ジャンル 現代社会と科学
早稲田校
地球生命史の探究―中生代編
川辺 文久(文部科学省教科書調査官、早稲田大学招聘研究員)

曜日 | 土曜日 |
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時間 | 13:10~16:35 ※途中休憩をはさみます。 |
日程 |
全4回
・07月27日 ~
08月31日 (日程詳細) 07/27, 08/03, 08/24, 08/31 |
コード | 120708 |
定員 | 30名 |
単位数 | 1 |
会員価格 | 受講料 ¥ 23,760 |
ビジター価格 | 受講料 ¥ 27,324 |
目標
・地球と生命の歴史を体系的に理解する。
・非日常的な事物に触れながら知的好奇心を喚起する。
・ものごとを人間が経験できない時間スケールを含めて、多面的な視点から考察する能力を養う。
講義概要
我々が暮らす地球は46億年、我々を含む生物たちは40億年の歴史を持つ。この長い時間経過の中で、生物たちはその時々の気候や大陸配置などに左右されながら栄枯盛衰を繰り返して進化を続けてきた。一方、有機物からなる生物の体と石灰質の殻や骨格は温室効果ガスである二酸化炭素の固定を担っていることなど、生物自身も地球表層環境に影響を与える。本講座は、地球と生命の歴史を体系的に学び、私たち人類の自然における立ち位置を考える機会とする。また、実感を伴った理解とするために実物化石を観察する。2023年度夏講座「地球生命史の探究―古生代編」の続編だが、今回から受講される方にも配慮して授業を進める。
各回の講義予定
回 | 日程 | 講座内容 | |
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1 | 07/27 | 【前半】中生代以前の地球生命史 (2023年夏講座の復習と代表的な古生代化石の観察)【後半】中生代三畳紀1(三畳紀の海の生態系など) | 約5億4千万年前の海のなかで多種多様な動物が出現した。これが古生代の始まりである。サンゴやウミユリがつくる礁では腕足動物、三葉虫、オウムガイなどが繫栄した。4億年前頃には動物と植物が本格的に陸上進出を始めた。魚類のあるグループから四肢動物が派生し、シダ植物が繁茂する湿地は石炭の源になった。ところが、2億6千万年前頃から地球環境が連鎖的に悪化し、当時の生物種の9割以上が絶滅した。古生代の終焉である。中生代は三畳紀(約2.5億〜2億年前)、ジュラ紀(〜約1.45億年前)、白亜紀(〜6600万年前)に区分される。三畳紀は大量絶滅事件を生き延びた生物たちの復活と新たなタイプの生物の出現の時代だった。生物相の回復には数千万年の時間を要したが、三畳紀後期までには再び豊かな生態系が築かれた。しかし、その構成は古生代とは大きく異なっていた。 |
2 | 08/03 | 【前半】中生代三畳紀2(三畳紀の陸の生態系など) 【後半】中生代ジュラ紀1(代表的なジュラ紀化石の観察) | 大陸はプレート運動によって移動し、数十億年前から分裂と合体を繰り返した。三畳紀には、すべての大陸が合体した超大陸パンゲアがあった。パンゲアでは、内陸の乾燥、夏と冬の大きな温度差、強烈な季節風など極端な気候だったとされる。ソテツやイチョウなどの裸子植物が台頭し、哺乳類と恐竜がほぼ同時期に出現した。海中に進出した爬虫類もいた。三畳紀末期になると激しい火山活動を伴って超大陸パンゲアが分裂を開始した。このとき再び大量絶滅事件が生じ、三畳紀は幕を閉じた。 |
3 | 08/24 | 【前半】中生代ジュラ紀2 (ジュラ紀の海と陸の生態系など)【後半】中生代白亜紀1(白亜紀の海と陸の生態系など、代表的な白亜紀化石の観察) | ジュラ紀の陸上では恐竜が闊歩し、翼竜が羽ばたいていた。海ではイカの仲間であるアンモナイトやベレムナイト、爬虫類の魚竜やクビナガリュウが遊泳していた。また、恐竜と鳥類の特徴を併せ持つ始祖鳥がいた。大陸分裂は進み、白亜紀になると低緯度にはテチス海と呼ばれる海域が広がった。ここでは多様な海洋生物が生息し、なかでも石灰質の殻をもつ小さなプランクトンが大繁殖した。これらの殻が大量に堆積した白い地層が白亜紀の名の由来である。白亜紀の中頃、カニ類、穿孔捕食性巻貝、真骨魚類など強力な捕食者が徐々に増え、捕食―被食者間での軍拡競争のような共進化が進んだとされている。これを中生代の海洋革命という。また、1億年前頃から花を咲かせる被子植物が台頭し、植物と昆虫の共進化が始まった。 |
4 | 08/31 | 【前半】中生代白亜紀2(温暖化地球と海洋無酸素事変) 【後半】中生代白亜紀3(小天体衝突と大量絶滅) | 概ね中生代は南北両極に氷床や海氷がない温暖な時代だった。とりわけ白亜紀中頃には活発な火山活動由来の二酸化炭素によって温室効果が強化し、高緯度でも温帯性植物や恐竜が生息できるほど温暖化した。中高緯度の海水温も高く、海洋の中・深層では海水中の酸素濃度が低下しやすくなった。酸欠の海では、生物の遺骸が分解されないまま海底に沈積し、有機物に富む黒い地層(黒色頁岩)が広範囲で形成された。これを海洋無酸素事変という。人間が採掘している原油の大部分は白亜紀の海底に堆積した黒色頁岩に由来する。6600万年前、直径10 km程の小天体が地球に衝突したことで地球表層環境が激変し、大量絶滅事件が生じた。中生代の終焉である。このとき、恐竜、アンモナイトなど中生代を代表する動物の多くが絶滅した。一方で、小天体衝突による環境擾乱の影響をほとんど受けていない生物もいた。 |
ご受講に際して(持物、注意事項)
◆休講が発生した場合の補講日は9月7日を予定しています。
◆本講座は2023年度夏学期に早稲田校で開講した同講師の講座の続編となっていますが、初めての方もご受講いただけます。
講師紹介
- 川辺 文久
- 文部科学省教科書調査官、早稲田大学招聘研究員
- 神奈川県出身。博士(工学、早稲田大学)。気象予報士。専門分野は地質学、古生物学、理科教育。2010年に文部科学省入省、教科書検定に従事。2003年より早大教育学部で地球生命史や地学の講義を担当。著書等に『生物学辞典』(東京化学同人、分担執筆)、『ポプラディア大図鑑WONDA・大昔の生き物』(ポプラ社、分担監修)がある。