ジャンル 文学の心

早稲田校

名作への招待、近現代文学150年

  • 春講座
  • オムニバス

中島 国彦(早稲田大学名誉教授)
宮内 淳子(立正大学講師)
山本 亮介(東洋大学教授)
藤井 淑禎(立教大学名誉教授)
石割 透(駒澤大学名誉教授)
庄司 達也(横浜市立大学教授)
小菅 健一(山梨英和大学教授)
篠崎 美生子(明治学院大学教授)

曜日 月曜日
時間 15:05~16:35
日程 全8回 ・04月08日 ~ 06月10日
(日程詳細)
04/08, 04/15, 04/22, 05/13, 05/20, 05/27, 06/03, 06/10
コード 110186
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・日本の近現代文学の名作、問題作に親しむ。
・作品を読む新しいアプローチを確かめる。
・名作だけでなく、これまで光の当たらなかった作品も取り上げていく。

講義概要

昨年度まで開講されていた「近代文藝百年」(早稲田校・土曜午後)と「東京―街・人・文学」(八丁堀校・月曜午後)の2講座を、発展的に合併し、新たな構想で新講座を計画しました。明治の名作から現代文学の問題作まで、8名の講師の薦める作品が登場します。中島国彦(北原白秋)、宮内淳子(佐藤春夫)、篠崎美生子(樋口一葉)、小菅健一(川端康成)、庄司達也(国木田独歩)、石割透(芥川龍之介)、藤井淑禎(水上勉)、山本亮介(村上春樹)の8つの作品の魅力を、ぜひ味わってください。(企画・早稲田大学名誉教授 中島国彦)

各回の講義予定

日程 講座内容
1 04/08 北原白秋の詩集『思ひ出』を味わう 日本の近代詩の歴史において、白秋の果たした役割はとても重いものです。今回は、第2詩集『思ひ出』の名作を取り上げ、白秋の言語感覚、感受性のあり方を紹介したいと思います。きっと新しい発見があることでしょう。『思ひ出』の代表作は、新潮文庫『北原白秋詩集』で読むことができます。ぜひ、親しんでいただければ幸いです。(中島 国彦)
2 04/15 佐藤春夫「女誡扇綺譚」を読む―漢詩が繋ぐもの― 台湾の旅から生まれた「女誡扇綺譚」(『女性』1925年5月)は、台南の西のはずれの廃港に面した廃屋で、正体不明な女性の声を聞いたことから展開する綺譚である。佐藤春夫の耽美・怪奇な作品の系列に連なるものだが、紀行文としても楽しめる。この謎解きには、当時、日本の植民地であった台湾の情勢が組み込まれている。また、佐藤の中国文学の知識が本作の幻想性を高めているので、そうした背景を紹介しつつ、読みを深めたい。文庫で読む場合、中公文庫『佐藤春夫台湾小説集 女誡扇綺譚』(2020年)が刊行中。ちくま文庫『怪奇探偵小説名作選 佐藤春夫集 夢を築く人々』(2002年)は古本のみ。(宮内 淳子)
3 04/22 樋口一葉「たけくらべ」 吉原近くに育つ少年少女の、せつない初恋の物語として知られる「たけくらべ」。しかし小説の語り手は、この少年少女たちを必ずしも温かい目で見守っているわけではないようです。売れっ子の花魁である姉を誇る美登利の愚かさを強調し、平凡な少年たちをごみを漁る犬にまでたとえる非情な語りは、いったいどのような価値観に支えられているのでしょうか。明治半ばの時代背景にも目を配りながら、考えてみたいと思います。(篠崎 美生子)
4 05/13 虚実の皮膜が生み出す刹那の幻想 ー川端康成「片腕」における美の切なさ― 「『片腕を一晩お貸ししてもいいわ。』と娘は言つた。そして右腕を肩からはづすと、それを左手に持つて私の膝においた。」という作品の冒頭を抜き出して、作者を尋ねると、この作品を読んだことない方は、SF作家や前衛作家の名前をあげるでしょう。これが1968(昭43)年に日本人初のノーベル文学賞受賞作家川端康成の『片腕』(昭38〜39)であると知って驚きます。青春抒情小説の金字塔である『伊豆の踊り子』や日本の美や伝統、もののあわれを描いた代表作である『雪国』『山の音』『古都』しか知らなかった方に、シュール・リアリズムファンタジーの傑作短篇である珠玉の“大人のお伽噺”として、川端康成の新たな一面の醍醐味を堪能して頂ければと思います。なお、この作品は、新潮文庫『眠れる美女』や、ちくま文庫『川端康成集 片腕 文豪怪談傑作選』に入っています。(小菅 健一)
5 05/20 日露戦後「東京」の或る風景 ―国木田独歩「窮死」を読む 九段坂の最寄りにある「けちなめし屋」から始まる物語。大都会東京の片隅に生きる下層の労働者たちの姿を通して、近代化を達成しつつある日露戦後の社会のあり様に痛烈な批判の言葉を浴びせた国木田独歩。しかし、主人公の最期を悲惨なものとして描きながらも、独歩はこの国の将来をあきらめてはいませんでした。彼が託した微かな希望を、皆さんと共に読み解いてゆきたいと考えています。(庄司 達也)
6 05/27 芥川龍之介「鼻」をめぐって 芥川龍之介は、「今昔物語集」から材料を得た「羅生門」で、自分の小説のスタイルを掴み、夏目漱石の木曜会に出席し始めます。それを契機に久米正雄、菊池寛らと(第4次)「新思潮」 を創刊、やはり「今昔物語集」を典拠にした「鼻」を創刊号に発表し、漱石の称賛によって華やかに文壇入りを果たしました。この講座では、「鼻」の同時代の中での斬新さ、「今昔物語集」の説話との比較、〈笑い〉や容貌、西洋文学の翳、など、「鼻」と関わる種々の問題を取り上げ、話したく思います。「鼻」は芥川の代表作であり、いろいろな文庫本に収められ、種々の「芥川龍之介集」などに収録されています(石割 透)
7 06/03 水上勉・『才市』への道 水上勉の最晩年の傑作評伝『才市』(1989年)を紹介する。真宗門徒で極貧の下駄職人であった浅原才市(1850-1932)が、ほとんど「文盲」であるにもかかわらず、五千首もの平仮名だけの詩歌を遺したことに水上は驚嘆する。このことから、水上はみずからの来し方を振り返り、また身内を始めとしてこれまで関わりを持った人々をみつめ直し、人間について人生について考察を深めていく。この作品の完成直後に、水上勉は深刻な病いにみまわれる。この、奇跡的ともいうべき事実はわれわれを震撼させずにはおかない。そうした後日談についてもあわせて紹介する。作品は『才市・簑笠の人』(講談社文芸文庫)に所収。(藤井 淑禎)
8 06/10 村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』:闇と対峙する文学 1995年の阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件は、日本社会に深甚な影響を与えました。当代一の人気作家として独自の地歩を築いていた村上春樹は、この時期を機に創作活動の〈転回〉を示します。「地震のあとで」と題して発表された連作短編集『神の子どもたちはみな踊る』では、世界と人間が抱える闇に文学はどう向き合うか、といった課題が改めて問われることになります。2000年代以降の作品群へと繋がるこの重要作を取り上げ、暗示に満ちた表現内容の核心へ迫りたいと思います。なお、表題作「神の子どもたちはみな踊る」と「かえるくん、東京を救う」、「蜂蜜パイ」の三編を中心に検討しつつ、前後の長編小説にも言及する予定です。
入手しやすいテキストとして、新潮文庫『神の子どもたちはみな踊る』があります。(山本 亮介)

