ジャンル 現代社会と科学

中野校

21世紀の現代トルコ“帝国病”の正体を考える

  • 冬講座

野中 恵子(トルコ研究者、作家、トルコ語専門家)

曜日 木曜日
時間 13:10~14:40
日程 全6回 ・01月25日 ~ 02月29日
(日程詳細)
01/25, 02/01, 02/08, 02/15, 02/22, 02/29
コード 340709
定員 24名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 17,820
ビジター価格 受講料 ¥ 20,493

目標

★冷戦とその終焉がトルコに与えた影響について知る。
★現代トルコの内政・外交に反映されるトルコの歴史的文脈について知る。
★現代トルコにおける宗教と政治の関係について知る。
★今後の国際社会におけるトルコの可能性と問題点について考える。

講義概要

エルドアン大統領の強権的なリーダーシップのもと、トルコは過去20年のうちに国際社会での発言力を強め、ロシア・ウクライナ戦争の勃発以降はますます存在感を増している。時に「ネオ・オスマニズム」と言われる現在のトルコの国内外に対するアプローチには、旧オスマン帝国の威光再現を意識した“帝国病”といって過言ではない、地域大国を越えた、世界大国としての自国像の追求がうかがえる。これは毒にも薬にもなっているもので、また、トルコが建国以降の20世紀とは大きく変質した面である。本講義では、35年にわたってトルコの政治と社会の変容を観察してきた講師の視点から、変化の過程をわかりやすく解説していく。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 01/25 冷戦後のグローバル時代に向かうトルコートルコは新興国だったのか? 冷戦の終結を受けたグローバル化の中で注目された「新興国」には旧帝国が複数あり、うち一つがトルコである。トルコ共和国は旧オスマン帝国の領土を大幅に縮小して誕生したが、ビザンツ帝国以降の中核部分を保全し、その地政学的条件は重要で豊穣と高度な文明の蓄積に恵まれ、第二次世界大戦による被害も受けていない。にもかかわらずなぜ、西欧のように戦後高成長を遂げられず逆に後退し、冷戦終結を機にようやく再生の過程が始まったのかを解説する。
2 02/01 イスラム教の国家を追求――宗教派政党の台頭からエルドアン体制へ 共和国建国に伴う世俗主義への転換は現代国家としての絶対的国是とされ、宗教国家であった旧王朝への回顧封じ込めも兼ねたが、信仰を否定していたわけではない。しかし第二次大戦後、脱宗教化の気運が強まる中で宗教派政党が台頭し、冷戦終結後急速に勢力を伸ばして政権を獲得し、エルドアン時代へと続いた。この間オスマン帝国の再評価も始まっている。彼らはどのような国家像を求め、現代トルコをどう変えたか、あるいは変えなかったかを考察する。
3 02/08 民族問題と隣国関係――国民国家としての再出発が残した葛藤 普遍帝国の解消と人造の単一民族性に依拠する国民国家への転換は、国内では残留宗教マイノリティの苦難や20世紀後半のクルド人問題をもたらし、対外的にはイスラム教に依拠する民族主義を掲げた旧宗主国としての意識が旧属州の近隣諸国への関与につながった。北キプロス占領、ギリシア及びブルガリアとの対立、ユーゴスラビア内戦、エルドアン政権下でのガザ問題、シリア内戦、リビア内戦への関与などを振り返り、トルコの立ち位置を考える。
4 02/15 EU・NATOとトルコ――西洋社会との募る確執 トルコの現EUへの加盟申請は1959年に遡り、NATO加盟は1952年に実現した。いずれも西洋社会との統合を目的としたが、EU拡大のプロセスからは事実上除外され、NATO拡大においては近年発言権を強めている。2つの同盟関係との歴史を振り返り、両者にとって20世紀後半と21世紀とでトルコの位置づけがどのように変化し、トルコの両者に対する考え方がどのように変化したかを概観し、今後両者とトルコの関係はどうなっていくかを考察する。
5 02/22 ロシア・ウクライナ戦争とイスラエル・ハマス衝突の中のトルコ――国際政治の仲介アクター ロシア・ウクライナ戦争ではトルコは穀物合意の仲介国として注目を浴びたが、両国間の緊張が高まり始めた当初から両国に自制を呼びかけた。2023年秋のイスラエル・ハマス衝突(仮名称)勃発に際してもガザへの無差別攻撃回避を求め、仲介の用意を示した。地域大国である現代トルコの国際政治上の不可避の役割と負担を考える。また、2つの戦火へのトルコの対応には、トルコがかつてオスマン帝国であった歴史的な事情がどのように反映されるかを理解する。
6 02/29 所与の財産・文明の十字路――トルコの地の利は世界を制するのか 海峡大橋、海峡海底トンネル、巨大空港、パイプライン、巨大内航水路計画、コーカサス地方の鉄道など、トルコの地の利を活用するメガインフラ事業は今後、トルコの国際社会における位置づけを変える可能性がある。同時に、これら事業には現状での問題点と潜在的リスクもあり、イスラム原理主義の波及や不法移民・難民の通過と滞留に代表されるように、トルコの地の利が自国及び西欧、世界の経済発展と安全保障にとって諸刃の剣であることを考察する。

講師紹介

野中 恵子
トルコ研究者、作家、トルコ語専門家
1965年生まれ。トルコの政治・社会・歴史などを探究。慶應義塾大学非常勤講師、朝日カルチャーセンター講師、NHK同時通訳者、外務省通訳研修講師等を歴任。関西学院大学文学部英米文学科卒・一橋大学大学院経済学研究科博士後期課程単位修得退学。著書に『史跡・都市を巡るトルコの歴史』(ベレ出版)、『ビザンツ、オスマン、そしてトルコへ:歴史がつなぐ社会と民族』(彩流社)『最後のローマ皇帝』(作品社)『ドイツの中のトルコ:移民社会の証言』(柘植書房新社)他。
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