ジャンル 文学の心

早稲田校

漱石文学の世界

  • 秋講座
  • オムニバス

中島 国彦(早稲田大学名誉教授)
藤尾 健剛(大東文化大学教授)
松下 浩幸(明治大学教授)
長島 裕子(秀明大学客員教授)
石原 千秋(早稲田大学教授)
藤井 淑禎(立教大学名誉教授)
安藤 文人(早稲田大学元教授)
服部 徹也(東洋大学准教授)

曜日 土曜日
時間 10:40~12:10
日程 全8回 ・09月30日 ~ 11月25日
(日程詳細)
09/30, 10/07, 10/14, 10/21, 10/28, 11/11, 11/18, 11/25
コード 130104
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 23,760
ビジター価格 受講料 ¥ 27,324

目標

・漱石の魅力をさまざまな角度から明らかにしていきます。
・漱石と関連する文学者にも幅広く眼を注ぎ、漱石を立体的に考えます。

講義概要

春学期は「吾輩は猫である」の世界を多角的に分析してきましたが、秋学期はちょうど時期的に背中合わせになっている『漾虚集』の短編、「坊っちゃん」「草枕」の世界を考えたいと思います。作品を読み込む一方で、その時期の書簡や帝国大学での文学論構築の営為にも目を向けることにより、漱石の明治38年、39年の歩みを辿っていきたいと思います。春学期担当の、石原千秋、安藤文人、藤尾健剛、藤井淑禎、松下浩幸、長島裕子、中島国彦の他に、新しく服部徹也を加えた8名で、担当していきます。手元に、全集や文庫本を置いて、作品にアプローチすることを心がけていただけるとありがたく存じます。(企画・中島国彦 早稲田大学名誉教授)

各回の講義予定

日程 講座内容
1 09/30 〈坊っちゃん〉とアイデンティティー 漱石文学の男性知識人たちは自らの性格によって深く傷ついています。「竹を割ったような性格」の〈坊っちゃん〉はどうでしょうか。娯楽小説として一級品の『坊っちゃん』の主人公は「子供の時から損ばかり」しています。しかし、それは〈坊っちゃん〉固有の性格=アイデンティティーによるものでしょうか。アイデンティティー形成小説でもある『坊っちゃん』は、アイデンティティーとは何かを考えさせてくれます。(石原千秋)
2 10/07 発想と材源―『漾虚集』と『猫』 『漾虚集』には、文体においてもジャンルにおいても、また作品の背景においても、実に種々様々な作品が収められている。その雑多な性格、あるいは雑種性は、同時期に書き継がれていた『吾輩は猫である』とも決して無縁ではない。今回は、『倫敦塔』を中心に取り上げながら、いまだ揺れつつ、また「漾(ただよ)」いつつあった「作家以前の漱石」の発想と試行のありさまについて、『猫』との類比、あるいは共通する材源に触れながら考えてみたい。(安藤文人)
3 10/14 『文学論』―初期創作の背景としての文学研究― 『文学論』は「文学とは何か?」という大きな問題に取り組んだ理論書である。『文学論』の成立過程は初期の創作活動と時期的に重なっており、実は相互に影響しあっている。漱石の初期創作には、どのような学問的知見が活かされているのか。創作に駆動される形で、漱石の学問はどのように変化していったのか。『文学論』の成立過程と創作との相互作用を検討することで、「漱石」という希有な文学者が誕生した背景に迫る。(服部徹也)
4 10/21 漱石の自筆絵はがきの世界 漱石は、明治37年から38年末まで、数多くの自筆絵はがきを描きました。岩波書店の『定本漱石全集』には、それらがモノクロ画像ですが収録され、その概要が理解できます。写実的な風景画や、幻想的な人物画、さらには、西洋名画の模写もあります。今回は、西洋名画の模写に注意しながら、そうした営為の意味を考えてみたいと思います。(中島国彦)
5 10/28 『坊っちゃん』―学校と戦争― 漱石の初期の代表作『坊っちゃん』には日本の近代化に対する風刺が数多く描かれているが、しかし、主人公の「坊っちゃん」は意外と近代人でもある。この意外と近代人でもある「坊っちゃん」とは、いかなる人物なのだろうか。また、本作は日露戦争を時代背景としているが、「坊っちゃん」が活躍する「学校」という場所は、「戦争」とどのような関係にあるのだろうか。様々な矛盾を含みながらも、人気作となった本作の魅力と問題点について考察したい。(松下浩幸)
6 11/11 「草枕」と朱子学 「草枕」では、「非人情」とは何か、末尾の那美さんの表情に浮かぶ「憐れ」とは何か、などが問題になるが、いずれも朱子学の観点から解明可能である。草枕」は、ショーペンハウアーの哲学に依拠した大西祝の「悲哀の快感」を、朱子学的な観点から読み換えることで生まれた作品であることを示したい。(藤尾健剛)
7 11/18 『草枕』と美辞麗句 かつて「の表現」というような言い方をしたことがある。素顔とかスッピンとかいう時の「素」である。その場合、その対極にあるのは当然、厚化粧の表現、すなわち美辞麗句調の文章ということになる。漱石における美辞麗句調のピークといえば、やはり『草枕』と『虞美人草』ということになるだろう。ただ、ひとくちに美辞麗句調とか、そこから抜け出して「の表現」へ、とか言っても、そこには作家個人の問題だけでなく、時代とか読者とかいろんな要素が関わってくるはずだ。今回は以上のようなことを念頭に置いて、『草枕』と美辞麗句という問題を考えてみたい。(藤井淑禎)
8 11/25 明治38年、39年の書簡から 明治38年1月の「ホトトギス」に発表された「吾輩は猫である」は、39年8月までの一年半余り断続的に10回掲載されて終了しました。その間「猫」と並行して『漾虚集』に収められる作品と「坊っちゃん」「草枕」なども発表しています。またこの頃の漱石の書簡を繙くと作品執筆前後の様子や、作品についての批評をめぐってのやり取りなどが活発にされていたことがうかがわれます。書簡から見えてくることを考えてみたいと思います。(長島裕子)

