ジャンル 文学の心

早稲田校

漱石文学の世界

  • 秋講座
  • オムニバス

中島 国彦(早稲田大学名誉教授)
長島 裕子(秀明大学客員教授)
安藤 文人(早稲田大学元教授)
藤尾 健剛(大東文化大学教授)
石原 千秋(早稲田大学教授)
藤井 淑禎(立教大学名誉教授)
松下 浩幸(明治大学教授)
山本 亮介(東洋大学教授)
服部 徹也(東洋大学准教授)

曜日 土曜日
時間 10:40~12:10
日程 全9回 ・09月28日 ~ 12月07日
(日程詳細)
09/28, 10/05, 10/12, 10/19, 10/26, 11/09, 11/16, 11/30, 12/07
コード 130104
定員 31名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 26,730
ビジター価格 受講料 ¥ 30,739

目標

・漱石の魅力をさまざまな角度から明らかにしていきます。
・漱石と関連する文学者にも幅広く眼を注ぎ、漱石を立体的に考えます。

講義概要

春学期は「坑夫」までの世界を多角的に分析してきましたが、秋学期はちょうど時期的に接続する「文鳥」「夢十夜」「三四郎」「それから」の世界を考えたいと思います。作品を読み込む一方で、その時期の文学理論や他の文学者との関係にも目を向けることにより、漱石の明治41年、42年の歩みを辿っていきたいと思います。「夢十夜」「三四郎」「それから」については各2回配当し、複眼的に分析します。春学期担当の、石原千秋、安藤文人、藤尾健剛、藤井淑禎、松下浩幸、服部徹也、山本亮介、長島裕子、中島国彦の9名で、今回も担当していきます。(企画・中島国彦 早稲田大学名誉教授)

各回の講義予定

日程 講座内容
1 09/28 なぜ実在しないものを描くのか―「創作家の態度」における恋愛の位置 漱石は講演をもとにした論文「創作家の態度」において、「真」を写す文学だけを理想とするのではなく、情操の文学も社会に必要なものとして考えなければならないと述べています。しかし論文中で漱石自身の創作に触れることはありませんでした。漱石が恋愛を描き続けたこと、それも実体験としてではなく「虚構」、すなわち実在しない人物たちの恋愛小説を描きつづけたことをふまえて読み直したとき、この論文からどのような創作家の態度が読み取れるでしょうか。漱石が参考にした西洋の文芸評論などを手がかりに論文を読み解きます。(服部徹也)
2 10/05 「文鳥」を読む 「文鳥」に出てくる女性は日根野れんで、石川悌二の研究などに基づいて、金之助と彼女との関係を簡略に紹介したい。「文鳥」にはまた、鈴木三重吉が登場し、彼の作品への言及がある。「文鳥」を三重吉作品への応答として受けとめれば、意外な意味を掘り起こすことができるかもしれない。その点にも論及したい。(藤尾健剛)
3 10/12 夢らしさが芸術になるときー『夢十夜』 『虞美人草』で自分の人生観が受け容れられなかったと悟らされた漱石は、『坑夫』を経て『夢十夜』を書くことで、いわゆる19世紀的なリイアリズム小説を書くことができるようになりました。一体何が起きていたのでしょうか。その秘密を特に19世紀的なリイアリズム小説から遠く離れた『夢十夜』から考えてみたいと思います。(石原千秋)
4 10/19 『夢十夜』「第六夜」と漱石の芸術観 「運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいる‥」と始まる『夢十夜』「第六夜」は、飛躍や奇想に溢れた他の夢に比べれば、比較的わかりやすくまとまった話のようにも読める。しかし、やはり夢である。考えてみると何がポイントの話なのかはやはりわからない。今回は、その草稿メモに「仁王」という言葉の見える「文芸の哲学的基礎」との関連に注目し、新たな材源にも触れながら、「第六夜」の中に漱石の芸術(家)観の反映を探っていきたい。(安藤文人)
5 10/26 二葉亭四迷との交友から見た漱石の位置 1909(明治42)年5月15日、漱石は「二葉亭印度洋上ニテ死去。気の毒なり」と日記に記しています。遺骨が日本に到着、翌月葬儀に出席した漱石は、追悼文「長谷川君と余」を執筆しました。朝日新聞で同僚だった2人は、お互いをどのように見ていたのでしょうか。そうした観点から、問題を確認していきたいと思います。(中島国彦)
6 11/09 『三四郎』―「読書」と「青春」の誕生 黙読という「読書」のスタイルは近代的な習慣だとされるが、『三四郎』では「読書」と「書物」にまつわる記述や比喩に、重要な意味を見出すことができる。また、『三四郎』は青春文学の代表作とされるが、「青春」もまた明治近代に登場する新しい人生の季節である。「書物」を黙読することと「青春」の誕生は、どのように関わっているのだろうか。『三四郎』を通して、今回はこのような問題を考えてみたい。(松下浩幸)
7 11/16 『三四郎』:主人公の〈成長〉に描かれたもの 上京した青年が都会の人間関係に翻弄される『三四郎』は、しばしば日本近代を代表する「教養小説」(ビルドゥングスロマン)のひとつに数え上げられます。確かに主人公三四郎は、作中の経験から何がしかの変貌を遂げたように見えます。一方、後続する漱石作品に現れる、〈大事な機会に遅れること〉・〈取り返しがつかない過去〉の問題が、小説『三四郎』には萌芽しています。その意味で、いわゆる前期三部作の始めに位置する『三四郎』は、漱石作品のターニングポイントであったとも言えます。具体的な場面とその表現を味読しながら、一筋縄ではいかない〈成長〉の形を確認したいと思います。(山本亮介)
8 11/30 『それから』執筆の日々 『それから』は「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」に、明治42年6月27日から10月14日までの110回連載されています。この原稿を漱石は、同年5月31日に書き出し、8月14日の76日間で書き終えています。その後漱石は9月2日に東京を発ち、満韓の旅行に出かけて10月16日に帰京しました。漱石は明治42年3月2日から、『それから』の執筆中の期間も含めて8月28日まで「日記」を書いていました。詳細な「『それから』の構想」とされる「断片」も残されています。これら「日記」「断片」に加えて、執筆中には明らかに数の減ったこの時期の書簡も手がかりに、『それから』執筆の背景を考えていきたいと思っております。(長島裕子)
9 12/07 通俗小説としての『それから』 周知のように漱石は、新聞拡販競争のエースの役を任されていた新聞社専属の「通俗作家」だった。しかし、そうした見方もいつのまにか文豪としての名声にかき消されて今日に至っている。本講座ではこうした風潮に抗して、漱石作品の通俗小説的側面に注目してみたい。取り上げるのは中期の『それから』である。実は私は「通俗小説としての『明暗』」についてお話したこともあり、7年の時差のある二つの作品を通俗小説という観点から比較してみると、さまざまな興味深い発見がある。今回はそれをさらに通俗小説史の流れのなかにもおいて考えてみたい。(藤井淑禎)

