ジャンル 人間の探求

早稲田校

生きがいの社会学 「生きがい価値」の視点から「生きる」を考える

  • 秋講座
  • 資料配付

和田 修一(早稲田大学名誉教授)

曜日 水曜日
時間 10:40~12:10
日程 全10回 ・10月03日 ~ 12月05日
(日程詳細)
10/03, 10/10, 10/17, 10/24, 10/31, 11/07, 11/14, 11/21, 11/28, 12/05
コード 130534
定員 30名
単位数 2
会員価格 受講料 ¥ 29,160
ビジター価格 受講料 ¥ 33,534

目標

・「日本人の生きがい意識がどのように形成されてきたのか、そして日本人の人生(「生きる」)観の中で生きがい意識がどのような働きをしてきたのか」といった観点から、「生きがい価値」という日本人の人生観を理解します。
・こうした日本人の人生観について、社会の制度的仕組みの変化並びに文化の変容という文脈の中で形成されてきたものであることを理解します。
・以上の理解に基づいて、日本人の人生観と社会観とが有する今日的特性を比較文化の観点から考えます。

講義概要

この講義における生きがい論は、日本人の人生観に重要な位置を占めている「生きがい価値」が社会と文化とのかかわりの中でどのように形成され、変化してきたかについて考える、ということを目的にしています。生きがいを論じる際には、神谷美恵子の『生きがいについて』が優れた生きがい論として取り上げられることが多いので、その生きがい論を批判的に継承することから始めて、神谷の議論を支える宗教的価値前提に代わるより世俗的な人間性の前提からする生きがい論の可能性を考えてみたいと思っています。

