親聖人絵伝』 日親は日蓮宗(法華宗)が台頭する上で最も重要な役割を果たした人物です。権力や他宗に対する苛烈極まりない言動は、大きな反発を招き、頭に焼けた鉄鍋をかぶせられたり、舌の先を切られるなどの過酷な刑を受けました。彼の生涯には、宗祖の日蓮以来、絶対に妥協しないこの宗派の方向性が如実に現れています。
10 11/27 御伽草子『天狗の内裏』 源義経が鞍馬山で修行中、「天狗の内裏」という不思議な場所に迷い込んで天狗たちと交流し、武道の極意を授かる物語です。その間に地獄から浄土を訪れるなど、仏教的な潤色も目立ちます。原本は室町時代に成立し、江戸初期に現在のような形になったと考えられます。

講師紹介

正木 晃
宗教学者
1953年、神奈川県小田原市生まれ。筑波大学大学院博士課程修了。専門は宗教学(日本仏教・チベット仏教)。文献研究に留まらず、現地調査を実施しチベット・ヒマラヤ地域の調査は20回に及ぶ。高度でありながら誰でも理解できる仏教学を志向。著作は『「ほとけ」論』『現代日本語訳 法華経』など多数。

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