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講は12月14日(土)を予定しています。
◆各回担当講師・担当回・各回講義内容は変更となる場合がございます。

講師紹介

中島 国彦
早稲田大学名誉教授
1946年東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了、博士(文学)。公益財団法人日本近代文学館理事長。日本近代文学専攻。著書『近代文学にみる感受性』(筑摩書房)、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)、『漱石の地図帳―歩く・見る・読む』(大修館書店)、『森鷗外 学芸の散歩者』(岩波新書)等。

長島 裕子
秀明大学客員教授
早稲田大学大学院修士課程修了。現在、秀明大学客員教授。専門分野は日本近代文学。著書に、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『文章の達人 家族への手紙4 夫より妻へ』(編著、ゆまに書房)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)がある。
安藤 文人
早稲田大学元教授
岐阜県生まれ。早稲田大学第一文学部、同大学院において英文学を専攻した後、比較文学に転じ、英国18世紀作家ロレンス・スターンが漱石の初期作品に与えた影響について研究を続けている。文学学術院において英語科目を担当。英語関係の著作に『アウトプットに必要な英文法』(研究社)他がある。
藤尾 健剛
大東文化大学教授
1959年兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科修士課程修了。香川大学助教授をへて、現職。著書に、『夏目漱石の近代日本』(勉誠出版)、『川端康成 無常と美』(翰林書房)がある。
石原 千秋
早稲田大学教授
1955年、東京都生まれ。成城大学文芸学部卒業、同大学院博士後期課程中退(文学修士)。東横学園女子短期大学助教授、成城大学教授を経て、現職。著書『漱石と三人の読者』(講談社現代新書)、『『こころ』で読みなおす漱石文学』(朝日文庫)、『漱石入門』(河出文庫)、 『漱石はどう読まれてきたか』(新潮選書)など。
藤井 淑禎
立教大学名誉教授
愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学卒業。立教大学大学院博士課程満期退学。専門は日本近代文学・文化。著書に、『清張 闘う作家』(ミネルヴァ書房)、『名作がくれた勇気』(平凡社)などがある。
松下 浩幸
明治大学教授
専門分野は日本近現代文学。著書に『夏目漱石―Xなる人生』(NHK出版)、共著に『夏目漱石事典』(勉誠出版)、『異文化体験としての大都市―ロンドンそして東京』(風間書房)、『日本近代文学と〈家族〉の風景―戦後編』(明治大学リバティアカデミー)など。
山本 亮介
東洋大学教授
1974年、神奈川県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。専門分野は、日本近現代文学。信州大学を経て現職に至る。著書に、『横光利一と小説の論理』(笠間書院)、『小説は環流する―漱石と鷗外、フィクションと音楽』(水声社)などがある。
服部 徹也
東洋大学准教授
1986年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。同大学院文学研究科助教(非常勤)、大妻女子大学非常勤講師、大谷大学助教等を経て、現職。専門は日本近代文学・文学理論。共著に小平麻衣子編『文芸雑誌「若草」:私たちは文芸を愛好している』(翰林書房)など。
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