ジャンル 人間の探求

早稲田校

中世神道の世界

  • 春講座

伊藤 聡(茨城大学教授)

曜日 月曜日
時間 10:40~12:10
日程 全8回 ・04月15日 ~ 06月17日
(日程詳細)
04/15, 04/22, 05/13, 05/20, 05/27, 06/03, 06/10, 06/17
コード 110588
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・日本文化に対する理解を深める。
・歴史的に物事を考えられるようになる。
・宗教と文化の関係について理解する。

講義概要

中世は、カミ信仰と仏教とが融合したひとつの信仰・教理の体系を作り出した。それが「中世神道」である。本講義では、中世において在来のカミ信仰が、仏教や中国思想の影響を受けて、どのようにして「神道」と呼び得る存在へと変容し、近世に受け継がれていったのかを辿る。具体的には、〈内なる神〉の創出、両部神道・伊勢神道・吉田神道などの教説、密教に倣った秘説伝授、鎌倉仏教との関わりなどを採り上げる。神道は、太古から変わることなく続いてきた日本の固有宗教ではなく、絶えず外来の思想・信仰を取り入れつつ変化してきたのである。このことを中世神道の諸相を紹介することで示したい。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 04/15 イントロダクション―中世神道とは何か 初回は導入として、中世神道全体の概要と研究の現状を紹介する。併せて、現在の神道と仏教とが別々に信仰されているありようは近代の産物であって、神仏が融合した中世神道的世界の方が長い伝統があることを示し、それを解体・消滅させた明治維新での神仏分離・廃仏毀釈の経緯についても述べる。
2 04/22 本地垂迹説の展開と神観念の変容 平安後期以降、仏を本体(本地)、カミを化身(垂迹)とする本地垂迹説の浸透の結果、カミ信仰は仏教の中に包摂された。しかし、そのことでカミは衆生の救済者という新たな性格を獲得した。さらに鎌倉時代に入ると、仏はカミとして人間の心の中に垂迹するという解釈が生まれる。これが〈内なるカミ〉ともいうべき観念である。この変革は、カミを道徳的なもの主催者とする近世以降の神道観の元となった。
3 05/13 両部神道・伊勢神道・山王神道 鎌倉時代の初頭、本地垂迹説を発展させたカミについての新たな教説が生まれた。伊勢神宮周辺で始まる密教系の両部神道と外宮神官系の伊勢神道である。この動きはやがて比叡山に飛び火して、山王神道とよばれる教説を生み出した。さらに三輪山・室生山・長谷寺等にも影響は拡がる。カミ信仰は、このようななかで一定の教理を備えた宗教=〈神道〉として整えられていったのである。
4 05/20 神道灌頂と神道流派の形成 中世神道では、その秘儀・秘説の伝授に密教の伝法灌頂に倣った作法が採られた。神道灌頂(神祇灌頂)という。『日本書紀』や『麗気記』などもの神道書も、灌頂形式で伝授されたのである。そのような相承の連なりの結果、南北朝期以後になると神道独特の流派が発生する。この動きが、神道を仏教から独立した宗教組織とする契機となるのである。
5 05/27 鎌倉仏教と神祇信仰 中世神道の形成と、浄土宗・浄土真宗・日蓮宗・真言律宗などの新しい仏教宗派(鎌倉仏教)の動向は、共に鎌倉時代に始まる同時代的現象であり、時代意識や救済論などにおいて類似するところが少なからずある。また実際に鎌倉仏教と中世神道とが結びついた事例も見いだせる。両者の関係を通して、中世仏教の性格をあらためて考える。
6 06/03 三教一致思想と禅林 中国から日本にもたらされた仏教・儒教・道教の三教一致思想は、在来の神仏習合説と結びついて、仏教・儒教・神道の融合を説く日本的三教一致思想となり、日本の宗教環境の中に溶け込んでいく。これを主導したのが禅僧たちで、彼らは日本の神々への理解に新しい要素を持ち込んだ。禅僧が日本にもたらした外来文献は、鎌倉時代初頭の両部・伊勢神道書の内容に影響を与えており、中世神道形成に彼らが果たした役割はことのほか大きかったのである。
7 06/10 吉田神道の登場 吉田兼倶が創始した吉田神道(唯一神道)は、仏教に包摂されていた神道を、その引力圈から離脱させた初めての神道流派である。ここにおいて神道は、ようやく自立した宗教となる。本回はその歴史と教理について解説する。森羅万象に神性が宿るとする神観念や、怨霊化を介さずに人が神となる方法を創出するなど(豊臣秀吉の神格化はその典型)、吉田神道は近世以後の神道の枠組を作り出したのである。
8 06/17 中世神道から近世神道へ 近世は儒家神道が起こり、また排仏論も盛んになった時代である。しかしながら、近世神道は多くの点で中世神道を継承している。特に吉田神道の影響は大きく、近世神道諸流の多くは、吉田神道の教理をベースにしている。中世から近世への移行期において、何が受け継がれ何が断絶・変容したのかを示しつつ、中世神道の意義を考える。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆本講座は2023年度春学期に八丁堀校で開講した「中世神道と仏教」講座と同じ内容のところもあります。

講師紹介

伊藤 聡
茨城大学教授
岐阜県生まれ。茨城大学人文社会科学部教授。博士(文学、早稲田大学)。専門分野は日本思想史。特に、日本中世の神仏習合思想、中世神道説について研究している。著書に『中世天照大神信仰の研究』(法蔵館、2011年、第34回角川源義賞歴史部門受賞)、『神道の形成と中世神話』(吉川弘文館、2016年)、『神道の中世―伊勢神宮・吉田神道・中世日本紀』(中央公論新社〔中公選書〕、2020年)、『日本像の起源―つくられる〈日本的なるもの〉』(KADOKAWA〔角川選書〕、2021年)等がある。
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