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講は12月2日(土)を予定しています。
◆各回担当講師・担当回・各回講義内容は変更となる場合がございます。

講師紹介

中島 国彦
早稲田大学名誉教授
1946年東京都生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了、博士(文学)。公益財団法人日本近代文学館理事長。日本近代文学専攻。著書『近代文学にみる感受性』(筑摩書房)、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)、『漱石の地図帳―歩く・見る・読む』(大修館書店)、『森鷗外 学芸の散歩者』(岩波新書)等。

藤尾 健剛
大東文化大学教授
1959年兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、同大学院文学研究科修士課程修了。香川大学助教授をへて、現職。著書に、『夏目漱石の近代日本』(勉誠出版)、『川端康成 無常と美』(翰林書房)がある。
松下 浩幸
明治大学教授
専門分野は日本近現代文学。著書に『夏目漱石―Xなる人生』(NHK出版)、共著に『夏目漱石事典』(勉誠出版)、『異文化体験としての大都市―ロンドンそして東京』(風間書房)、『日本近代文学と〈家族〉の風景―戦後編』(明治大学リバティアカデミー)など。
長島 裕子
秀明大学客員教授
早稲田大学大学院修士課程修了。現在、秀明大学客員教授。専門分野は日本近代文学。著書に、『夏目漱石の手紙』(共著、大修館書店)、『文章の達人 家族への手紙4 夫より妻へ』(編著、ゆまに書房)、『漱石の愛した絵はがき』(共編、岩波書店)がある。
石原 千秋
早稲田大学教授
1955年、東京都生まれ。成城大学文芸学部卒業、同大学院博士後期課程中退(文学修士)。東横学園女子短期大学助教授、成城大学教授を経て、現職。著書『漱石と三人の読者』(講談社現代新書)、『『こころ』で読みなおす漱石文学』(朝日文庫)、『漱石入門』(河出文庫)、 『漱石はどう読まれてきたか』(新潮選書)など。
藤井 淑禎
立教大学名誉教授
愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学卒業。立教大学大学院博士課程満期退学。専門は日本近代文学・文化。著書に、『清張 闘う作家』(ミネルヴァ書房)、『名作がくれた勇気』(平凡社)などがある。
安藤 文人
早稲田大学元教授
岐阜県生まれ。早稲田大学第一文学部、同大学院において英文学を専攻した後、比較文学に転じ、英国18世紀作家ロレンス・スターンが漱石の初期作品に与えた影響について研究を続けている。文学学術院において英語科目を担当。英語関係の著作に『アウトプットに必要な英文法』(研究社)他がある。
服部 徹也
東洋大学准教授
1986年生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。同大学院文学研究科助教(非常勤)、大妻女子大学非常勤講師、大谷大学助教等を経て、現職。専門は日本近代文学・文学理論。共著に小平麻衣子編『文芸雑誌「若草」:私たちは文芸を愛好している』(翰林書房)など。
  • 外国語 コースレベル選択の目安
  • 広報誌「早稲田の杜」
  • オープンカレッジ友の店