ジャンル 日本の歴史と文化
早稲田校
縄文時代の新たな学説と論争
高橋 龍三郎(早稲田大学名誉教授)

曜日 | 月曜日 |
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時間 | 13:10~14:40 |
日程 |
全8回
・10月21日 ~
12月16日 (日程詳細) 10/21, 10/28, 11/11, 11/18, 11/25, 12/02, 12/09, 12/16 |
コード | 130239 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
・縄文時代に関する代表的な学説を紹介し今日的意義について学ぶ。
・学説と論争の時代背景を探る。
・今日の学説が定着するまでの発見の歴史を学ぶ。
講義概要
一般に、縄文時代に関する各種の定説は脆く崩れやすく、新発見によって新たな学説に置き換えられることがしばしばある。考古学は事実の確認、類例の蓄積と検討、その解釈といった階梯を踏んで結論に達するが、いずれも重要な手続きである。換言すればそのいずれを欠いても成立は難しい。特に解釈には主観が入りやすく、多くの検証を必要とする。講義では縄文時代の生業や文化、社会に関する諸説を紹介し、学説の意義を解説すると同時に課題について検討する。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 10/21 | 縄文文化の起源をめぐる論争と課題 | 明治、大正、昭和の各時代を通じて、縄文文化の起源をめぐる議論は多くの関心を呼んだ。最古の縄文文化を探る手続きをふみ、また途中で大陸からの影響を加味検討しながら起源論は推移した。今日では世界でも最古の部類に属する土器の年代が明らかにされ、日本列島内での生成説が有力になってきている。それらを巡る学説について紹介し、今日的な課題について検討する。 |
2 | 10/28 | 縄文人の起源と系統をめぐる論争 | 縄文人が如何なる人種系統に属し、どのように展開をしたのかについては、E.S.モースの大森貝塚以来の大きなテーマであった。主に形質人類学や文化系統を研究する過程で学説は大きく展開したが、今日のDNA分析の結果は、それらとはまた異なる方向と示している。人種論について整理し、方法論としての課題や問題点を検討する。 |
3 | 11/11 | 縄文時代の年代に関する学説と論争 | 日本考古学の年代的枠組みが今日のように整備される過程で、「ミネルヴァ論争」は避けて通ることが出来ない論争であった。その意味で縄文時代の年代的位置づけや科学的方法論としての「編年学的研究」が重要な意味をもった。論争当時の思潮や考古学の方法論について検討し、今日それがどのように継承されているかを考える。 |
4 | 11/18 | 縄文時代の農耕論争 | 縄文時代には初期的な農耕が胚胎していたのではないかとの学説は古くからあった。根茎類や堅果類の栽培の痕跡が追及されたが、必ずしも説得力のあ物ではなかった。しかし、近年、レプリカ法による圧痕研究の進展により、あらためて縄文農耕論が注目されるようになった。講義では、それをどう把握し理解したらよいのかについて検討する。 |
5 | 11/25 | 縄文時代の生業問題(サケ・マス論争) | 縄文文化研究の大家、山内清男の「サケマス論」は縄文時代の経済だけでなく、縄文社会を論じる際の重要な基礎論であった。その民族誌的、理論背景や考古学的背景を明らかにし、今日のデータ集積や同位体分析などから照射し検討する。 |
6 | 12/02 | 縄文集落をめぐる論争と最新の研究 | 最近まで、縄文時代中期の環状集落は主に地縁的な枠組みで検討され縄文文化の中でも最高潮に達した文化段階として理解されてきた。しかし、近年の研究では、それに代わって血縁的な把握の方法が提唱されている。集落の中に何らかの区分原理を見出し、それを社会的、集団的な区分と見做すからである。講義ではそれらの方法の違いを解説し、近年の学説を整理する。 |
7 | 12/09 | 縄文社会の複雑化、階層化過程に関する課題 | 縄文時代はよく「平等社会」だといわれるが、その根拠は何であろうか。その学説の問題点を整理する。最近の理論的研究を踏まえた議論では、平等社会の縄文時代から階層制の発達した弥生時代にいきなりジャンプアップすることは理論的に難しく、途中に複数の階梯が必要であり、社会の複雑化に伴った複数の階層化過程があると考えられるようになった。講義ではこれらの具体的事例の分析と問題点について検討する。 |
8 | 12/16 | 縄文人の宗教観 | 縄文時代に芽生えた原始的な宗教は、精霊信仰やシャーマニズムが著名であり、それに関する議論が活発に行われた。その根拠となったのはアジアやアフリカ、オセアニア、アメリカ大陸の民族誌であり、人類学的研究の成果である。それらを検討すると共に、トーテミズムの社会的役割について、縄文社会との関わりと絡めて検討する。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆講義中に参考資料や書籍について紹介するので、とくに携帯するものはありません。
講師紹介
- 高橋 龍三郎
- 早稲田大学名誉教授
- 1953年長野県生まれ。早稲田大学文学研究科博士後期課程満期退学。現在、早稲田大学文学学術院名誉教授、山梨県立考古博物館館長。専門は先史考古学。主な研究テーマは、縄文社会の複雑化・階層化過程の研究,氏族制社会の成立過程の研究等。著書に、『縄文文化研究の最前線』(単著)、『村落と社会の考古学』(編著)、『科学で読みとく縄文社会』等。