各回の講義予定

日程 講座内容
1 10/03 「生きがい」と「生きる」 生きがいという事柄を考えるとき、人びとのこころの問題や一定の精神構造として議論されることが多いように思われます。そうした観点からする重要な議論として、神谷美恵子の『生きがいについて』(『神谷美恵子著作集』第一巻)を挙げることに大方の異論はないものと思います。そこでこの講義でも、まず神谷美恵子の生きがい論の検討を議論の出発点にしたいと思います。
2 10/10 比較文化の文脈から見る「生きがい価値」 生きがいという言葉で表されてきた日本人の価値観は、日本社会に独自なものなのでしょうか?確かに、言語的表現という事柄からすれば、日本語の生きがいに対応する言葉を諸外国の言語の中に見出すことは必ずしも容易ではないようですが、かといって他の言語の中に生きがいと同じような価値内容を表す表現が無いということではないようです。こうした事柄を比較文化的に考えてみたいと思います。
3 10/17 日本の近代と「生きがい価値」その1:いわゆる日本人の「集団主義」特性について 個人と全体社会との関わりの中で日本人の人生観・生きがい観がどのように変遷してきたのか、近代史の文脈の中で生きがい観の変化を辿るとき例外なく取り上げられる日本人の国民性は、いわゆる集団主義的国民性です。しかし面白いことに、生きがい意識を日米で比較するとむしろアメリカ社会で選ばれる生きがい対象の方が集団主義的だという調査結果も見られます。何故なのでしょうか?
4 10/24 日本の近代と「生きがい価値」その2:「生きがい価値」から見た仕事と家族 人びとがその生きがいの対象を尋ねられたとき、家族と仕事が生きがいだという回答が多いことはよく知られています。人びとが生きていく上で、家族と仕事が最も重要な事柄であると意識されていることがその背景にあると思います。ただ、今日のわが国社会では家族と仕事に対する人びとの意識と態度が大きく変化しつつあり、その変化が生きがい価値の形成の上にも一定の影響を及ぼしているように思われます。この価値観の変化について考えてみましょう。
5 10/31 日本の近代と「生きがい価値」その3:「定年」制度と「生きがい価値」 かつてアメリカで、高齢期の生活に満足感を感じるうえで中壮年期の生活スタイルや生活意識を維持し続けることが重要なのか、あるいは中壮年期とは違った生活スタイルをとる方が老年期の生活満足に直結するのか、ということが議論されたことがあります。今日の米国では定年退職を個人に強制することは違法ですから、アメリカ人の意識としては、個人の選択が優先するように思われます。社会の仕組みと個人の選択という視点から「生きがい価値」について考えてみます。
6 11/07 日本の近代と「生きがい価値」その4:価値の「個人化」と「生きがい価値」 今日、わが国においても価値観の「個人化」・多様化がすでに無視しえない大きな流れになっているように思われます。わが国社会における「生きがい価値」の意味内容も、価値的多様化の文脈の中で新しい文化的新フェイス(phase)に直面しているように思われます。この文化的変化の中で、生きがい価値もニュー・フェイスの登場が求められているのかもしれません。この新しい「生きがい価値」について考えます。
7 11/14 神谷美恵子に戻って その1:「文化のスーパーマーケット化」と「生きがい価値」 仕事と家族を生きがいの対象とする傾向は社会的現象だとする認識の背景には、神谷のいうような意味で、生きがいがアイデンティティの形成と密接にかかわる価値意識だとする価値観があるように思われます。一方で、「仕事が単に生活の糧を獲得する手段ではなく全身全霊をもって当たるべき対象だ」と感じうる人は一握りの幸運な者と見なす傾向もあるようです。この矛盾の発生はどう理解すべきなのでしょうか?
8 11/21 神谷美恵子に戻って その2:働き方の多様化と「生きがい価値」 働き方の多様化という観点から、仕事と生きがいの関係について考えてみます。「会社人間」という表現にも表れているように、日本人の勤勉性や仕事観は組織的人間関係の重要性を前提に形作られてきたようです。従来多くの日本人が親しんできた組織生活とともにある「生きがい価値」について考えなおしてみます。こうした「組織の中での生きがい」は若い世代や女性の間でも共感を産むものなのでしょうか?あるいは、「文化のスーパーマーケット化」の中で新しい価値が生まれつつあるとみるべきなのでしょうか?
9 11/28 神谷美恵子に戻って その3:生きがいをめぐる今日的価値問題 日本語の「生きがい」の歴史的用例からすれば生きがいの本質とは「(私が)いきてある甲斐(効果)」であり、その神髄はある種の全体価値への貢献でした。一方、近代後期の日本では、生きがいとは自己実現や個人的欲求充足を始めとした個々人の人生における価値の個人的追求という側面が強調されがちです。神谷は「使命感」という宗教的概念を用いて生きがいの社会性を強調するわけですが、ここではより世俗的な「社会的役割意識」という概念を用いて、改めて「生きがい価値」を個人と社会の関係性という視点から考えてみたいと思います。
10 12/05 生きがいによる「心の世界」(ホンネ)と「現世」(タテマエ)の橋渡し 私たちは誰でもが、好悪・善悪・美醜といった物事の価値に関わる判断基準をその心の世界の中に持っています。この心の世界に見られる個人差をお互いに認め合っていこうというのが近代社会の理念(あるいは、理想)です。しかし私たちの生活を取り巻く現世では、この個人差が往々にして対立や葛藤を招来したり、あるいはホンネを押し殺してタテマエを通さざるをえないことも否定できません。心の世界の個性を尊重したうえで、現世における葛藤や対立を解消するような「共通善」を想定することは可能でしょうか?その問題を「生きがい観」の視点から考え、そしてその結果をこの講義の締め括りとしたいと思います。

テキスト・参考図書

参考図書
『 生きがいの社会学 』(弘文堂)(ISBN:978-4335550829)
『生きがいについて』(みすず書房)(ISBN:978-4622081814)
『人生に生きる価値を与えているものは何か : 日本人とアメリカ人の生きがいについて』(三和書籍)(ISBN:978-4916037343)

講師紹介

和田 修一
早稲田大学名誉教授
早稲田大学文学部哲学科(社会学専修)卒業。専門分野は社会学(社会老年学、近代社会論)。著書に『中高年齢層の職業と生活 ― 定年退職を中心として』(東京大学出版会、1982年、青井和夫との共編著)、『生きがいの社会学 ― 高齢社会における幸福とは何か』(弘文堂、2001年、高橋勇悦との共編著)など。
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