ジャンル 日本の歴史と文化
中野校
『平家物語』の仏教と怨霊鎮魂
兵藤 裕己(学習院大学名誉教授)

曜日 | 木曜日 |
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時間 | 15:05~16:35 |
日程 |
全4回
・08月01日 ~
09月05日 (日程詳細) 08/01, 08/22, 08/29, 09/05 |
コード | 320205 |
定員 | 24名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 11,880 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 13,662 |
目標
・『平家物語』の仏教と怨霊鎮魂思想との関わりについて考えます。
・『平家物語』の女人救済・悪人救済の物語と、その仏教史的な位置づけを考えます。
講義概要
平安京を都とした桓武天皇は、鬼門(東北)に位置する比叡山を最澄に与え、護国の寺院として延暦寺を建立させます。最澄は天台宗を日本にもたらした高僧ですが、天台宗は『法華経』を基本経典とします。以後、法華経は平安時代をつうじて貴族社会に浸透し、延暦寺は朝廷を守護する寺院として国家的な性格を強めます。そして平安末期の危機的な状況のなかで、『平家物語』は延暦寺周辺で作られました。講義では、『平家物語』の成立と怨霊鎮魂の思想、また法華経と女人救済、悪人救済思想との関連について考えます。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 08/01 | 平安京と怨霊思想 | 琵琶法師の元祖とされる蝉丸は、平安京の東の逢坂山に住んだといわれます。また平家琵琶の中興の祖とされる覚一検校は、畿内(朝廷の直轄地)の西のはずれ、明石を領地としたといわれます。琵琶法師の二人の祖は、なぜ、朝廷の支配力が及ぶ/及ばない境界の地で琵琶語りを演奏したのでしょう。この問題は、じつは琵琶法師が担った宗教的な役割とともに、『平家物語』の成立にも直結する問題なのです。 |
2 | 08/22 | 法華経と怨霊鎮魂 | 『平家物語』が比叡山延暦寺の周辺で作られたことは確かです。延暦寺を拠点として最澄が広めた天台宗は、法華経の信仰を貴族社会だけでなく、日本社会全体に浸透させました。そして平安末期の源平争乱を語る『平家物語』も、法華経信仰の影響下で成立しました。法華経の怨霊鎮魂の思想と、『平家物語』の成立過程との関わりを考えます。 |
3 | 08/29 | 女人往生思想と法華経 | 法華経が説く女人往生思想は、女人救済の思想として平安時代に広く流布しました。たとえば、『源氏物語』の浮舟の物語には、法華経の思想が色濃く投影しています。同じことは、壇ノ浦で入水を試みて失敗し、生き残った建礼門院の物語にもいえます。それらの物語と仏教(とくに法華経)思想との関係について考えます。 |
4 | 09/05 | 悪人救済と女人救済 | 『平家物語』が説く「悪人」救済とはなんでしょうか。『平家物語』巻十で、平重衡(しげひら)は、法然上人に、「かかる悪人の助かりぬべき方法」を示したまへ」と涙ながらに訴えます。「悪人」の往生を可能にするのは、貴族社会の仏教に対抗して、法然や親鸞らが考えた逆転の発想です。そうした新しい仏教思想の端緒が、じつは『平家物語』に語られていることをお話しします。 |
講師紹介
- 兵藤 裕己
- 学習院大学名誉教授
- 1984年東京大学大学院修了。文学博士。学習院大学名誉教授。校注本に、岩波文庫『太平記 全6冊』、同『俊徳丸・小栗判官』。著書に、『声の国民国家』講談社学術文庫、『太平記〈よみ〉の可能性』同、『後醍醐天皇』岩波新書、『琵琶法師ー異界を語る人々』同、『王権と物語』岩波現代文庫、『物語の近代』岩波書店、『平家物語の歴史と芸能』吉川弘文館、などがある。