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講日は6月17日(月)を予定しています。
◆3/8(金) 13:30より本講座の無料体験会を早稲田校で実施します。
◆体験会お申し込みはこちらから。
https://www.wuext.waseda.jp/course/detail/63075/

講師紹介

中島 国彦
早稲田大学名誉教授
1946年東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了、博士(文学)。公益財団法人日本近代文学館理事長。日本近代文学専攻。著書『近代文学にみる感受性』(筑摩書房)、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)、『漱石の地図帳―歩く・見る・読む』(大修館書店)、『森鷗外 学芸の散歩者』(岩波新書)等。

宮内 淳子
立正大学講師
東京生まれ。早稲田大学教育学部卒。博士(人文科学、お茶の水女子大学)。専門分野は日本近代文学。帝塚山学院大学教授を経て、現在は立正大学で非常勤講師を勤める。著書に『谷崎潤一郎 異郷往還』(国書刊行会)、『岡本かの子論』『藤枝静男』(EDI)、共著に『上海の日本人社会とメディア』(岩波書店)など。
山本 亮介
東洋大学教授
1974年、神奈川県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。専門分野は、日本近現代文学。信州大学を経て現職に至る。著書に、『横光利一と小説の論理』(笠間書院)、『小説は環流する―漱石と鷗外、フィクションと音楽』(水声社)などがある。
藤井 淑禎
立教大学名誉教授
愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学卒業。立教大学大学院博士課程満期退学。専門は日本近代文学・文化。著書に、『清張 闘う作家』(ミネルヴァ書房)、『名作がくれた勇気』(平凡社)などがある。
石割 透
駒澤大学名誉教授
1945年京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科博士課程単位取得修了。専門分野は日本近代文学。『芥川龍之介全集』、『芥川龍之介資料集』共同編集の他、著書『芥川龍之介初期作品の展開』(有精堂)、編著書『芥川竜之介書簡集』『芥川竜之介随筆集』(岩波文庫)『ジャズ』(ゆまに書房)などがある。
庄司 達也
横浜市立大学教授
1961年東京生まれ。芥川龍之介の〈人〉と〈文学〉を主たる研究テーマとするが、出版メディアと作家、読者の関係などにも関心を強くしている。近年は、近代の作家たちが聴いた音楽を蓄音機とSPレコードで再現するレコード・コンサートなども企画している。編著書に『芥川龍之介ハンドブック』(鼎書房)、『日本文学コレクション 芥川龍之介』(共編著、翰林書房)、『芥川龍之介全作品事典』(共編著、勉誠出版)、ほか。
小菅 健一
山梨英和大学教授
文学修士(早稲田大学)。専門分野は、日本近現代文学および表現論。山梨英和大学において日本近現代文学、現代文化論、現代芸術論、日本語スキル(初年次教育)や公開講座の日本近現代文学の作品講読を担当。共著書に『日本文芸の系譜』『日本文芸の表現史』他、近著に『未来の学び 小学生のための生涯学習講座』。
篠崎 美生子
明治学院大学教授
日本近現代文学専攻。博士(文学、早稲田大学)。芥川龍之介の小説から研究を始め、その後、日本近代文学とナショナリズムの関係に関心を持つ。近年は、日本近代文学と中国との関わり、原爆と文学の関わりについて研究中。単著に『弱い「内面」の陥穽』(翰林書房)がある。
  • 外国語 コースレベル選択の目安
  • 広報誌「早稲田の杜」
  • オープンカレッジ友の店