ジャンル 文学の心

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ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』を読む 5つのキーワードから読む『ユリシーズ』

  • 秋講座

小林 広直(東洋学園大学 准教授)

曜日 土曜日
時間 10:30~12:00
日程 全6回 ・10月01日 ~ 12月10日
(日程詳細)
10/01, 10/15, 10/29, 11/19, 11/26, 12/10
コード 730109
定員 30名
単位数 1
会員価格 受講料 ¥ 17,820
ビジター価格 受講料 ¥ 20,493

目標

・ジェイムズ・ジョイスおよび『ユリシーズ』(1922)の基本的情報を概観する
・難解と名高い『ユリシーズ』ではあるが、21世紀を生きる私たちの「生」に連なり、重なり合っていることを確認する
・翻訳を用いても海外文学を「味読」することができることを体験する(もちろん英語原文で読める方も大歓迎です)

講義概要

20世紀で最も優れた小説(の一つ)と称される、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』は、今年2022年2月2日に出版100周年を迎えました。この機会に、独力ではなかかな読み通すことの難しい本作品を、ぜひ一度紐解いてみましょう。英語で書かれたこの小説がなぜ「アイルランド文学」を代表する作品と言えるのか、そして(超絶的に?)難解であると名高いこの作品を今読むことの意義は何か――以上2点の問いを念頭に置きながら、5つのキーワード(①宗教②歴史③ナショナリズム④フェミニズム⑤愛)から『ユリシーズ』の魅力に迫ります。
※講義では基本的に日本語訳を用いますので、英語が苦手な方でもご参加いただけます。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 10/01 作者ジョイスと『ユリシーズ』を概観する ジェイムズ・ジョイス(1882〜1941)および『ユリシーズ』の基本的な情報を概観します。伝記的事実を確認することで、『ユリシーズ』延いてはジョイス作品全体に通底する「主題」とは何なのか、そしてそれは現在の私たちとどのように関係するかを考えていきます。
2 10/15 『ユリシーズ』と宗教と 『ユリシーズ』には3人の主人公がいますが、そのうちの2人は1904年当時のジョイスの分身スティーヴン・デダラス(22歳)と、『ユリシーズ』執筆時(1914〜1921)の分身レオポルド・ブルーム(38歳)という男性2人で、彼らは「象徴的親子関係」を結ぶとされています。スティーヴンがカトリックなのに対し、ブルームはユダヤ人からプロテスタントに改宗した父を持ち、結婚する際にはカトリックに改宗しました。なぜジョイスはブルームにこのような複雑な宗教的アイデンティティーを付与したのでしょうか――当時のカトリック教会という「権力」との関連で考えてゆきます。
3 10/29 『ユリシーズ』と歴史と 臨時教師として働くスティーヴンは、第2挿話で「歴史とは…僕が目覚めようとしている悪夢なんです」とアングロ・アイリッシュの校長ディージーに向けて言い放ちます。また、第7挿話でも彼は新聞社で「お前が決して目を覚ますことのないであろう悪夢」と己に向かって心の中で呟きます。歴史が「悪夢」であるとはどのような意味でしょうか――本講座第2回で論じた教会権力との関係だけでなく、当時大英帝国の「植民地」であったアイルランドの政治状況を踏まえてこの問題を検討します。
4 11/19 『ユリシーズ』とナショナリズムと 『ユリシーズ』の主人公(のひとり)であるブルームは、しばしば「ユダヤ人」と紹介されます。しかし、実際に彼は自分自身を「アイルランド人」だと称しており、母親はアイルランド人で、父親もプロテスタントに改宗したハンガリー出身のユダヤ人であることから、母方の血筋を重視するユダヤ教の伝統からすれば、彼は「ユダヤ人」とは言えません。では、なぜ彼はユダヤ人と見なされるのか、そもそも誰が、誰を、○○人とみなすのか――「ナショナリズム」の関連からこの点を考えてゆきます。
5 11/26 『ユリシーズ』とフェミニズムと 『ユリシーズ』の3番目の主人公、ブルームの妻であるモリーは、作品のフィナーレを飾る第18挿話「ペネロペイア」で、様々なことに想いを巡らせます。しばしば「新しい女性」の象徴とされるモリーですが、確かに彼女は一方で非常に赤裸々に「性」を語りますが、同時に特定の言葉については「あれ」や「あのこと」というように直接的な表現を避けています。彼女はなぜそのような〈自己検閲〉を行うのか――『ユリシーズ』をフェミニズムの観点から改めて検討してみたいと思います。
6 12/10 『ユリシーズ』と愛と "Love loves to love love"――第12挿話に登場するこの謎めいた言葉(「愛は愛を愛することを愛す」とでも訳せるでしょうか)が象徴するように、『ユリシーズ』には様々な形の愛が描かれています。本講座の最終回は、これまでの回で検討した3人の主人公(スティーヴン、ブルーム、そしてモリー)それぞれにとって「愛」はどのような意味を持つのか、そしてそれらはどのように重なり合っているのかを検討します。願わくはこの全6回の講座を通じて、受講者みなさまが『ユリシーズ』を愛するようになっていただければ、という野心的な希望を込めつつ、私にとっても「謎」である愛を考えてゆきます。

ご受講に際して(持物、注意事項)

◆休講が発生した場合の補講は、12月17日(土)を予定しております。
◆Zoomウェビナーを使用したオンライン講座です。
◆お申込みの前に必ず「オンラインでのご受講にあたって」をご確認ください。
◆本講座の動画は、当該講座実施の翌々日(休業日を除く)17:30までに公開します。インターネット上で1週間のご視聴が可能です。視聴方法は、以下をご確認ください。 
【会員】授業動画の視聴方法(会員向け) 
【ビジター・法人会員】授業動画の視聴方法(ビジター・法人会員向け)
◆配付資料をダウンロードして受講中にご覧いただければ幸いです。
◆翻訳(丸谷才一他訳、集英社文庫、全4巻)を事前に読んでおくことを強くお勧めしますが、言うまでもなく未読の方にもわかりやすく説明していきます。

講師紹介

小林 広直
東洋学園大学 准教授
1983年埼玉県生まれ。早稲田大学文学研究科博士課程修了(博士)。早稲田大学文学学術院英文学コース助手、日本学術振興会特別研究員(PD)を経て現職。専門分野は、ジェイムズ・ジョイスを中心としたアイルランド文学。著書に『ジョイスの罠』(共著、言叢社、2022)、『ジョイスへの扉』(共著、英宝社、2019)、『ジョイスの迷宮』(共著、言叢社、2016)、『ジョイスの罠』(共著、言叢社、2016)などがある。現在、『ユリシーズ』の出版100周年を記念したオンライン読書会22Ulysses(https://mobile.twitter.com/22ulysses2022)の運営を行っている。
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